条件が異なる人材を紹介できるか
希望は性別を限定した採用
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果たしてキーパーソンの意向は?
「やはり、見送りの理由は性別でしょうか。キャリアは十分の方だと思いますが」
念のため、A社に確認の連絡を入れてみた。キャリアアドバイザーにどうしても確かめてほしいと頼まれたからだ。
「結論からいえばそうです。今回は、採用したい人物像がすでに決まっているので御社にお願いしているんです。公募で募集をしていないのも、その条件があるからです」
公募した場合、女性の応募があるとお断りしなくてはならない。場合によっては、素晴らしいキャリアを持っている人も断ることになるだろう。応募者からすれば理由もわからず落とされたことになり、A社の印象も悪くなる。また採用担当としても、書類確認や不採用の連絡などの労力をできるだけ省きたいのだという。
私は一連の経過をキャリアアドバイザーにフィードバックするとともに、社内データベースにもしっかりと付記した。
もちろん、男性向けの商品を開発するからといって、男性以外の意見が参考にならないわけではない。女性ならではの視点や、これまでの経験から、思いもよらないいい製品が生まれることもあるだろう。実際に候補者と会って話してみたら、「ぜひ採用したい」と感じたかもしれない。
もし、私たちがA社と契約している人事コンサルティング会社なら、部長に直接かけあって「本当にその条件でなければいけない仕事なのか」と忠告できたのではないだろうか。それによって、A社はよりスピーディーに人材を採用できていた可能性もあるのだ。
「とはいえ、無理に推薦してA社との関係が悪化してしまっては、本末転倒だ……」
現状では人材紹介会社がそういった「コンサルティング」までできるケースは少ない。もっと信頼してもらえるように力をつける必要があることを、改めて感じたのだった。
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