残業ゼロだからこそ時間あたりの成果を最大化できる!
日本企業の厚い壁を切り崩す、ワーク・ライフバランスの伝道師
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長
小室淑恵さん
厚い壁を切り崩すイノベーターこそWLBを大切に
WLBの推進を提唱し、また自ら実践することによって、日本の企業文化に染みつく古い価値観を覆した小室さんのご活躍は、まさにイノベーターの名にふさわしいものです。自らのイノベーターとしての資質は、どこにあると感じていますか。
人を信じることができるところでしょうか。自分では、それが一番大きいと思っています。人を信じるなんて、ちょっとかっこよく言いましたが、要は、人を信じてお願いしなきゃならないくらい、私にはできないことがいっぱいあるんですね。だから、周囲に自分にない才能や技術を持っている人がいると、これもお願い、これも頼むと、どんどん仕事や権限を委譲していける。そうやって信じて任せれば任せるほど、社員は経営への参加意識を強め、全力でビジネスに取り組んでくれるわけです。イノベーターというと、何か一人で切り開いていく孤高のイメージがありますが、私はそうは思いません。むしろ社員一人ひとりが経営者になったつもりで問題に取り組み、新しい分野を切り拓いてくれるのを適切にサポートすることが一番大切だと考えています。
たしかに独りで何もかもやっていたら、本人が早く疲弊してしまって、イノベーターとしてのアウトプットも長続きはしません。まして小室さんのように社会の厚い壁を切り拓こうと思えば、長期戦は必至ですからね。
アウトプットの質、量、安定性とも求められるイノベーターこそ、誰よりもWLBに配慮しなければなりません。たとえばお客様に満足していただくために、常に自分が出ていくという選択をする限り、アウトプットは限られ、やがては先細りしていくでしょう。逆に周囲の人材を育てて生かすようにすれば、組織としてのアウトプットを長期的かつ安定的に確保し、自らのピークも維持できる。それがイノベーターのあるべき姿ではないでしょうか。
これからの企業の盛衰は、サステナブル(持続可能)な経営をしているかどうか、この一点にかかっているといっても過言ではありません。短期的な視点の経営者は目先の利益にとらわれて固定費、なかでも人件費を減らそうとします。しかし人を減らしても、仕事は減らせないので、その分残業が増え、多くの企業で長時間労働が常態化しているのが現実です。今後はここに介護の問題が加わりますから、残業の多い企業では、仕事か介護かの二者択一を迫られた社員が次々と脱落、職場はさらに疲弊していくでしょう。だとすると、むしろ残業の削減に力を入れたほうがコストダウンになり、しかも育児や介護との両立もできますから、離職が抑えられて、採用や教育などの手間もかかりません。社員の疲弊もなく、時間あたり生産性は高まるはず。中・長期的にみて、どちらがサステナブルな経営かは明らかです。
最後に本サイトの読者である、人事向けサービスを中心とした企業向けサービスを展開する企業の経営者や若手社員に向けて、メッセージをお願いいたします。
私も2010年に親族の介護に直面し、ヘルパー2級を取得しました。もはや企業内の介護ニーズの高まりに疑いの余地はありません。近年、WLBが子育て世代だけでなく、役員クラスの男性にとっても重要なテーマになってきた背景にはこの介護の問題があります。2011年からは「介護と仕事の両立ナビ」というサービスへのお問い合わせが、うなぎのぼりに増えています。これまであまり注目されてこなかった介護と仕事の両立問題について、しっかり社会に広めていきたいと思っています。ここで重要なのは介護をされる側ではなく、する側に向けたサービス。たとえば介護予備軍の団塊ジュニア世代が、仕事と介護を両立するためにどういうサポートを求めているのかといった視点が重要になります。従来と同じツール、同じサービスを販売するにしても、仕事と介護を両立するビジネスパーソンにとって、それがどれだけ使いやすいか、どんなメリットがあるのかに着目して紹介するだけで、売れ方が変わってくると思うんです。
いずれにせよ、長時間労働に頼って成果をあげるという働き方を、時代はもう許してはくれません。育児や介護などによる時間の制約の中で、いかに付加価値を高めていくか。新しい競争を勝ち抜くための、新しいサポートが求められているのです。
(2013年8月1日 東京・港区にて)
社名 | 株式会社ワーク・ライフバランス |
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本社所在地 | 東京都港区芝浦3-6-5 |
事業内容 | ワーク・ライフバランスコンサルティング事業、休業者職場復帰支援事業、講演・研修事業、ワーク・ライフバランスコンサルタント養成事業、ワーク・ライフバランス組織診断事業 |
設立 | 2006年7月 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。