多様な人材が大胆にチャレンジすることを支援する
メルカリの新・人事評価制度とは
株式会社メルカリ 執行役員 CHRO
木下 達夫さん
時代の一歩先をいく人事制度や人材育成、福利厚生プログラムを次々と企画するなど、その組織づくりが注目を集めている、株式会社メルカリ。2021年1月には、それまでの人事評価制度を大幅に刷新した新制度を導入しました。重視したのは、メルカリのカルチャーであり、ミッションの実現に欠かせない「バリューの発揮」をいかに評価するか。メルカリの人事制度変更から「テレワーク環境下での社員の評価方法」や「在宅勤務でも社員間の“つながり”を維持する秘訣」「組織規模やフェーズに合わせて、人事制度を変えながら、企業の成長を加速させていくヒント」などについて、執行役員 CHROの木下達夫さんにうかがいました。
- 木下 達夫さん
- 株式会社メルカリ 執行役員 CHRO
きのした・たつお/P&Gジャパン人事部に入社し採用・HRBPを経験。2001年日本GEに入社、北米・タイ勤務後、プラスチックス事業部でブラックベルト・HRBP、2007年に金融部門の人事部長、アジア組織人材開発責任者を務めた。2011年に8ヵ月間のサバティカル休職取得。2012年よりGEジャパン人事部長。2015年にマレーシアに赴任し、アジア太平洋地域の組織人材開発、事業部人事責任者を務めた。2018年12月にメルカリに入社、執行役員CHROに就任。
コロナ禍で増す、「ミッション」「バリュー」の重要性
はじめに、貴社が社員に求める人物像についてお聞かせください。
メルカリは「新たな価値を生みだす 世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションを掲げています。この「ミッションへの共感」と、ミッションを実現する上で大切にしている「バリューの体現」こそ、社員に求めていることであり、採用時から丁寧に確認している点でもあります。
メルカリのバリューとは、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」の三つ。
「Go Bold」は、世の中にインパクトを与えるイノベーションを生み出すため、大胆にチャレンジし、数多くの失敗から学び、実践することを意味します。「All for One」は、一人では達成できない大きなミッションを、チームの力を合わせて最大のパフォーマンスを発揮して実現すること。「Be a Pro」は、メンバー全員がその道のプロフェッショナルとしてオーナーシップを持ち、日々の学びを怠らず、成果や実績にコミットすることを指しています。
「ミッションへの共感」と「三つのバリューの体現」を大切にする姿勢は、コロナ禍になっても変わりませんか。
はい、むしろコロナ禍になって「ミッション」「バリュー」の重要性が増していると捉えています。
もともとメルカリは対面でのコミュニケーションを重視する会社で、テレワークは「非推奨」でした。しかし、2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発出されて以降、テレワークに切り替え、現在でも出社率は5%を切っています。
在宅で仕事をするときに大切なのは、社員同士が「つながっている感覚」を持てること。さらにいうと、「価値観でつながる」「共通の判断軸を持つ」ことが重要です。相手の仕事ぶりや気持ちが見えにくい環境下でも、ミッションやバリューで手をつなぐことができれば、共通の価値観や判断軸のもと仕事を進められます。
当社では3ヵ月おきに従業員エンゲージメントサーベイを実施しているのですが、テレワークに切り替えた3ヵ月間で、従業員エンゲージメントのスコアが10%上昇しました。現在はさらに、10%アップしています。
この結果からもわかる通り、メルカリはテレワークへの切り替えが比較的うまくいっています。それはなぜかというと、先ほどお話ししたように、テレワークにおいてもミッションを重視し、バリューを体現していくための工夫を積み重ねてきたからです。
ハイコンテクストからローコンテクストへの制度転換が必要に
貴社では、2021年1月に新たな人事評価制度を導入されました。なぜ今、人事評価制度を刷新しようと思われたのでしょうか。
メルカリは今、ムラ(村)からマチ(都市)へのシフトを推し進めている真っただ中です。たとえば4年前の従業員数は300人ほど。ITベンチャーなど、比較的似た業界の出身者が集まっている組織で、ある意味、高い暗黙知で仕事が進められていました。
