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HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

人は本来、たくさんの可能性を持っているもの――若い人たちが自分の才能や価値観を大切にし、「仕事を謳歌」していくために必要なこと

株式会社ジェック 代表取締役社長

葛西 浩平さん

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株式会社ジェック 代表取締役社長 葛西 浩平さん

ただ単に需要へ対応するだけでなく、「需要を創造する企業集団」へ変わっていくためには何をするべきなのか。多くの企業が悩み続けるテーマだと言えるのではないでしょうか。50年以上の長きにわたってこのテーマと向き合い続けてきたのが、「需要創造型経営への変革支援」を掲げてコンサルティングや研修、トレーニングメニューを提供する株式会社ジェック。代表取締役社長の葛西浩平さんは、「社員一人ひとりが『お役立ち』を実践して仕事を謳歌し、幸せになれるよう支援することが変革の鍵」と語ります。その理論と思いは、波乱に満ちた葛西さんの歩みによって裏付けられていました。

Profile

葛西 浩平(かさい・こうへい)/株式会社ジェック 代表取締役社長。1953(昭和28)年、大阪府生まれ。1985年にジェック入社。名古屋営業所長、大阪支社長を経て、1998年取締役就任。「CPM経営(『お役立ち道』に立脚した需要創造型実践理念経営)手法」の開発に従事し、同社の変革はもとより、数多くの企業経営支援にも成果を上げ続けている。2000年常務取締役を経て、2009年より現職。

業界トップクラスの安定企業で社会人生活をスタートしたはずが……

葛西さんは1985年にジェックへ入社されたとうかがいました。まずはそれまでのキャリアを教えてください。

私は父親を16歳のときに亡くしているんです。そのため、学生時代はほとんどアルバイトに時間を費やしていました。大学にいるよりも、アルバイトをしている時間のほうが長かったと思います。多少の仕送りはもらっていましたが、それだけでは学費をまかないきれないので、とにかく一生懸命に働いていましたね。

就職先には、「絶対につぶれない」と言われていた繊維業界トップクラスの会社を選びました。創業者である当時の会長は100億円を超える資産を持っていて、非常に安定した企業だと言われていたんです。入社後の2年間は名古屋の拠点に配属されたのですが、なんとその2年目に、会社が倒産してしまいました。今でも鮮明に覚えていますが、その事実を知ったのは私の長女が生まれた8月5日。「会社が倒産した。すぐに本社に戻ってこい」という電話を受けました。

「絶対につぶれない」と思っていた就職先が、まさかの経営破たんに陥ってしまったのですね。

はい。会長は96歳まで現役でそろばんを弾いているような生粋の商人でした。2代目社長である息子さんはMBAを取得し、「経営はゲームだよ」と言っていた人。その2代目があっさりと不渡りを出し、関連会社もすべて連鎖倒産してしまったんです。

直接的な原因は、在庫の整理が追いつかず、薄利多売の悪循環に陥っていたことでした。また、当時は本社へ行くとお偉いさんが立派な机を持ち、昼間は暇そうに新聞を読んでいるような状況でした。若い社員からすれば「あの人たちは何をしているのだろう」という印象だったと思います。今にしてみれば、倒産してしかるべきだったのでしょう。

それでも本社や名古屋の拠点などの一部は残り、負債を返済するために細々と事業を続けることになりました。私も名古屋に残るしかなく、給料が大幅に減ってしまうという憂き目にあいながらも6年間は勤め続けたんです。

父親は早くに亡くすし、就職した会社はつぶれるし……。「俺の人生は何なのだろう」と当時は嘆いたものです。でも今になってみると、当時はとても貴重な経験をさせてもらっていたんですよね。「会社がこういう状態になったら倒産するぞ」ということを目の当たりにできたわけですから。倒産を経験している社長はあまりいません。

ジェックへは、どのような経緯で入社したのでしょうか。

何とかその会社での役割を終えたころに、ジェックで働いていた友人から「良い会社だからうちに来なよ」と誘われたことがきっかけです。私は30代になっていました。ジェックの事業内容にはひかれるものがありました。振り返ってみると、私は高校時代に生徒会の役員を務めていたのですが、そのときに心理学でいうところの「フロー状態」を経験したことがあるんです。どのようにみんなをまとめるか。どうやって一人ひとりの個性を引き出すか。そんなことを考え、実行するのが楽しかった。自分が活躍できるのはそんな状態にあるときだと思っていました。そこで、「50代になったら経営コンサルティング会社を起こそうか」と何となく志向していたんです。ジェックの事業は、そうした将来ビジョンにもつながるものでした。

当時のジェックは、どのような風土の会社だったのですか。

事業内容は今と同じですが、風土はまったく違っていたと認識しています。当時は右肩上がりの時代で、体育会系のイケイケな雰囲気がある、ハードな会社でした。産業教育には当時から二つの流れがあって、一つは「人間の考え方は変えられる」というもの。もう一つは「考え方は変えられないから、あくまでも知識を教えるべきだ」というものです。教育研修業界の中でも流派のようなものがあったわけです。我々は前者の考え方を推進していました。では、人間の考え方をどのように変えるのか。その方法の一つが「ハードに追い詰める」というものでした。ジェックの研修ではありませんが、長時間歩いたり、公衆の場で歌を歌ったり、講師の前で自分のいたらないところを悔い改めさせるという方法もありました。

現在でもそうした研修メニューを提供しているところはありますが、当時は今よりも需要が大きかったということですね。

そうですね。当時はそれが必要だと思われていたんです。社会の働き手の中心はいわゆる「団塊の世代」で、膨大な数のライバルの中で生き残っていかなければならなかった。その中には簡単に会社の言うことを聞かないような強者も多くて、ハードなマネジメントや研修が求められる時代でした。ジェックは、そこまで「ハードに追い詰める」研修を行っていたわけではありません。しかし、研修でロールプレイングをビデオで撮影して、後でビデオを見ながら振り返るのですが、当時の人たちはビデオに映る経験が無いので非常に緊張をするのです。その緊張を押さえるために、ロールプレイングの前に大きな声を出すというカリキュラムがありました。これを、メディアに取り上げられ「モーレツ研修」と報じられたこともあります。また、ハードではないといっても、悪いところに着目して、その原因を徹底的に掘り下げるなど、ともすると受講者を追いつめてしまう手法を取っていたのも事実です。

私はその時代のジェックに入社しました。社内には、売り上げのキャンペーンの掲示物やグラフが掲げられ、それに刺激を受けてがんばると、報奨金がたくさんもらえる。できなければ、会社にいづらくなる。そんなイケイケドンドンの体育会系の風土を目の当たりにしていたわけです。今でいう「外発的な動機付け」でモチベーションを上げるという時代でした。会社も、市場も、お客さまも、そうした「カンフル剤」を求めていました。


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