失敗を成長のチャンスとする企業風土を醸成して
「全員活躍」を実現
いま注目の人事リーダーが取り組む、
カルビーの人事改革とは
「HRアワード2018」企業人事部門 個人の部 最優秀賞 受賞 / カルビー株式会社 執行役員 人事総務本部 本部長
武田 雅子さん
「採用」を通じて人事の仕事の面白さを知る
次に人事の仕事に就いたのですが、正直に言うと、最初は嫌でした。ただ、ショップマスターになったときもそうでしたが、「ベストではないかもしれないが、前任者よりは良い仕事をすることが私の務めだ」という意識は強く持っていました。まず担当したのは、採用と教育です。最初は採用の仕事にあまり気乗りがしなかったのですが、実際に担当してみると、非常に面白かった。採用には仕事の全てが入っているように感じたからです。
新入社員が10人入っても、それで会社が大きく変わることはありません。しかし、社員が採用活動に関わることによって、会社は変わっていきます。例えば10人の新入社員を採用するにあたり、社内の100人が関わったとして、それを何年も続けていけば、会社は大きく変わります。具体的に言うと、採用活動では社内のハイパフォーマーたちの協力が必要ですが、その人たちが採用活動を行う中で「共通言語」を持ち、会社のことをきちんと自分の言葉で話せるようになることで、社内の「景色」は大きく変わっていきます。これは、他の業務ではほとんど見られないことだと思います。
営業、人事と仕事を続けていく中で、武田さんの中に何か変化はありましたか。
営業の現場では月次で数字を追いかけていましたが、最終的には年間で全社の表彰式の壇上に上がれば良かった。毎月リカバリーが効くので、仕事のサイクルは営業の方が短いと言えます。一方、人事の仕事はどれも年に1回きり。リカバリーできるのは次年度以降になるので、基本的に失敗は許されません。そのため営業時代よりも、結果をきちんと振り返り、次の対策をきちんと立てるようになりました。
また、営業のときは自分のチームのことだけを考えていればいいので、影響する範囲は限定的でした。しかし人事の場合、影響が全社に及びます。仕事をしていく上で、そのことをとても意識していましたね。営業から人事へと移って、全体が見えるようになったと思います。
クレディセゾンの最後の2年間は営業の責任者を務めましたが、最初に営業への異動を言われたときは、「困ったな、どうにかして人事に残れないかな」と悩みました。まだ男性社会の雰囲気が残っている会社で、特に営業部門では女性が事業本部長になったことがなかったからです。私は営業のときに係長までしか経験がなかったのですが、そういう人がいきなり本部長になったことで、多くの人が驚いただろうと思います。
ただ、実際に営業本部長となり、支店長や部長たちと面談をしていく中で、人事的なアプローチの側面から私にも役に立てそうなことがあると思いました。例えば、いろいろなルールを変えました。皆がその言葉を聞いたら同じように動ける「共通言語」を作ったり、新しいことに対するチャレンジを意識的に行ってもらうよう仕向けたり。その結果、営業の幅は一気に広がっていきました。
結果的に、当初は3年間くらいかかると考えていたことを、ほぼ2年でやり遂げることができました。これも予想以上に頑張ってくれた、みんなの努力の賜物です。今思うとクレディセゾンでの最後に、ビジネスパーソンとして総括的な仕事ができたと思います。私自身にとっても、大きな自信となりました。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。