紹介会社による求職者の「入社意思固め」は可能?
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やりすぎると評判を落とす危険も
「次回からは、辞退者が出ないようにします」
そうは言ったものの現実にはなかなか難しいことも分かっていた。紹介会社も「下手な鉄砲も数撃てば当たる」とばかりにむやみに紹介しているわけではない。紹介する以上は入社してもらいたいと、候補者の入社意欲を高めるための情報提供は可能な限り行っている。しかし、最終的には「候補者の意思を最優先する」という根本の考え方は変えられない。
R社を紹介した人材との間では、こんなやりとりもあった。
「やはり開発の仕事を続けていこうと思います。R社は辞退させてください」
「そうですか。でももったいないですね。年収だとR社の方がアップしますし、最新の技術にも触れることができますよ。取引先は大手ばかりですから、世界的に売れる製品開発に関わることもできると思います」
「そうなんですが……」
技術者の中には、設計や開発をステータスの高い仕事とみなし、セールスエンジニアやサポートエンジニアの仕事は設計・開発ができない人が行うものだと決めつけている人もいる。友人同士の会話でも、設計・開発で転職したといえば自慢になるが、セールスやサポートの職種だと話しにくいこともあるという。
そのような人の考え方を変えるのはとても難しい。説得しようとすると「合わない企業を無理やり紹介された」と思われてしまう。近年は紹介会社もインターネット上などでシビアな評価にさらされているので、ネガティブな印象を与えるとそれが一気に拡散して、大きく評判を落とすことになる。
「わかりました。ご希望に合った企業を再度ご紹介します」
最終的にはやはりこうなってしまうのだ。
いちばんいいのは、少しでも興味を持って面接に訪れた人材に、採用担当者がアピールしてその場で企業のファンにしてしまうやり方だろう。社内見学や工場見学、先輩社員や同僚社員との懇談など、いろいろと方法はある。
ただ、業界内で人気がない企業ほど、採用部門のマンパワー不足でそういったきめ細かな対応ができない、あるいは昔ながらの「いったん入社させてしまえば何とかなる」という考え方が根強いといった傾向があるようだ。
R社の採用担当者が言っていた「○社は入社意思を固めてくれる」という話も、まだ若くて業界のことをよく知らない人材を候補者として送り込んでいるだけなのかもしれない。それだと、採用はできるかもしれないが、定着やその後の活躍についてはうまくいかないのではないだろうか。
とはいえ一般の求人サイトでは人気のない職種の募集は厳しい。だから人材紹介を利用するという企業も多い。なんとか二人三脚で採用を成功させる方法を考えないといけないなと私は考えていた。
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