職場のモヤモヤ解決図鑑【第73回】
内定者の悩みに寄り添う内定者フォローとは?
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
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森本 翔太(もりもと しょうた)
人事部に配属されたばかりの23才。部長と吉田さんに教わりながら、人事の基礎を勉強中。
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石井 直樹(いしい なおき)
人事労務や総務、経理の大ベテラン42歳。部長であり、吉田さんたちのよき理解者。
内定者フォローという重要な仕事を任された森本さんと吉田さん。昨今は1社から内定を得た後も就職活動を続ける学生が多く、「内定=ゴール」とはいえません。内定を得た学生が感じる不安や悩みを解消し、入社までサポートする「内定者フォロー」の重要性が高まっています。
内定者フォローとは
内定者フォローとは、内定後の辞退を防ぐために行う企業の取り組みです。主に新卒採用で行われ、内定出しの後に研修や内定式を実施したり、内定者同士や先輩社員との交流を図ったりすることで、就職への不安を解消させ、仕事のモチベーションを向上させることを目的としています。企業が自社の悪い面も含めたありのままの情報(RJP)を提供することは、入社後のミスマッチ防止や定着につながります。
内定者フォローが注目されている背景
団塊世代の引退、人口減少を受け、近年は空前の売り手市場と言われています。文部科学省と厚生労働省が共同で調査している「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によると、大学生の就職率はコロナ禍には若干落ち込みましたが、2023年3月卒の就職率は97.3%と高い数値となっています。
選考時期でいえば、内定式が多く行われる10月1日時点で、74.1%が内定を獲得しており、ひと昔前の5割・6割といった数値から大きく伸びていることがわかります。学生のなかには、1社から内定を得ていても、より志望度の高い企業の内定を目指したり、複数の企業を比べて理想に合った就職先を模索したりする人も少なくありません。
このような状況下、内定辞退を防ぐために内定者フォローが注目されています。『日本の人事部 人事白書2020』によると、「内定者フォローを行っている」「行う予定」と回答した企業は7割以上でした。具体的な策として、最も多かったのは「定期的に連絡を取っている(電話・メール)」(78.8%)。他に「自社の理解を促すイベントを実施している(社員座談会・懇親会など)」(64.2%)、「内定者同士の交流を促進している(研修・合宿・旅行など)」(33.5%)などがありました。
内定者が内定後に抱く不安とは
内定者は、仕事に対する不安、会社に対する不安、社会人になることへの不安など、さまざまな不安を抱えています。たとえアルバイトの経験があったとしても、企業に所属し責任を持って働くことは、ほとんどの学生にとって人生で初めての経験です。多くの情報がネットで得られる昨今は、入社までにネガティブな情報に触れ、不安を膨らませてしまうこともあります。
内定者が抱く不安は、大きく分けて以下のものがあります。
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職場の人間関係への不安:
上司や先輩の人柄はどうか、同期と仲良くできるか、職場のメンバーは尊敬できる人か、パワハラやセクハラなどはないか -
会社や仕事内容への不安:
自分が成長できる仕事か、新入社員を育ててくれる意思を持っている会社か、事業に将来性はあるか、社風になじめるか -
社会人生活への不安:
社会人としてやっていけるか、就業環境は自分の希望に合ったものか
企業が選考中から仕事内容や組織風土について伝えていても、内定者はそれで十分とは思っていません。内定者フォローを通じ、さらに密度の高い情報を得て、働く自信や覚悟を持ちたいというのが、内定者の思いです。
内定者フォローのポイント
内定者は働くことに不安を感じています。内定者フォローでは、研修のようなスキル習得を目的とした取り組みだけではなく、事業への理解を深めたり、人間関係の不安を取り除いたりするための取り組みも行うことが重要です。
【内定者フォローのポイント1】
企業や事業への理解を深めてもらう
選考中に情報を提供していた内容でも、内定者がさらに深く理解できるよう、新たに場を設けます。社内見学やインターンシップなどで、内定者だからこそ触れられる業務や情報を提供すると、理解促進だけではなくモチベーション向上にもつながります。
【内定者フォローのポイント2】
人間関係の不安を取り除く
入社までに同期や社員と接触する機会が少ないと、「この会社でやっていけるだろうか」という不安が膨らんでしまいます。内定式や内定者懇親会を通じて、同期同士のつながりを強めるとともに、先輩社員との交流の場を設けることで、その不安を解消することができるでしょう。仕事への期待感を膨らませることも可能です。
【内定者フォローのポイント3】
定期的に連絡を取る
内定後は、事務連絡を含めて定期的に情報発信を行います。入社までにどのようなイベントがあるのか、スケジュールの目安を伝えるだけでも内定者側に安心感が生まれます。内定を出した後、就職活動を続ける学生も少なくありません。面談など内定者の話を聞く機会を設けること、また、それにより本心を話してもらえる信頼関係性をつくることが重要です。
【内定者フォローのポイント4】
選考段階から内定辞退防止や入社意欲を高める
選考の初期段階から、ミスマッチ防止を含めて対策を行う企業は少なくありません。『人事白書』によれば、半数以上の企業が「募集時」から応募者の入社意欲を高めるための施策を実行していると回答。採用の早期化も踏まえ、選考前にインターンシップを開催し、ミスマッチ防止や入社意欲の醸成を図る企業も少なくありません。
選考初期からの一貫したフォローが、内定辞退の防止につながるといえるでしょう。
内定者フォローの手法
内定者フォローには、さまざまな手法があります。以下に、目的別の代表的な手法をご紹介します。
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人間関係の不安解消:
社員や内定者とのコミュニケーション促進、交流
例)内定式、内定者懇親会、座談会、社内イベントへの参加など -
会社や仕事内容の不安解消:
会社の実情に触れる
例)内定者研修、内定者インターン・アルバイト、社内見学、工場見学、施設見学 -
社会人生活に関する不安解消:
さまざまな角度からの情報提供
例)社内報、内定者研修、保護者説明、社内イベントへの参加、定期連絡、人事との面談
【まとめ】
- 内定後も就職活動を続ける学生が多く、内定者フォローの必要性が高まっている
- 学生は内定承諾後も、選んだ就職先に不安を抱いている。不安解消の情報提供やコミュニケーションがポイント
後編では、内定者フォローの手法ごとの効果について詳しく紹介します
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!