それが現在は従業員数1700名規模になり、実に多様なメンバーが集まっています。社員の国籍は約40ヵ国以上。ITエンジニアの部門は、半数以上が外国籍のスタッフです。全社を見渡しても、ネットベンチャー出身者もいれば、グローバルテックカンパニー出身者もいる。金融関連事業を展開する子会社の株式会社メルペイには、金融業界出身者が多数入社しています。
そこで人事評価制度も、さまざまなバックグラウンドの人々が集まる、多様な組織に対応できる内容にアップデートしようという話が持ち上がりました。属人性が大きくハイコンテクストな評価から、仕組化され、誰にとってもわかりやすいローコンテクストな評価に移行していく必要があったのです。
今後もエンジニアをはじめ、優秀な人材を世界中から採用していきます。そのため、ある程度グローバルスタンダートに近い評価制度にしたい、という狙いもありました。
真新しい人事評価制度に刷新するというよりも、組織フェーズに合ったものに移行する、という意味合いに近いのでしょうか。
そうです。今回の人事評価制度の改定は、あくまでもメルカリのミッションを実現するためにあります。
メルカリは、これまでも非連続な成長を繰り返してきました。しかし、大きな規模の組織になった今、ある程度は仕組化していかなければ、今後も非連続な成長を続けていくことは難しいでしょう。そこで、人事制度を私たちの規模感に合わせてアップデートしていこうと考えたのです。
そのために何よりも重視したのが、ミッションに基づいた「バリューの発揮」です。組織の規模が大きくなるにつれて、ミッションやバリューへの共感や発揮が弱まるというのはよく聞く話ですよね。メルカリの場合、「バリューが発揮されにくくなった」「共感が弱まった」という状況はありませんでしたが、「バリューの捉え方に違いが出てきた」感覚はありました。
たとえば「Go Bold」一つとってもそうです。大胆にやろうといっても、Aさんにとっての大胆さと、Bさんにとっての大胆さは違います。多様性に富んだ組織で、納得感のある評価を行うためには、バリューの言葉一つひとつを、もう少し具体的に、仕事に落とし込みながら明文化する必要性が出てきたのです。
目先の数字を追うためにバリューを疎かにする人はメルカリでは評価されない
新人事評価制度は、これまでの人事評価制度と何が違うのでしょうか。
以前の人事評価制度は、設定された目標をどの程度達成できたのかを「総合評価」で判断する形式でした。ただ、総合評価としてまとめてしまうと、数値化しやすいパフォーマンスのほうに、どうしても目が行きがちです。
そこで新制度では、評価軸を「成果評価」と「バリューをどれだけ発揮できたかの行動評価」の二つに分けることにしました。それぞれを5段階評価してもらい、賞与を「成果評価」と連動させ、昇給や昇格は「成果評価」と「行動評価」の両方を鑑みて決定することにしたのです。
メルカリでは、会社の業績や組織づくりに対して貢献したメンバーを評価する「メリトクラシー」の考え方を採用しています。学歴も社歴も、出身業界も、もちろん国籍や性別も関係なく、会社への貢献度を見ています。その点は昔も今も変わりません。
会社への貢献は、数値化された成果だけではありません。しかし、目先の成果やパフォーマンスだけを評価することがメッセージとして強く出すぎると、中長期の視野を持って大きな方針を打ちだすことがどうしても後回しになります。もしくは、そのような取り組みをしている社員が報われにくくなってしまいます。
そこで「バリューをどれだけ発揮できたかの行動評価」指標を設けて、「目先の成果だけではなく、中長期を見据えてチャレンジしてほしい」「将来のためにリスクをとってほしい」という会社からのメッセージをこめたのです。
施策の途中で失敗することや、方針を転換することはよくあること。結果が出るのは数年後、ということもあります。成果は賞与で評価するけれども、それがすべてではありません。「いかにバリューを体現できたか」を会社として重視していきたいと思っています。
新制度導入後は、成果が出ていない社員に対して「あなたは将来のために大事な種まきをしてくれた。確かにまだ成果は出ていないが、非連続な成長のためには必要な挑戦だ。だから今回、バリュー評価を高くつけます」と伝えやすくなりました。
