働き時代における企業の人事施策アンケート
女性の就労継続に向けて「長時間労働の是正」を課題とする企業は70.7%。家庭事情を理由に退職した社員の再雇用制度の導入率は24.4%
家庭事情等を理由に退職した社員の再雇用制度の実施状況・内容 [図表11~15]
再雇用制度「あり」は24.4%と約4社に1社が導入。
制度がある場合では、「退職理由」や「離職期間」に制限を設ける場合が多い
[1]家庭事情等を理由に退職した社員の再雇用制度の実施状況
近年は、“即戦力人材の活用” と “仕事と家庭の両立支援” という面から、結婚・出産・育児等の理由に限らず、家庭事情でいったん退職した元社員に対して「再雇用」という選択肢を用意する企業も増えつつある。
そこで、家庭事情等を理由に退職した社員を対象とした再雇用制度の有無を聞いたところ、「あり」が24.4%と約4社に1社が導入している[図表11]。規模別に見ると、1000人以上の40.0%に対し、300〜999人16.2%、300人未満14.6%と10%台にとどまっている。産業別に見ると、製造業(20.7%)より非製造業(27.7%)のほうが導入割合が高い。
[2]再雇用制度の利用基準の有無と内容
再雇用制度「あり」と回答した30社に対し、再雇用制度の利用に際して「一定の基準がある」と回答した内容で最も多かったのが「退職理由による制限」66.7%であり、次いで、「再雇用に登録・応募できる期間(離職期間)」60.0%となった。一方、「成績要件」は40.0%にとどまっている[図表12]。
[3]再雇用の対象となる具体的な要件
再雇用の対象となる「退職理由による制限」の内容(複数回答)としては、「介護」が85.0%と最も高く、「育児」「配偶者の転勤」がともに75.0%で続いている[図表13]。
再雇用の対象となるために必要な勤続年数は、「3年」が43.8%と最も多く、以下、「5年」25.0%、「1年」18.8%と続く[図表14]。なお、「1年未満」「6年以上」と回答した会社はなかった。
さらに、退職してから再雇用までの離職期間に制限を設けている場合の年数は、「5年」が38.9%と最も多く、次いで「10年」16.7%、「3年」「6年」がともに11.1%となっている。最高は10年で、「1年」「8年」「9年」「11年以上」の離職期間を設定する回答はなかった[図表15]。在職時の職務経験や知識・技能が生かせる程度の離職期間を設定していることが分かる。
コース別人事制度の導入状況・内容
[図表16~19] コース別人事制度がある企業のうち、9割以上が勤務地(地域)限定に重きを置いている。処遇面で「限定あり」の賃金を抑える企業は73.7%
[1]コース別人事制度の有無と、「ある」場合の内容
コース別人事制度は勤務地(地域)や職務を限定できるコースと、そういった限定のないコースを設けることで、個人の事情に沿った勤務形態が選べるメリットがある。共働きの社員にとっては恩恵が大きい制度といえよう。ここでは、コース別人事制度の有無と、「ある」場合の内容を聞いた[図表16]。
「コース別人事制度がある」のは30.9%となった。規模別では、1000人以上が33.3%、300〜999人が40.5%、300人未満が19.5%となり、300〜999人でやや導入率が高い傾向が見られた。
コース別人事制度があると回答した38社に対してコースの内容を聞いたところ、最も多かったのが「『勤務地・職務とも無限定のコース』と『勤務地(地域)限定ありのコース』」を設けているケースで60.5%、次いで「『勤務地・職務とも無限定のコース』と『勤務地(地域)・職務とも限定ありのコース』」の31.6%となった。この2者で導入企業全体の9割以上を占めている。「『勤務地・職務とも無限定のコース』と『職務限定ありのコース』」は7.9%にとどまった。コース別人事制度を設ける場合は、職務内容よりも勤務地(地域)の限定に重きを置いていることが分かる。
[2]コース間の転換ルールの有無と転換回数
コース別人事制度を設けている38社に対し、コース間の転換ルールを見ると、「具体的なルールを設けている」が89.5%となり、ほぼ9割の企業でコース転換についてルールを定めている[図表17]。
さらに、何らかのルールを設ける34社の転換可能な回数としては、「コース転換の回数制限は設けていない」が64.7%と突出して高く、以下、「最初選んだコースから1回のみ転換可能」「最初選んだコースから2回転換可能(元のコースへの復帰が可能)」がともに17.6%となった。3社に2社は、フレキシブルにコース間の移動ができる設計になっている。なお、「一度選んだコースから他コースへの転換は認めていない」と回答した企業はなかった。
[3]コース間の処遇の違い
賃金、昇進昇格などのコース間での処遇の違いを見ると、「コースによる処遇面の違い・格差を設けている」は92.1%と、9割以上の企業が「限定あり」と「限定なし」のコース間に何らかの差を設けている結果となった[図表18]。
具体的な格差の内容(複数回答)として最も多かったのが、「勤務地や職務に限定があるコースでは、賃金水準を抑えている」で73.7%。次いで、「昇進可能な役位・ポストに上限がある」39.5%、「昇格可能な等級に上限がある」31.6%となっている。
[4]「限定あり」のコースにおける男女比率
勤務地(地域)や職務に限定があるコースにおける男女比率については、「女性社員のほうが多い」が47.4%と最も高く、次いで「男性・女性社員の人数に目立った差はない」42.1%の順となっている[図表19]。規模別に見ると、「女性社員のほうが多い」は1000人以上では60.0%、300〜999人40.0%、300人未満37.5%と、1000人以上が他の規模よりも高くなっている。
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