グローバルで女性が活躍するためには何が必要か
――レースクイーンから「世界最速の女性レーシング・ドライバー」になった井原慶子さんに聞く(前編)
~極限の世界を生き抜くモチベーションの源泉~
レーシング・ドライバー/FIA国際自動車連盟アジア代表委員/
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任准教授
井原 慶子さん
結果が出なければ生き残れない世界を知る
欧州に渡って、どのようなことを経験されましたか。
日本とはあまりにもレベルが違いました。事実、最初のレースは最下位でしたから。ただ、女性だから受け入れないということはありませんでした。常に、門戸は広く開かれているのです。ただ欧州では、男女問わず、結果が全て。結果を残さなければ、相手にされません。非常に厳しい世界だと感じました。
また環境面でも、日本とは大きく違っていました。ハード面はもちろんですが、ソフト面でそれを強く感じたのです。モータースポーツと言うと、日本では「マニアックな世界」という印象がありますが、イギリスをはじめ欧州では、そんなことはありません。子どもからお年寄りまで、非常に人気のあるスポーツなのです。現在は大きなカーメーカーはなくなりましたが、モータースポーツだけで、巨大なマーケットを形成しています。社会的な存在として、不可欠なのです。モータースポーツを楽しむ環境が非常に整っています。今後、日本も自動車産業が成熟していく中で、欧州のような環境になることを期待しています。
カーレーサーとして海外生活を送る中で、苦しかったことやつらかったことは何ですか。またそれを、どのように乗り越えましたか。
門戸は開いているものの、やはり人種差別の問題はありました。私はアジア人、そして女性でしたし、年齢もこの世界では高いほうでしたから、いろいろな壁に直面しました。最初の頃は、つらくて泣くこともよくありました。こういうことで差別されるのは残念だし、悔しかったからです。
でも、ここはプロの世界です。結果を残さなければ生き残れないことは、強く自覚していました。プロとしての意識の部分で自分を喚起させ、今の自分に何ができるのかを問い掛け、とことんやり尽くしました。その結果、苦しかったこと、つらかったことを乗り越えていけたのです。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。