職場のモヤモヤ解決図鑑【第88回】
新しい福利厚生制度の導入! 何を選べばいい?[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
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石井 直樹(いしい なおき)
人事労務や総務、経理の大ベテラン42歳。部長であり、吉田さんたちのよき理解者。
自社の福利厚生の充実に熱心な吉田さん。上司に対して意欲的にプランを伝えるものの、すべてを導入するのは現実的に難しそうです。多様な福利厚生が求められるとはいえ、制度の拡充にはお金も時間もかかります。せっかく制度を整えても、従業員が喜んで使わなければ意味がありません。自社に合った福利厚生制度を選ぶポイントを整理します。
新たな福利厚生制度を導入する際に重要なこと
福利厚生にはさまざまなメニューがあります。住宅補助や医療補助、休暇制度といったスタンダードなものから、従業員の経済的安定につながる財形補助、さらに近年は多様な働き方を支えるための育児補助や介護補助など、制度の充実をアピールポイントとする企業も増えています。
一方で、福利厚生にかけられる予算や人員には限度があります。新たな福利厚生制度の候補を考え始めると収拾がつかなくなってしまうことも。福利厚生制度の改善や拡充を行う際は、以下のポイントを意識しましょう。
社員のニーズを把握する
自社の社員のニーズを調査します。子育て支援や介護支援、キャリアアップ支援などは、従業員によってニーズが異なります。人事が想定している福利厚生のメニューが、あまり人気がない可能性もあります。事前にニーズを調査し、福利厚生制度の刷新に活用します。
かかる費用を明確にする
計画段階で、かかる費用を計算します。導入するメニューや外部への委託コストなどを明確にすることで、費用対効果が明らかになります。
不公平にならないようにする
福利厚生制度に関して、「対象者にならないから利用できない」という不満が出ることがあります。家族手当や育児手当のように、家庭を持つ従業員のみが利用できる制度ばかりでは、平等ではありません。全従業員が利用できるようなメニューを盛り込むとともに、運用の段階で設計の意図を従業員に説明します。
カフェテリアプランの利用を検討する
全従業員が対象となる福利厚生メニューを用意する場合、カフェテリアプランという選択肢があります。カフェテリアプランでは、従業員がポイントの範囲で自身の興味やニーズに合ったメニューを選択できるので、不公平感の解消につながります。
社員に喜ばれる福利厚生
福利厚生と言えば、ひと昔前は保養所などの施設が人気でした。近年でも、レジャー・アクティビティなどは、従業員の生活を豊かにするため、人気があります。一方で、働き方が多様化していることから、スキルアップ支援や働きやすさの向上につながる福利厚生メニューの人気が高まっています。
スキルアップ支援 |
【自己啓発支援、勉強費用補助】 スキルアップ支援には、休職して留学や勉強ができる制度、一定額の勉強費用・資格取得費用の補助・奨励金、書籍購入費用の補助などがあります。 |
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モチベーションの向上 |
【特別休暇、ヘルスケアサポート】 特別休暇は、法律で定められている休暇に加え、企業が設定する独自の休暇です。慶弔休暇のほかにも、勤続年数に応じて与えられる「リフレッシュ休暇」や、ボランティアへの参加日を休みにできる「ボランティア休暇」などがあります。近年では「ペット忌引き休暇」など、従業員のプライベートに配慮したものも登場しています。ワークライフバランスの実現により、従業員の仕事へのモチベーションアップが期待できます。 ヘルスケアサポートは、無料の健康診断などが該当します。社員食堂の導入が難しい企業向けに登場した栄養バランスが良い弁当や惣菜が入った冷蔵庫を置くだけのスタイルの「置き型社食サービス」も、社員の健康を支えるのに役立ちます。 |
働きやすさの向上 |
【ファミリーサポート、子育て支援、介護支援】 育休の延長、社内保育所の設置、従業員の家族に関わる補助があてはまります。また、介護と仕事を両立する人に向けた情報提供、相談窓口の設置、介護サービス費用の補助なども、少子高齢化の日本社会で必要とされる福利厚生制度です。従業員の働きやすさ向上は、企業にとって重要な経営課題です。 |
福利厚生の企業導入事例
最後に、福利厚生の企業事例をご紹介します。
子連れ出勤制度 / サイボウズ株式会社
「子どもが学童保育に行きたがらない」「子どもの預け先が無い」という問題を解決するために開始した制度です。チームの生産性を下げないなどのルールのもと運用されており、子育てをする社員の緊急時の受け皿として機能しています。
パワーナップ(お昼寝制度) / 株式会社OKUTAオクタ
ナップとはお昼寝のこと。パワーナップ制度とは、昼休憩とは別に、1日15分の昼寝を会社が認める福利厚生です。従業員は眠くなったタイミングで仮眠をとれます。従業員の集中力アップ、生産性向上に寄与しています。
シナジーカフェ「GMO Yours」/GMOインターネットグループ
GMOインターネットグループでは、シナジーカフェ「GMO Yours」を設置・運営しています。社食サービスだけではなく、イベントスペースとしても活用可能な場です。多様な感性を持った人財が集い、刺激しあうことで、新たな技術やサービスが生まれる場となることを目指すという会社の方針に基づくものであり、24時間・365日食事は全て無料です。
親孝行支援制度/大和ハウス工業
遠方にいる要介護状態の親に関わる理由で帰省する際の交通費相当額として、年4回を上限に、帰省距離に応じた「親孝行支援補助金」を支給する制度です。ほかにも、仕事と介護の両立を図るための制度で、介護休業の終了事由が生じるまで無期限で取得可能な介護休業制度を独自に設けています。
- 【参考】
- ワークライフバランス|大和ハウス工業
【まとめ】
- 福利厚生制度を新たに導入する際には、社員のニーズを調査する
- 制度の対象者に偏りが出ないよう、全従業員が利用できるメニューを検討する
- 自社の経営方針に沿った福利厚生を導入することが、生産性向上や組織強化につながる
いろいろな制度に目移りしてしまいますが、まずは社員のニーズを把握します!
そうだね、アンケートをとることからはじめよう
あとはそれぞれの制度にかかる費用を調べますね
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!