副業・兼業の最新実態
35.4%が副業・兼業を容認。
自社を副業・兼業先とする社外人材の受け入れは15.7%が認める
労務行政研究所
政府の「働き方改革実行計画」において副業・兼業の普及促進を図る方針が示されてから、厚生労働省によるガイドラインの策定やモデル就業規則の改定などが行われ、2020年9月には副業・兼業の容認に際し懸念となっていた労働時間と健康管理のルールが明確に示された。また、複数就業者の労災保険給付や65歳以上の副業者の雇用保険等に関する法整備も進んでいる。
このような中、副業・兼業制度の導入に関心を高めている企業は少なくない。最近では、コロナ禍で企業業績の影響を受けた従業員の収入減への対応や、従業員のスキルアップを目的として副業を解禁した企業の例もあり、導入の狙いは企業によってさまざまだ。
そこで、当研究所では各社の「副業・兼業」への対応状況を明らかにするため、2021年4月20日~5月10日にかけて、認否状況や副業・兼業制度の詳細、自社が副業先となる人材の受け入れなどについて調査を実施した。
◎調査名:「副業・兼業への対応アンケート」
1. 調査対象: 『労政時報』定期購読者向けサイト「WEB労政時報」の登録者から抽出した本社に勤務する人事労務・総務担当者の計1万9849人
2. 調査期間: 2021年4月20日~5月10日
3. 調査方法:WEBによるアンケート
4. 集計対象:361社(1社1名)。業種別、規模別の内訳は、[参考表]のとおり。なお、本調査は社名を秘匿扱いで行ったため、事例等においては会社名を一切公表していない。所属業種については、調査時点におけるものとした。なお、項目により集計(回答)企業は異なる。
5. 利用上の注意:[図表]の割合は、小数第2位を四捨五入し小数第1位まで表示しているため、合計が100.0にならない場合がある。また、本文中で割合を引用する際には、実数に戻り再度割合を算出し直しているため、[図表]中の数値の足し上げと本文中の数値とは一致しないことがある。
副業・兼業制度の導入状況
働き方の多様化が進む中、企業において副業・兼業を容認する動きが広がっている。
副業・兼業にはさまざまな形態があり、企業によって認識も異なる。本調査では、副業・兼業について、会社の承認の下、(1)自社以外の事業主と雇用関係を結んで業務を行い、収入を得ること、あるいは(2)従業員自ら個人事業主として収入を得ること――と定義した。収入の発生しないボランティアや、不動産、株式投資等により不労所得を得ること、家業(個人商店、農業等)で収入を得る副業・兼業は原則として除いて調査している。
就業規則での副業・兼業の認否状況[図表1]
“認めている” が35.4%、“禁止している” が49.3%
就業規則における副業・兼業の定めに関して尋ねたところ、「就業規則で副業・兼業を認めている」が35.4%、「就業規則で副業・兼業を禁止している」が49.3%と、“禁止している” が “認めている” を上回る結果となった[図表1]。なお、“認めている” 企業の中には、「会社の許可なく副業・兼業することを禁止している」などと定め、許可制としている場合を含む点に留意いただきたい。また、「就業規則に認否の記載がない」は13.6%であった。
規模別に見ると、1000人以上では “認めている” が38.2%と4割近くに上る一方、300人未満では31.4%にとどまる。また、規模が小さくなるにつれて「就業規則に認否の記載がない」との回答割合が増加し、300人未満では22.3%と、2割を超えている。
副業・兼業の制度導入時期、認める理由[図表2~3]
「2016年度以前」が67.0%と、3分の2を占める。
認める理由では、「多様な従業員の活躍を推進するため」が50.0%で最多
副業・兼業を就業規則で認めた時期(制度導入時期)を尋ねたところ、「2016年度以前」が67.0%と、3分の2を占めている[図表2]。次いで「2019年度」が10.4%で多く、「2020年度」7.5%、「2021年度」6.6%と続く。2019年度以降に導入したのは全体の24.5%である。
なお、厚生労働省は2018年1月、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、併せてモデル就業規則の改定も行っている。従来のモデル就業規則では、労働者の遵守事項において「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を挙げていたが、現在は同部分が削除され、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」として、副業・兼業規定を新たに設けている。このような変更に伴い、自社の就業規則を見直した企業も一定数あると思われる。
次に、副業・兼業を認める理由を尋ねたところ(複数回答)、「多様な従業員の活躍を推進するため」が50.0%で最も多く、「従業員のスキル向上や能力開発のため」が41.5%、「優秀な人材の定着につなげるため」が38.7%と続く[図表3]。
一方で、2016年度以前から副業・兼業を容認していた企業などでは、“特に理由はない” “導入の経緯は不明” との回答もあり、そうした回答は「上記に当てはまるものはない」として集計した。
副業・兼業を行っている社員の有無[図表4~5]
制度がある場合、「現在、副業・兼業を行っている社員がいる」が70.8%
[図表1]で「就業規則で副業・兼業を認めている」と回答した企業では、「現在、副業・兼業を行っている社員がいる」が70.8%、「現在はいないが、過去に行っていた社員がいる」が10.4%で、8割超の企業では従業員の副業・兼業を認めた実績があるといえる[図表4]。一方で、「現在も過去も行っている社員はいない」は18.9%であり、就業規則上は副業・兼業を認めているものの、実際に認めた例がない企業も一定数ある。
規模別に見ると、規模が大きくなるほど「現在、副業・兼業を行っている社員がいる」の割合が高い。また、300人未満では「現在も過去も行っている社員はいない」が39.4%と、4割近くに上る。
次に、[図表1]で「就業規則に認否の記載がない」と回答した企業に対し、副業・兼業を行っている従業員の有無を尋ねたところ、「現在も過去も行っている社員はいない」が48.8%で半数弱を占めた[図表5]。一方で、「現在、副業・兼業を行っている社員がいる」は36.6%、「現在はいないが、過去に行っていた社員がいる」は9.8%で、明確に容認・禁止の定めはないものの、一定範囲で認めているケースもあることが分かる。
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