働き時代における企業の人事施策アンケート
女性の就労継続に向けて「長時間労働の是正」を課題とする企業は70.7%。家庭事情を理由に退職した社員の再雇用制度の導入率は24.4%
介護を行う社員を対象とした制度の実施状況 [図表7~8、事例2]
勤務・休暇制度では「短時間勤務制度」47.2%。
勤務・休暇制度以外では「各種介護サービス利用のための費用補助」20.3%
[1]介護を行う社員を対象とした勤務・休暇制度の実施状況
育児と同じく介護に関して、育児・介護休業法で義務化されているもの以外の勤務・休暇制度の実施状況(複数回答)は、「いずれも実施していない」という回答が30.1%を占める。しかし、その回答を除いて実際に実施している施策で最も多かったのが「1日の労働時間を短縮する『短時間勤務制度』」で47.2%、次いで「始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」33.3%、「法を上回る期間の『介護休業制度』」22.0%となった[図表7]。
介護の内容・状況にもよるが、育児と異なり、いつまで続くのか先が見通しづらい介護と仕事との両立においては、長期間の休業よりも柔軟な勤務を可能にする仕組みや必要に応じて休暇が取りやすい環境整備が望ましい。[事例2](省略)では、法を上回る介護休業・介護休暇の内容として、期間の長さだけではなく、「分割取得可能」(介護休業)「半日単位の取得可能」(介護休暇)などの回答が多く見られた。これは、2017年1月から施行される改正育児・介護休業法の内容に先取りした対応といえる。
[2]介護を行う社員を対象とした勤務・休暇制度以外の制度・施策の実施状況
勤務・休暇制度以外の制度・施策(複数回答)としては、「いずれも実施していない」が62.6%と最も多いが、実施しているものの中では、「各種介護サービス利用のための費用補助」が最も多く、20.3%となった[図表8]。個別性の高い介護では、一律的な制度よりも社員が状況によってサービスを選び、それに費用面での補助を行ったほうが利便性が高いと判断したものと推察される。
転勤(転居を伴う異動)における共働き、家庭事情への対応[図表9~10]
「転勤あり」企業のうち、「共働きの配偶者がいるという理由で単身赴任を認める」企業が70.8%。家庭事情により、転勤が困難なケースへの対応は「実施していない」が76.3%
[1]共働きの配偶者がいるという理由での単身赴任の認否状況
仕事と家庭を両立するに当たり、転居を伴う異動(転勤)は社員にとって関心の高い事柄である。育児や介護の事情がなくとも、配偶者が正社員として就労している場合、家族帯同ではなく、単身赴任を選択する社員も少なくない。
そこで、転勤の有無と転勤がある場合に会社が共働きの配偶者がいることを理由に単身赴任を認めるかを聞いた[図表9]。
「転勤あり」は86.2%。規模別に見ると、300人未満は68.3%だが、300〜999人で94.6%、1000人以上で95.6%と、300人以上規模では9割を超える。「転勤あり」と回答した106社のうち、「共働きの配偶者がいるという理由で単身赴任を認める」企業は70.8%であった。規模別に見ると、1000人以上が83.7%、300〜999人で71.4%だが、300人未満では50.0%と半数にとどまる。規模が大きいほど「共働きの配偶者」の存在を理由に単身赴任を認める傾向にあることが分かる。なお、「その他」の内容としては、「ケースバイケース」「管理職以外は配慮する」などが挙げられた。
[2]家庭の事情により、転勤が困難なケースへの対応策
共働き、育児・介護の事情によって転勤が困難なケースもあるだろう。こういった家庭事情を抱える者への対応策(複数回答)では、「いずれも実施していない」が76.3%で最も多く、約4社に3社の企業で対策を講じていない[図表10]。何らかの対応策を講じている場合の内容としては、「社員の家族等の事情により、転居を伴う異動を一定期間免除する制度」が9.3%、「配偶者が転居を伴う異動を命じられた場合、その転勤先地域にある自社事業所への異動を認める制度」が6.2%となっている。
規模別に見ると、「いずれも実施していない」は300人未満88.0%、300〜999人86.7%と約9割に達しているのに対し、1000人以上は61.9%と他の規模より低い。実施している対応策では「社員の家族等の事情により、転居を伴う異動を一定期間免除する制度」が16.7%と他の規模に比べて高い。
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