希少人材を採用するために企業がとった
「なりふり構わぬ」手段とは?
即戦力人材が欲しい企業の裏ワザ? 「支度金100万円」も転職者はクールに見ている
ITや通信をはじめとする技術革新は、ますますそのスピードを速めている。企業は生き残りをかけて、最新技術に対応できるエンジニアを採用しなくてはならない。とはいえ新しい技術分野であればあるほど、専門知識や開発経験を持つ人材は少なく、限られた人材をめぐって、企業間の競争が激化している。そんな転職市場で即戦力採用を成功させるためにはどうすればいいのか。「とにかく出来ることは何でもやろう」という企業も現れてきているが、転職者は意外とクールにそうした企業の姿勢を見つめているようだ。
紹介手数料2倍の求人案件
「この分野の開発経験があるエンジニアの方がいらっしゃったら、ぜひ紹介して下さい。通常は、3年以上の開発経験がある方をお願いしていますが、この分野に関しては1年程度、場合によっては半年程度でも十分採用の可能性があります」
募集要項の説明をしながら、K社の人事マネジャーは、広い会議室に集まった人材紹介会社の営業担当者やコンサルタントの顔を見渡している。しかし、「手応えあり!」という表情をしている者はほとんどいない。私もその1人だった。なぜなら、今もっともホットな開発競争が行われているモバイル通信の技術者に、ピンポイントで絞り込んだ募集だったからだ。
「モバイル通信の開発ができる技術者は本当に少ないと思いますし、同じようなスペックで募集している競合企業が多いことも承知しています」
人事マネジャーは、声を張り上げている。
「そこで紹介会社の皆さんに頑張っていただけるように、今回は紹介手数料を大幅に上乗せすることにしました」
もともと人材紹介の紹介料は決して安いものではない。そのため成功報酬制を採用しているところが多いのだが、なんとK社は、通常の紹介手数料の「2倍」を用意するというのだ。それだけ「どうしても成功させなくてはならない採用」ということなのだろう。
その並々ならぬ決意は別のところからも伝わってきた。K社の採用ホームページを見ると、自己応募で採用された人には、「入社支度金100万円」を支給するという。
「弊社の場合、直接応募はほとんどないんです。だからといって何もしないわけにはいかないので、少しでも応募者の動機づけになればと思い、実施しました」
通常、人材紹介会社に支払う紹介料が100万円以下ということはない。つまり、自社の採用ホームページからの直接応募で採用できれば、人材に直接100万円支払ってもむしろK社としては「安上がり」ということになる。
また自社の社員の個人的な紹介で入社した場合には、その社員にも特別にボーナスを支給するという。採用予算を削減している企業が多いなか、最先端技術に関連する採用だけはまさに別世界だ。