希少人材を採用するために企業がとった
「なりふり構わぬ」手段とは?
即戦力人材が欲しい企業の裏ワザ? 「支度金100万円」も転職者はクールに見ている
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企業の熱意が逆効果を招くこともある
しかし、当のエンジニアには、そうした企業の採用への熱意を冷静に観察している人もいる。
「支度金100万円の話は、私も聞いたことがありますよ」
そう話してくれたのは、通信関係の企業に勤務した経験があり、転職相談に来ているGさんだ。Gさんは、今回K社が対象としている分野の開発経験はないが、同僚がその分野に携わっているのだという。
「若い人でお金に困っている場合、100万円はうれしいでしょう。しかし、そうでなければ、100万円が出るという理由だけで、その会社に入社することはないんじゃないかなあ。私がその立場でも、やはり、仕事内容や開発環境を重視すると思います」
エンジニアだけあって、さすがに冷静である。たしかに転職は一時的なものではない。長ければ数十年にわたって働く可能性もあるのだから、目先のお金に惑わされないというGさんの意見は正論だ。Gさん自身の経験からも、何らかの事情で採用を特別に強化している企業は、紹介会社を何社か回れば分かるという。
「どこの紹介会社に行っても、必ず同じ企業を紹介されるんです。専門分野がちょっと違っているのに紹介されることもあります。不思議に思って、親しいコンサルタントに聞いたら、やはり企業から高い紹介手数料を提示されていました」
そこまで見抜かれていると、こちらも苦笑いするしかない。ただ、Gさんによると、特別に採用を強化している企業への見解は人によって分かれるのだそうだ。
「私の知り合いは、紹介手数料を高く支払ったり支度金を用意したりする会社は、人材にお金をかける会社だから『いい会社』だと言っています。でも、私は『そこまでしないと人が採れない会社なのか』『離職率が高いのではないだろうか』と思って、なんとなく警戒してしまいます」
それでも企業からすると、自社が優先的に紹介されれば、必要な人材を採用できる確率が間違いなく高くなる。企業としては、なりふりを構っていられないのだろう。
「それだけお金をかけてでも採用してくれるうちが、華かもしれませんが…」
Gさんは、ちょっとうらやましそうな表情を見せた。技術革新の速さは、時に人材を置いていってしまうこともあるのだ。
「Gさんのご経験を求めている企業は、たくさんありますよ」
私は改めて、Gさんとの転職相談を再開した。
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