「日本一働きたい会社」から「世界最高のチーム」へ
経営理念に命を吹き込む、企業文化のつくり方
株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
羽田幸広さん
ビジョン・カルチャーフィットを重視した妥協なき採用
採用活動の選考過程で、応募人材が貴社のビジョンやカルチャーに合う人材かどうかをどのように見極めていらっしゃいますか。
たとえば新卒採用では、当社のビジョンやカルチャーに興味を持ってもらえそうな学生が集まる就職イベントや人材紹介のみを活用しています。応募を集める段階から当社にフィットする母集団形成ができるよう、ある程度スクリーニングをかけているのです。学生に来場してもらう初回の採用セミナーは2時間ほどのプログラムですが、ほぼ「ビジョン・戦略」の話しかしません。東京で開催する際は、社長の井上が登壇します。社是や経営理念は、ある意味、当社の社員になってくれる学生に対する“約束”です。だからこそ、ビジョンを決めた社長自身が登壇し、自分の言葉で語る。そうすることで「この会社が言っていることは信じられる」と学生にも感じてもらえるのではないかと考えています。
また、最終選考の前に人事が学生のアドバイザーとなり、「どのような軸で会社を選んでいるのか」「本当にやりたいことは何か」を掘り下げる時間を設けています。選考ではなく、あくまでアドバイスの時間ですから、学生も本音を話しやすいんですね。学生と人事で真剣に考え、話し合っていくと、「もしかしたら、うちに来るよりもコンサルティングファームに行くほうが向いているかもしれない」という結論になることもあります。その際は、迷わず他社を勧めます。いくら能力が高くても、当社の方向性とマッチしないのであれば、お互いのために採用しません。
学生に目線を合わせ、丁寧に向き合っていくことでミスマッチを防いでいるわけですね。反対に、これまでの採用活動で「うまくいかなかったこと」「失敗した経験」はありますか。
過去のある時期に、最終面接の合否権限を社長から事業部長に委譲したことがありました。ビジョンやカルチャーを理解したうえでジャッジしてくれていましたが、そのなかで何人かは「採用を早く決めたい」とあせって、ビジョンへの共感が低い人材を採用してしまった。採用者は、個人としての能力が高く、早く昇進しましたが、ビジョンやカルチャーへの共感が低かったため、一部の部署で企業文化が揺らいでしまいました。このときは、社長や私に最終面接の合否権限を一旦戻し、「この人なら採用の可否をジャッジできる」という人材に再度委譲していくプロセスを経ました。
企業文化を醸成するうえで、重要なのは「トップダウン」です。まずは経営幹部が一枚岩になること。さまざまな意思決定を行う経営陣が揺らいでいては、文化を根づかせることができません。ちなみに当社には、「役員の心得」と呼ばれるものがあります。役員がビジョン浸透のために実践すべき5箇条を定めたものですが、「自部門の役員がビジョンを積極的に発信し、行動しているかどうか」を年2回社員にアンケートをとり、調査しています。ビジョンを明確にしたら、まずは経営陣が率先してビジョンやカルチャーを語り、体現していくことがとても大切だと考えています。