タスク重視になりやすいテレワークだからこそ、「よりバリューに基づいた行動を引き出したい」という経営陣の思いも反映されています。
新人事評価制度のポイント
- 評価軸を「成果評価」と「行動評価」の2軸に
- 賞与は成果評価と連動。昇給・昇格は成果評価と行動評価で判断
- 行動評価を通じて、いかにバリューを体現できたかを評価
テレワークを導入した企業からは「成果(パフォーマンス)は評価しやすいが、その過程が見えないため、プロセス評価がしにくい」という声も聞かれます。貴社ではいかがですか。
メルカリでは以前から360度評価に近い制度を導入していて、マネジャーを含め、3ヵ月ごとにピアレビューをし合う仕組みがあります。一緒に仕事をしている同僚に「フィードバックをください」とシステム上でリクエストすると、「こういうところがよかった」「この部分はもっとよくできたはず」といったフィードバックがお互いにできるんです。
ここでも大事にしているのが、「What(パフォーマンスやアウトプット)」よりも「How(バリューの発揮度)」を重視すること。「あなたの〇〇の行動が、All for Oneを体現していました」「あの場面では、もっとリスクをとって、Go Boldな行動ができたはず」というように、どれだけバリューを発揮できていたかをフィードバックし合っています。マネジャーは評価時にその内容も参考にしています。
貴社では、周囲のメンバーがどれだけバリューを発揮しているかを見合う文化が根づいているのですね。
業務で使用しているチャットツールでも、「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」のスタンプがあって、日々の会話のなかで、かなり頻度で使われています。
また、スタッフ同士でリアルタイムに賞賛し合い、インセンティブとして一定額の金額を贈り合える、「mertip(メルチップ)」の仕組みもあります。これらの取り組みを通じて、常に社員がバリューを意識できる状態をつくれているのではないかと思います。
今回改訂した人事評価制度では、日本語が母国語ではない方や入社歴の浅い方も含めて、バリューに対して共通の理解を得られるように、グレードごとに期待するバリューの発揮度を明文化しました。バリューにひもづけた具体的な行動を言語化することによって、より精緻に期待値の設定ができるようになったはずです。
新人事評価制度では、アウトプットとしての成果が高くても、バリューの発揮度が低かったり、バリューに反した行動をしていたりする社員は昇格・昇給がしにくくなる、ということでしょうか。
その通りです。昇給・昇格は「成果評価」と「バリューを発揮した行動評価」のマトリックスで決まりますが、比重は「バリューを発揮した行動評価」に置いています。メルカリにとってバリューは先行指標。バリューを高いレベルで体現する方は、たとえいま数値には表れていなかったとしても、いずれ後から成果はついてくると考えています。
目先のパフォーマンスを出すためにバリューをおろそかにする人は、当社にとっては優先度の低い人材です。当然、低い評価をつけなければなりません。そういう意味では、厳しい指標といえるかもしれませんね。
「ダイバーシティ&インクルージョン」を評価軸に加える、新たな挑戦
それ以外に、人事評価制度で大きく変更された点はありますか。
「ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)」を新グレードの体系に加えました。D&Iを意識した行動として、会社から期待することを言語化し、評価指標に取り入れたのです。
メルカリにとって多様性が大事だということは、2~3年ほど前からメッセージとして伝えていました。ただ、仕組みとして評価にまで落とし込んではいませんでした。
今回、人事評価制度を改定するにあたり、「三つのバリュー」とは別に、D&Iに対してもしっかりと意識した行動をしていく必要があるだろうと考えました。バリューに匹敵するくらいの重要なものとして評価軸に組み込んだことは、とても大きな意味を持つと捉えています。
近年、D&Iの重要性が語られる機会は多いものの、評価にまで取り入れている企業は少ないと感じます。貴社ではなぜ、D&Iを新グレードの体系に加える意思決定をされたのでしょうか。
メルカリは皆さんに愛されるサービスを目指していて、現時点でもたくさんの方に愛されるサービスになっていると自負しています。さらにより多くの方々、日本のみならず世界中で愛されるサービスに成長していくためには、多様性が欠かせません。
