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となりの人事部

野村證券株式会社:
多様性に優先順位をつけない!
野村證券の“草の根”発「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みとは(後編)[前編を読む]

野村證券株式会社 人材開発部 エグゼクティブ・ディレクター タレントマネジメント・ジャパンヘッド 兼 ダイバーシティ&インクルージョン・ジャパンヘッド

東 由紀さん

インタビューの前編では、女性のキャリア、育児や介護、LGBTなど解決すべき多様な課題に優先順位をつけない、野村グループの「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方を聞きました。ダイバーシティ推進に取り組む姿勢そのものが、ダイバーシティを体現しているといっていいでしょう。後編では、その活動の中核をなす“草の根”の社員ネットワークの仕組みや、ダイバーシティ推進研修の具体的な内容についてもうかがいました。女性活躍推進にとどまらず、人と人との間に存在し得るあらゆる違いを認め、企業の競争力向上に生かすヒントが見つかるはずです。

Profile
東由紀さん
東由紀さん
野村證券株式会社 人材開発部 エグゼクティブ・ディレクター タレントマネジメント・ジャパンヘッド 兼 ダイバーシティ&インクルージョン・ジャパンヘッド

ひがし・ゆき ●ニューヨーク州立大学卒業後、1994年にブルームバーグ東京入社、営業部門で電子取引システムの導入・企画開発・運営に携わる。2005年にリーマン・ブラザーズ証券債券部門で、リサーチや分析ツールを機関投資家に提供するサービスの企画・開発・マーケティングの責任者を務める。2008年の野村證券による継承に伴い、リサーチ部門でリサーチレポートの執筆から配信までのプロセスをグローバルに統合するプロジェクトのマネージャーとして企画・開発・運営を担当する傍ら、「アライ」としてLGBT社員ネットワークのリーダーを務める。2013年、社内公募制度により人材開発部へ異動、本社部門の人材育成とダイバーシティ&インクルージョンのジャパンヘッドに着任。2015年6月よりタレントマネジメント業務が加わり、現在タレントマネジメント・ジャパンヘッドとして、グローバルビジネス部門の人事戦略と、野村證券全社に向けて多様性の理解と促進に取り組んでいる。

ネットワーク活動のポイントはロールモデルの可視化

社員ネットワークには、「ライフ&ファミリー」(L&F)「ウーマン・イン・ノムラ」(WIN)「マルチカルチャー・バリュー」(MCV)の三つがあり、どれも社員が自主的に運営しているというお話でしたが、具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。

活動の手法や仕組みは、三つのネットワークともほぼ共通しているのですが、たとえばL&Fでは、「ライフの充実がワークの成果につながる」が活動のテーマですから、そういうロールモデルを社内外に求めて、可視化することに力を入れています。これまでにも、仕事と育児・介護を両立してきた男性社員、女性社員を招いてディスカッションをしてもらうなど、キャリアに対する意識や家庭との両立の体験談、工夫などをシェアするイベントを開催してきました。また、外部の講師を招いてのセミナーもよく行われます。昨年は介護に特化し、介護ストレスマネジメントの専門家による講演会を企画するなど、ライフとワークの充実に役立つ情報提供と啓発に取り組んでいます。その他、同じ育児の悩みを抱える社員同士がランチタイムに集まって思いや知恵を交換したり、社内のロールモデルやメンターとつながりを持ったり、そうしたネットワーキングの機会や交流の場をアレンジするのも重要な取り組みの一つですね。

東由紀さん Photo

イベントのテーマや講師の選定などには、東さんら人材開発部も関わるのですか。

いえ、企画立案から講師の人選、依頼、交渉に実際の運営まで、ほぼすべてを、ネットワークのメンバーが自分たちでやり遂げます。私たちの出番は予算を付けるぐらい。逆に、こちらが「これをやりなさい」なんて口出しすると、やらされ感で意欲を失ってしまうかもしれません。他社のダイバーシティ推進担当者の方々と課題や解決策を話し合う異業種交流会も実施していますが、「友人の勤務先がこんな活動をしているので組んでみては」というふうに、メンバーの個人的な交友関係から話がまとまることも多いようですよ。

メンバーの熱い思いが伝わってきますね。また、育児や介護の問題を扱うL&Fが、女性のキャリア推進を考えるWINの活動と切り分けられている点もユニークです。

たしかに日系企業でダイバーシティに取り組む場合、その二つを一緒にして、女性活躍支援と銘打ってしまうことが多いかもしれませんね。でも、育児や介護は男女共通の課題なのに、そのように括ると、男性が関わりにくくなってしまう。だから弊社ではL&FとWINに分け、WINは女性のキャリアに特化した活動を行っているわけです。ここでもロールモデルを提供することに重点を置き、ランチタイムに社内の女性管理職を囲んで意見交換をしたり、社外から女性の起業家や専門家を招いて講演会を行ったりしています。

最近注目されているLGBTに関する取り組みは、MCVのテーマのひとつですね。東さんも、かつてはMCVにリーダーとして参加していらっしゃいました。

リーマン・ブラザーズからネットワーク活動を受け継いだ当初、LGBTに関する取り組みは、LGBTの当事者である外国人の社員が中心になって進めていたのですが、その人たちが退職した後、リーダーのなり手がいない時期が続き、なぜかリサーチ部門にいた私のところに、人事から「リーダーをやってほしい」と電話がかかってきたんです。私が「当事者ではないのですが……」というと、「当事者でなくても、リーマン・ブラザーズ出身だからLGBTはわかるでしょう」と。たしかにアメリカでは身近でしたし、同僚や友人にも当事者はいました。でも、当事者ではない自分に何ができるのか――。ネットワークには参加したものの、すごく悩んだんですね。そんなとき、他社でLGBTへの理解に取り組んでいる担当者の方から、「アライ」という考え方を教わったのです。


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