職場のモヤモヤ解決図鑑【第33回】
年次有給休暇のルールが知りたい!「5日間の確実な取得」とは?
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
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森本 翔太(もりもと しょうた)
人事部に配属されたばかりの23才。部長と吉田さんに教わりながら、人事の基礎を勉強中。
新米人事の森本さんは、年末年始休暇になぜ有給休暇が使われるのだろうと疑問に思っているようです。有給休暇は原則として従業員の意思で取得するものですが、法改正により、2019年4月からは「年5日の有給休暇消化」が義務付けられました。また、吉田さんのいう「計画的付与」のように、会社が有給休暇を与える時季を定める場合もあります。基礎知識に触れつつ、最新ルールや罰則について見てみましょう。
そもそも有給休暇とは?取得や付与の基本
有給休暇とは、労働基準法によって定められた給与が減額されることなく休暇が取得できる制度のことをいいます。従業員の心身のリフレッシュを目的として、勤続年数に合わせて決まった日数を付与することが、会社に義務付けられています。
年次有給休暇の発生要件と付与日数
労働基準法では、有給休暇が初めて付与されるのは、従業員が入社して6ヵ月継続勤務した時点です。6ヵ月の間、出勤しなければならない日の8割以上勤務という条件を満たした場合に、10日の有給休暇が付与されます。以後、1年ごとに出勤率を判定し、付与していくことになります。付与日数は、下記のように勤続年数に合わせて増加します。
【原則となる付与日数】
継続勤務年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
引用:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』|厚生労働省
なお、付与日数や要件は守るべき最低基準であるため、法律より有利になるように、会社独自の有給休暇取得ルールを設定することは問題ありません。
年次有給休暇の対象者は?パートやアルバイトも対象に
有給休暇は勤続年数に合わせて付与され、正社員のみならず、パートやアルバイトなど全従業員が対象となります。ただし、正社員とは異なり、週の所定労働日数が5日に満たない場合は、以下のように「比例付与」という形を用います。
【比例付与の対象者】
- 週所定労働日数が4日以下または年間所定労働日数が216日以下
- かつ、週所定労働時間が30時間未満
例えば、週に1日のみ勤務するアルバイトの場合、6ヵ月継続勤務した時点で1日の有給休暇が付与されることになります。
【週の所定労働日数が1日(または年間所定労働日数48日~72日)の従業員の付与日数例】
継続勤務年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
参考:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』|厚生労働省
年次有給休暇の取得ルール。取得時季や余った有給の扱いは?
付与された有給休暇は2年間有効です。そのため、従業員は使わなかった有給日数を翌年に限って持ち越すことができます。
有給休暇をいつ取得するかは、原則として従業員の意思に委ねられています。ただし、宿泊施設の繁忙期に従業員の複数名が有給休暇を取得すると業務に支障が出るなどといった、「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ、会社側から従業員に取得時季の変更を指示することができます。これを「時季変更権」といいます。
- 【参考】
- 有給休暇|日本の人事部
年5日の有給休暇取得義務とは
これまで有給休暇の取得は従業員の意思に委ねられていましたが、2019年4月1日より、会社には有給休暇が10日以上付与される従業員に対して「年5日の有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。
年5日の有給取得が義務となる対象従業員は?
年5日の有給休暇取得義務の対象となるのは、年間10日以上有給休暇が付与される従業員です。管理監督者や有期雇用労働者など、雇用形態にかかわらず対象になります。
パートタイムやアルバイト社員などのように週の所定労働日数が5日に満たない従業員でも、年5日取得義務の対象になるケースがあります。週の所定労働日数が4日の場合は3年6ヵ月以上の勤務から、3日の場合は5年6ヵ月以上の勤務からが対象となります。
ただし、所定労働日数が4日の場合でも、週の所定労働日数が30時間以上(7.5時間×4日=30時間)となる従業員は、正社員のように原則の付与日数になるため、注意が必要です。
【週所定労働日数が4日(または年間所定労働日数169日~216日)・3日(または年間所定労働日数121日~168日)の付与日数】※太字が年5日の有給取得義務の対象
継続勤務年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
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所定労働日数週4日の付与日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
所定労働日数週3日の付与日数 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
引用:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』|厚生労働省
年5日の有給休暇の確実な取得のために、会社が時季を指定して従業員に取得させることも認められています。これを「年5日の時季指定義務」といいます。年5日の時季指定義務を行う場合、会社は必ず事前に従業員の意見を聞かなければいけません。また、すでに対象の従業員が5日間の有給休暇を取得している場合、会社は時季指定を行うことはできません。
例えば従業員がすでに有給休暇を3日取得していた場合は、会社が時季指定できるのは2日となります。従業員がすでに自分から取得していた有給休暇がある場合や、会社が有給休暇を与える時季を定める「計画的付与」により取得していた有給休暇がある場合、その日数を時季指定できる5日から控除して計算します。
有給休暇は、半日および時間単位での取得も認められています。しかし、時間単位で取得した分については、取得義務のある「年5日」には含まれないので注意が必要です。
違反した場合の罰則
対象となる従業員に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、事業主は30万円以下の罰金に課される恐れがあります。そのほか、使用者による時季指定を行う場合にそれを就業規則に規定していない場合(30万円以下の罰金)、従業員の希望する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)も、違反として罰則の対象となります。
有給取得のしやすい職場環境の整備に努めよう
労働基準法違反にならないためにも、有給休暇取得のルールを正しく理解し、取得義務の対象となる従業員については、きちんと取得できるように管理することが大切です。義務となる5日の有給休暇が消化されていないのであれば、有給休暇が取得しやすい職場環境の整備に努めなければなりません。
後編では、年5日の確実な有給取得のために、会社側でできる効果的な管理方法について解説します。
【まとめ】
- 有給休暇は勤続年数に応じて付与されるもので、パートやアルバイトも対象となる
- 有給休暇の付与日数が年10日以上の従業員には、年5日の有給休暇を取得させることが義務
- 年5日の有給休暇取得のため、従業員の意向を聞いたうえで会社が時季指定をして取得させることができる
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!