メルカリを多様なバックグラウンドを持つ人々が活躍する職場にし、それを強みにしていきたいというのがCEOの山田(進太郎氏)の想いであり、確固たる会社方針でもあります。
社内には、D&Iを意識した行動ができている人もいれば、どんどん多様性が広がる職場に戸惑っている人もいます。どう動くべきかわからないという人も当然いるでしょう。D&Iを意識づけていくためには、いち早く実践している人たちに対して、きちんといい評価をしていくことが先決だと考えました。
新人事評価制度で新グレードを決める際に、「インクルージョンはバリューの一つである『All for One』と重なるのではないか」という声もありました。確かにその通りで、将来的には「All for One」のグレード内で評価できるかもしれません。しかし、現段階では、会社の文化として根づかせていくために意識してもらうことが必要だと考え、あえて別軸にして評価することにしました。
D&Iを推進する施策として、他にはどのような取り組みをされていますか。
メルカリではD&I推進を目的に、2019年から独自の研修プログラム「無意識バイアスワークショップ」を実施し、2020年からは全マネジャー受講必須の研修としています。
無意識バイアスとは、普段の生活や文化による影響で、無意識下に培われた「思い込み」や「偏見」のことで、人種や年齢、性別、出身業界や前職の企業だけを見て、無意識にラベリングしてしまう行為を指します。「外資系出身者はドライだ」や「女性は管理職になりたがらない」などはその一例です。
メルカリではこういうことをやめていきましょう、ということです。無意識なので、なくしていくためには、やはり訓練が必要。とくに採用や評価の場面では絶対にやってはいけないことなので、全マネジャーに研修を行い、意識づけしていくようにしています。
加えて、半年に1回の昇格評価の際に取り組んでいることがあります。当社では、ある一定レベル以上のグレードへの昇格や登用の際は、上司の推薦書が必須になります。その推薦書において「マイノリティーのタレントを考慮しましたか」と記載したチェックボックスをつくったのです。もし「考慮していない」と回答した場合には、なぜ考慮していないのか、理由を書く欄もあります。
これも無意識バイアスの一つなのですが、人は自分と似た属性の人をサポートしやすい傾向があります。そのため、日本人が大多数を占める部署では外国籍の社員が登用されにくく、男性の多い部署では女性のマネジャーが誕生しないといった状況が生まれやすくなってしまいます。そこで昇格や登用の際に、自部署内でマイノリティーのタレントを考慮したかどうか、立ち止まって考えてもらうことにしました。
ただ、採用や昇格・登用の際に、「評価基準を変えない」「げたをはかせた評価をしない」という点は徹底しています。マイノリティーの方を登用したいからといって、評価基準を甘くしてしまったら、それは組織にとってマイナスにしかなりません。その方にとっても不幸です。それだけは絶対にやめようと、マネジャーにも話しています。
たとえば女性の管理職についても割合や人数の目標を設けることはしません。その代わり、候補者の中の割合を高める働きかけや工夫はしています。女性の採用人数や管理職人数など結果の割合ではなく、女性の採用候補者、管理職候補者の人数を増やすポジティブアクションを積極的に行う。候補者を増やしながら、採用基準・登用基準は変えない。この点に、こだわりを持って取り組んでいます。
人事評価制度における
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)への取り組み
- D&Iを意識した行動として会社が期待する事柄を言語化し、評価指標に取り入れ
- 無意識バイアスワークショップの開催。マネジャーは受講必須
- 一定グレード以上の昇格・登用時にマイノリティータレントの考慮有無を確認
人事も「Go Bold」に! 制度改定を対話型で進めた意図
今回、新人事評価制度を導入するにあたり、プロジェクトチームを組まれたそうですが、プロジェクトはどのように進んでいったのでしょうか。
2020年の年初にプロジェクトを立ち上げ、2021年1月から新制度が始まったので、丸一年をかけて進めてきました。
