人事担当者の現状と方向性
――調査結果から探る、これからの人事部と人事担当者の要件
企業を取り巻く経営環境が大きく変わる中、企業は待ったなしの変革を迫られており、それに伴い人事部門にもまた、変化が求められています。さらには人事担当者も、自らのキャリアを見直し、新しい時代、環境に適合した資質・能力を身に付けていくことが課題となっています。こうした状況下、人事担当者は時代にキャッチアップできているのか。また、その思考・行動様式は、さまざまな変化にどこまで対応できているのでしょうか――。
そこで今回、一般財団法人 労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)では、人事担当者個人を対象にアンケート調査を実施。現在の人事担当者の実像とこれからの自己変革に向けた方向性を探りました。本記事では、その中から「能力・スキルの自己分析」「人事管理を取り巻く話題に対する感度」などを中心に取り上げます。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
◎調査名:「人事担当者に聞く! 能力とキャリアに関するアンケート」
1. 調査対象:マイボイスコム(株)の調査会員モニターの中から抽出した、民間企業等に勤務する全国20~59歳の人事・総務部門担当者420人(役員および非正規社員を除く正社員ベース。また、公務員は除く)。なお、本アンケートでは役職別の傾向を把握することを重視し、(1)一般社員(2)主任・係長クラス(3)課長クラス(4)部長・次長クラスの各役職につき、回収数を均一化する割り付けを行った。
2. 調査期間:2013年4月25日~5月2日
3. 調査方法:WEBによるアンケート
4. 集計対象:「調査対象」の420人につき実施(1社1人)。役職別の内訳は、(1)一般社員104人(2)主任・係長クラス106人(3)課長クラス106人(4)部長・次長クラス104人。
人事部門の役割
自社の組織風土の傾向
まず、各社の組織風土の傾向について見てみましょう。次の9項目において、勤務先は「A・Bのどちらにより近いか」を回答いただいきました【図表1】。
(1)A「ボトムアップ型」か、B「トップダウン型」か
(2)A「効率性重視」か、B「高付加価値・品質重視」か
(3)A「長期的な結果重視」か、B「短期的な成果重視」か
(4)A「攻めの姿勢重視」か、B「リスク回避・守り重視」か
(5)A「プロセス重視」か、B「成果重視」か
(6)A「チームワーク重視」か、B「個人の行動重視」か
(7)A「変革・革新的」か、B「保守的・安定的」か
(8)A「スピード重視」か、B「堅実性・確実性重視」か
(9)A「ビジネスライク」か、B「家族主義的、アットホーム」か
“A寄り”(「Aに近い」「ややAに近い」)、“B寄り”(「Bに近い」「ややBに近い」)を問わず、「どちらともいえない」を除き割合が高い項目順に並べると、次のようになります(下線を付した項目は、「どちらともいえない」が4割台のもの)。
※[ ]内は“当てはまらない”(「どちらかというと当てはまらない」「まったく当てはまらない」計)割合
(1)B トップダウン型:52.9%(A ボトムアップ型:17.1%)
(5)B 成果重視:41.4%(A プロセス重視:16.9%)
(7)B 保守的・安定的:40.0%(A 変革・革新的:20.7%)
(4)B リスク回避・守り重視:36.9%(A 攻めの姿勢重視:24.5%)
(8)B 堅実性・確実性重視:36.7%(A スピード重視:26.9%)
(6)A チームワーク重視:36.2%(B 個人の行動重視:26.9%)
(3)B 短期的な結果重視:35.5%(A 長期的な結果重視:26.7%)
(9)B 家族主義的、アットホーム:34.3%(A ビジネスライク:22.6%)
(2)A 効率性重視:33.3%(B 高付加価値・品質重視:23.8%)
A・B間の差を見ると、特に(1)(35.8ポイント)、(5)(24.5ポイント)、(7)(19.3ポイント)で大きい。(5)、(7)は「どちらと もいえない」も4割前後を占めるものの、今回の集計(回答)企業の組織風土として、「ボトムアップよりトップダウン」「プロセスより成果重視」「変化より 保守・安定」を一つの傾向と捉えることができます。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。