野村證券株式会社:
多様性に優先順位をつけない!
野村證券の“草の根”発「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みとは(前編)
野村證券株式会社 人材開発部 エグゼクティブ・ディレクター タレントマネジメント・ジャパンヘッド 兼 ダイバーシティ&インクルージョン・ジャパンヘッド
東由紀さん
社員ネットワークを立ち上げた“マイノリティー”の思いとは
「社員ネットワーク」の仕組みや活動体制について教えてください。社員が自主的に運営している、とのことですが。
はい。さまざまな課題を解決するために、希望する社員がボランティアで参加する組織です。活動は業務時間外ですが、手当も、残業代も出ません。ネットワークはテーマごとに三つに分かれています。一つが女性のキャリア推進を考えるネットワークで、Woman in Nomuraの頭文字を取って「WIN」。もうひとつが「ライフ&ファミリー」(L&F)と呼ばれるネットワークで、健康、育児、介護の三つに関わるワーク・ライフマネジメントをテーマにしています。三つ目に、多文化における相互理解や世代間コミュニケーション、LGBTに代表される性的マイノリティーの正しい理解を推進する「マルチカルチャー・バリュー」(MCV)というネットワークがあります。それぞれ 2名の役員の支援を受けながら、図のような体制で活動を展開。情報発信や啓発イベントの企画・運営、他社との交流などを通じて、多様性への理解を推進しています。
外資で行われていた取り組みをそのまま引き継ぎ、国内で立ち上げるのは大変だったのではないでしょうか。そうした自主的かつ組織横断的なネットワークは、一般に日本の企業風土にはなじみにくいですよね。まして忙しいなか、ボランティアで活動するわけですから。
聞いた話によると、たしかに最初は、リーマン・ブラザーズからの転籍組、とくに前職でもネットワークのリーダーだった人を中心に一部の人だけが取り組んでいるという状況で、なかなか広がっていかなかったようです。実は私も人材開発部に来る前から、MCVのネットワークのリーダーを担当していたのですが、やはりそういう印象が強く、気になっていました。参加しているのは「元リーマン」や中途採用で外から来た社員ばかり、生え抜きが少ないな、と思っていました。私もそうですが、外から来た人はある意味でマイノリティーですから、生え抜きとは異なるマイノリティーとしての考え方を分かってほしい。みんな、そういう思いを少なからず持っていたんです。
なるほど。そこにも、ダイバーシティの構造が存在しているわけですね。
「前編」は、野村證券の「ダイバーシティ&インクルージョン」に関する考え方、全体像を中心にうかがいました。「後編」 では、その活動の中核をなす“草の根”の社員ネットワークの仕組みや、ダイバーシティ推進研修の具体的な内容についてうかがいます。