定着と労働条件の微妙な関係
アイデム人と仕事研究所 所長/社会保険労務士
岸川 宏(きしかわ ひろし)
属性別に見た「ポジティブ定着」の状況
企業側からすれば、働いている従業員はすべてAのポジティブ定着状態になっていて欲しいものかと思います。
アンケート回答者を主婦パート、学生アルバイト、一般(主婦・学生以外のパート・アルバイト)に分けて見ました(注:パートタイマー白書からの分析で、主婦パートのデータが圧倒的に多くなっています)。
主婦パート、学生アルバイトの結果は非常に良く似ていて、ポジティブ定着の割合が高く、ネガティブ定着(仕事へのマインドが低いが勤続意向はある)の割合が少なくなっています。
一方、一般(主婦・学生以外のパート・アルバイト)は、仕事へのマインドが低く、転職意向が高い人が多くなっていました。
これは、パート・アルバイトで働く目的や背景からうかがい知ることができるように思います。主婦パートや学生アルバイトは、一般に比べ、他に主たる場があり時間的な制約がある中、できる範囲で働いています。
一方、一般の方は、時間の制約は少ないが、気楽に働きたいといった理由で現在の働き方を希望する人もいれば、正社員で働けないから仕方なく現在の働き方を選択しているといった人もいます。その分、パート・アルバイトという働き方や労働条件に不満を持つケースも多くなりやすいといえます。
働く理由によって仕事へのモチベーションも大きく変わって来ることを考えれば、「働く目的、どんな風に働きたいのか?」を採用時に確認することが重要といえます。自社で用意できる労働条件と求職者の働く目的がかけ離れている場合は、追々不満につながっていくのではないでしょうか。
ポジティブ定着化を進めるには
それでは、最も対象者の多い主婦パートで、ポジティブ定着を実現していくためのヒントを探ってみましょう。
Aのポジティブ定着の状況が一番良い状態と捉えれば、現在の各労働条件においてAの満足度と、B、C、Dそれぞれの満足度との差、つまり、B,C,Dそれぞれの労働条件ついての不満を解消できれば、ポジティブ定着を実現できるということになるのではないでしょうか。
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