最初の1~2ヵ月は大規模なヒアリングに時間を費やしました。経営陣へのヒアリングに始まり、マネジャークラスにもグループインタビューをするなど、ほぼ全社員にヒアリングを行いました。課題を整理し、制度変更によって何を実現したいのかを議論。大まかな方針を決めた後、グレードや報酬、昇給・昇格の考え方、賞与など具体的な制度の設計をしていきました。
新制度の設計で、最も注力したのは「社員との対話」です。まだ具体的な制度が決まっていない5月の時点で、大まかな方針を社員に共有し、「こんなふうに変えていこうと思っているけれど、どう思いますか」と投げかけたんです。8月から対話セッションをスタートし、英語セッションと日本語セッションを計6回、すべてオンラインで実施しました。
対話セッションのポイントは、現在発表している制度案は決定事項ではないと伝えること。「まだ制作途中ですので、気になることがあったら、何でもいってください」というスタンスをとったのです。あるグレードの詳細を決めるときに、投票形式で社員にアンケートをしたこともあります。
100人いて100人の人が「最高です!」という人事制度はありえません。誰かにとって素晴らしい案でも、ほかの誰かには受け入れられないかもしれない。社員数が増え、多様性が増した組織であれば、なおさらです。実際に当社でも、人事にさまざまな意見が寄せられました。「もっとリターンの差がつくように設計してほしい」という人もいれば、「リスクの少ない、安定した体系がいい」という人もいます。
たとえば、7割の人は支持してくれるけれど、3割の人は違う案がいいという場合もあるでしょう。そんなときは3割の意見に耳を傾け、誤解があればしっかりと説明し、運用面で3割の人の不満や不安を解消できないかを模索しながら、できるだけ多くの人が納得できる制度に落とし込んでいくことが大切です。
途中経過や進捗を共有し、意見を募るという手法は、経営陣や人事のみで制度を策定するのと比較して、相当な労力がかかるのではないですか。
プロジェクトチームでもよく話していたのが、人事の仕事は「アクセプタンス(受容)」が大事だということ。どんなに素晴らしい制度をつくっても、社員が前向きな気持ちになれなければ、制度を刷新してまで実現したかった目的や狙いは、結局実現できないでしょう。「この新制度は私たちも一緒になってつくったものだ」と感じてもらえるプロセスを、あえて手間と時間をかけてとることが、新制度の効果を高めると考えています。
メルカリの人事が大切にしているのが、「Employee Experience(従業員体験)」です。私たち人事が今回の制度変更で、どんなEmployee Experienceをつくりたいのか。プロジェクトメンバーと話しながら、一つひとつ意図を持って設計していきました。
最後に、貴社が現在、注力されている人事関連の取り組みがあればお聞かせください。
金銭的報酬と非金銭的報酬をバランスよく包括する「トータル・リワード」という考え方がありますが、今回の人事評価制度の改定を含め、最終的に「この会社で働いてよかった」と社員に思ってもらえる環境や制度をしっかりと整えていきたいと考えています。
最近、新しく始めた取り組みとしては、多様な人材が活躍できる環境をつくるという目的で、「merci box(メルシーボックス)」という社内の福利厚生プログラムに「卵子凍結支援制度」と「0歳児保育支援制度」を追加しました。
「卵子凍結支援制度」は、採卵、凍結保存などの卵子凍結に関する費用を会社が負担するもの。女性社員だけでなく、男性社員のパートナーにも適用されます。「0歳児保育制度」は、子どもが満1歳になるまでの認可・認可外保育園・ベビーシッター利用に関する費用の補助をするものです。
また、社員本人の病気・ケガを事由とした休暇を年10日間、有給休暇とは別に付与する制度「Sick Leave」の対象範囲も社員本人だけでなく、パートナーや家族、そしてペットにまで対象を拡大しました。社員からは「ペットの病気までサポートしてくれるなんて……」と驚きと喜びの声が寄せられ、私も嬉しく感じました。
メルカリでは人事評価や報酬の仕組みだけではなく、福利厚生や働きやすさなどあらゆる仕組みを見直し、多様な社員がイキイキと働ける環境をつくっていきたいと思っています。これからも、さまざまな方向からポジティブなEmployee Experienceを仕掛けていきますので、ぜひご注目ください。
(取材:2021年5月14日)