職場のモヤモヤ解決図鑑
【第25回】はじめての人事評価。部下を評価する前に知っておくべきポイント
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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山下 健悟(やました けんご)
関東圏のメーカー課長職45歳。20人ほど部下がいる。部下がもっと働きやすく、活躍できるチームを目指し、試行錯誤の日々。
人事評価を担当する宮本さんは、はじめて評価者になるプレッシャーを感じているようです。人事評価を行う際は、公平性と客観性、透明性、納得性が重要です。今回は、一般的に用いられる評価基準と、評価者が陥りやすいバイアスについて解説します。
そもそも人事評価とは
人事評価シートを書く前に、まず「なんのために評価を行うのか」を考えてみましょう。
人事評価とは、企業が社員の行動や成果を評価し、昇給・昇格に反映させるものです。個人の能力を人事評価で把握し、配属など適材適所での人材活用に役立てる機能も持っています。
また、社員の成長を促し、働く意欲を刺激する重要なツールでもあります。上司が部下を評価したら終了、ということではありません。設定されていた目標をどれだけ達成できたのか、どんな課題を抱えているのかをすり合わせ、日々の業務改善のために活用することが大切です。
人事評価の四つの基本ポイント
では、部下が評価の内容を消化し、意識や行動の変化につなげられるようにするには、どういった点に気をつければいいのでしょうか。
重要なのは、与えられた評価に、部下が腹落ちできるかどうかです。そのためには、以下の四つのポイントを踏まえ、評価を行う必要があります。
- 公平性:評価者の好き嫌いや価値観に依存せずに、ルールに従って正しく行う
- 客観性:主観や評価バイアスに影響されないよう、基準に沿って平等に行う
- 透明性:評価基準や根拠、ルールを明確に定め、オープンにする
- 納得性:評価に対して適切な説明・フィードバックを行い、被評価者の成長につなげる
個人的な人間関係や基準にない項目が人事評価に持ち込まれているようでは、部下も納得できないでしょう。公平性や客観性を意識し、正しい評価ができるように心がけることが重要です。
また、正しい評価であっても、きちんとした説明が伴わなければ部下が納得できないこともあるでしょう。どのような基準でその評価にいたったのかという根拠や具体的な改善点を含めて、説明できるようにしておかなければなりません。
人事評価の基本的な項目
人事評価は、「業績」や「能力」など仕事に関する基準で行います。職務との関連性が低い人間性を判断するものではありません。評価に用いられる基準には、次のようなものがあります。
業績評価
一定期間の成果・結果を評価するものです。営業ノルマの達成度合いなど、数値化して評価できます。ただし、勤務時間数や市況の状況などの外部要因にも影響されるため、他の基準と組み合わせて判断する必要があります。
能力評価
業務に求められるスキルや知識に対する評価です。リーダーであれば、「マネジメント力」「業務推進力」などの項目を設けているところが多いでしょう。業績評価と比べて可視化するのが難しい基準であるため、「目標達成に向けて成長したポイント」というように、業務を通じて身に着けたものに焦点を当てます。
行動評価
結果にいたるまでのプロセスを評価する項目です。「業務改善のためマニュアルを整備した」など、数値目標のない職種の評価にも適しています。
情意評価
情意とは、業務での態度や心構えを示すものです。「規律性」「積極性」「協調性」「責任制」など、組織で働く上で重要となる要素を評価します。組織が求める人材像を示しており、振る舞いの改善ポイントとして生かすことができます。
役割評価
個人の職位、役割の大きさに合わせて評価する基準です。同じ役職の人でも、期待される成果や難易度、権限で区分ができ、役割や責任への動機付けも行いやすくなります。
管理職が陥りやすい評価のバイアス
評価基準を理解していても、人が行う以上、主観が入り込む可能性は排除できません。そのため、評価のバイアス(歪み)を知り、自分の評価が基準に沿ったものであるかどうかをふり返ることが大切です。
ハロー効果 | 「わかりやすい功績」や「目立った特徴」から、その他の特徴までゆがんで評価してしまうこと。 |
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対比誤差 | 評価者自身のスキルや経験、過去を基準に評価を行ってしまうこと。 |
中心化傾向 | 評価結果が極端になることを恐れ、数値が中央値に集中してしまうこと。「部下に嫌われたくない」といった心理も影響します。 |
期末効果 | 直前に発生した事象に引っ張られて、評価に影響を及ぼすこと。 |
寛大化・厳格化効果 | 評価全体が甘くなることを「寛大化効果」、逆に厳しくなることを「厳格化効果」といいます。評価者の部下に対する印象や、評価者自身のスキル・性格によって発生します |
逆算化傾向 | 表彰や賞与、昇給といった他の評価から逆算して個人の評価を決定すること。社内序列がある場合に発生しやすいバイアスです。 |
- 【参考】
- 人事評価|日本の人事部
納得感のある人事評価のために
本来、人事評価の項目と日々の業務目標は密接に結びついているものです。日ごろから業務について部下の状況を把握しておくことが、人事評価に生かされます。納得感のある評価には、評価時のフィードバックはもちろんのこと、次の評価期間の目標を、部下とすり合わせて設定することが大切です。
成長をふり返り課題を認識することで、評価を行動や意識に反映できるようになるでしょう。
【まとめ】
- 人事評価は、主観や評価者の価値観に左右されず、客観性をもって行う
- 客観性や公平性のために、評価者が陥りやすいバイアスを知っておく
- 人事評価は成長点や課題をすり合わせ、日々の業務に生かすことができる
後編では、部下の成長につなげるための人事評価面談について解説します。
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!