職場のモヤモヤ解決図鑑【第67回】
もしかして燃え尽き症候群?
様子が気になる部下への対応
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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山下 健悟(やました けんご)
関東圏のメーカー課長職45歳。20人ほど部下がいる。部下がもっと働きやすく、活躍できるチームを目指し、試行錯誤の日々。
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江口 佐和子(えぐち さわこ)
キャリアコンサルタントの資格を持つ、40才のベテラン人事。マネジャーからよく相談を受ける。
部下の様子が気になり、人事に相談した山下さん。大きくて責任のあるプロジェクトに取り組んでいた部下に何かあったのではないかと心配しています。燃え尽き症候群は、放置すると心身ともに支障をきたす可能性があります。原因と対処法について見ていきましょう。
燃え尽き症候群とは?
燃え尽き症候群とは、ひとつのことに没頭していた人が、心身の極度の疲労によって燃え尽きたかのように意欲を失い、社会に適応できなくなってしまう状態のことをいいます。「バーンアウトシンドローム」とも呼ばれ、通常の疲労とは異なる精神疾患の一種です。
「バーンアウト」のほかに、働く意欲・状態を表す関連概念として、「ワーク・エンゲイジメント」「ワーカホリズム」「リラックス」があります。
「ワーク・エンゲイジメント」は、仕事に対してポジティブで充実した状態を指します。バーンアウトと対極の概念です。「ワーカホリズム」は脅迫的に働いている状態で、職を失う不安を回避するために追い立てられるように仕事をするなど、活動的ではあるものの仕事に対してネガティブな感情を持っています。「リラックス」は安心して働いているけれど、活動水準が低い状態をいいます。
燃え尽き症候群の原因と症状
燃え尽き症候群は、理想主義や完璧主義の人が陥りやすいといわれます。個人的な特性が関連するのはもちろんですが、背景にあるのは強いストレスです。
燃え尽き症候群の原因
従業員が燃え尽き症候群に陥りやすいタイミングは、責任のある仕事が一区切りついたあとや、繁忙期の直後などです。過労と強いストレスが蓄積している状況で、「公平な評価を得られていない」「思った成果が出ていない」という不満や落胆が加わると、燃え尽き症候群が起こりやすくなります。
環境要因のほか、個人の特性も燃え尽き症候群の原因となりえます。真面目で仕事熱心な人や理想が高い人ほど、現実とのギャップに消耗し、燃え尽き症候群に陥りやすいといわれています。
かつては、医療や介護などの対人サービス職で燃えつき症候群が多いと言われていました。しかし、近年では発生する職種は幅広くなっており、スポーツや受験、子育てなどでも発症するといわれています。
燃え尽き症候群の症状
燃え尽き症候群を発症すると、従業員自身だけではなく、周囲への対応にも変化が見られます。
従業員自身の変化
- 遅刻や無断欠席が急に増える
- 仕事に対して意欲が見られなくなる
- 仕事の質が急激に落ちる
- 身だしなみが乱れ、服装や髪型が適当になる
周囲への対応の変化
- 他者に冷たく接するようになる
- 同僚や上司、顧客に対しての愚痴・悪口が増える
- 人とのかかわりを避ける
これらの症状を、周囲が「甘え」や「やる気がない」と一蹴してしまうのは危険です。燃え尽き症候群を放置すると、うつ病や不眠症など別の精神疾患につながる場合があります。
燃え尽き症候群になった部下への対応
燃え尽き症候群からの回復には、職場の理解と周囲のサポートが欠かせません。経験やスキルのある人は自らの消耗に気づいて仕事と距離を置くことができますが、若手や自覚がない人の場合は、他者から働きかけて回復を促す必要があります。
話をする時間を作る
回復への一歩は、本人が自らの状態を自覚することです。部下の普段と違う様子に気づいたら、まずは話を聞く環境を作ることが重要。直属の上司だけではなく、先輩社員や他部署のメンターなど、なるべく本人が話をしやすい人を相手に選びます。
日頃から頑張っていること、気になっていること、抱えている不満などを他者に話すことで、本人が心身の不調や変化を自覚し、単なる疲労だけではなく心理的要素が不調に関係していることに気づくことができます。
十分な休息をとらせる
回復には休息が不可欠です。職場に仕事から距離を置くことのできる環境を整えるとよいでしょう。業務量を調整したり、有給消化を促したりすることも効果的です。本人のこれまでの努力や成果、能力を称えつつ、今は休むタイミングであることを言葉にすることで、本人も休みを取りやすくなります。
心身の状態については、医療機関や産業医の判断を仰ぐことも重要です。燃え尽き症候群が重症化するリスクもあるため、マネジャーには自分だけで判断しないようにしなければなりません。
【まとめ】
- 心身の極度の疲労で意欲を失い、社会活動が停止してしまう状態のことを「燃え尽き症候群」という。
- 燃え尽き症候群の症状には、意欲やパフォーマンスの低下のほか、他者への無関心、思いやりのない行動など、人間関係に影響を及ぼすものもある。
- 燃え尽き症候群が重症化すると、うつ病など他の精神疾患に結びつくこともある。
- 回復には、仕事と適切な距離を置き、本人が心身の状態に気づけるような環境が重要である。
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!