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勤務間インターバル 制度設計と就業規則
3 企業における導入事例
(1)各社での導入状況
勤務間インターバルの導入については、労働組合から時短要求の一環として求めるケースが多いと言えます。
そして、みずほ情報総研株式会社による「平成27年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業 報告書(平成28年3月)」(以下、「みずほ情報総研報告書」という)では、民間企業(団体を含む)10,154社を対象に行ったアンケートに回答した1,743社のうち、勤務間インターバルを導入していると回答した企業は39社あり、そのうちインターバル時間を「7時間超8時間以下」とする企業が28.2%で最も多く、次いで「12時間超」が15.4%、「11時間超12時間以下」が12.8%という結果でした ※7。
しかし、この勤務間インターバルに関しては現在法令上の規制が存在せず ※8、どのような制度設計とするのかは会社が自由に決めることができます。インターバル自体を強制的な就業制限とするのか努力目標に留めるか、就業規則などに定めをおくのか、対象とする従業員の範囲をどうするか、インターバルが翌日の始業時刻を超えた場合に翌日の就業時間や賃金をどのように設定するのかなど、様々な事項について検討する必要がありますが、会社の実情に応じて多様な制度設計があり得るところです。
以下では、広く新聞報道等がなされているKDDIにおける事例等について紹介します。
(2)KDDIの導入事例 ※9
KDDIでは、強制的な就業制限を伴うインターバルと、そこまではしないインターバルの2本立ての制度をとっています。
[1]就業規則の定め(8時間インターバル)
8時間のインターバルが経過するまでは就業を禁止し、前日の残業時間次第では、インターバルが翌日の始業時刻を超えることになります。その場合には、始業時刻を遅らせ、遅らせた時間に応じて終業時刻も同様に遅らせます。
[2]安全衛生管理規程の定め(11時間インターバル)
インターバルが11時間未満となった場合でも[1]のような強制的な就業制限まではしません。ただし、11時間未満となった日が1ヵ月あたり11日以上になった場合には、健康指導や産業医面談などの対応がとられます。
(3)その他の導入例
前記の通り、企業における勤務間インターバルについては、報道により知ることのできる導入企業および制度の概要の例を挙げると以下のようなものがあります ※10。
ユニ・チャーム | 8時間以上 |
---|---|
いなげや | 10~12時間(休息が確保できる勤務表しか作成できないようシステムを変更) |
三井住友信託銀行 | 9時間以上 |
JTBグループ | 9~11時間 |
メタウォーター | 11時間 |
NEC | 勤務が午後11時30分以降の場合、翌日の出勤を1~2時間遅らせられる。 |
ホンダ | 12時間以上 |
※7:みずほ情報総研報告書47頁
※8:ただし、労働者がタクシー、トラック、バスといった自動車の運転者の場合には、勤務終了後一定の休息期間を与えることが求められている(平成元年労働省告示第7号、改正平成11年労働省告示第29号、平成13年国土交通省告示第1365号)。
※9:2016年4月6日付け日経情報ストラテジー、情報労連ウェブサイト
※10:その他にも、三菱重工業、シャープ、西日本鉄道、立山科学グループ、サガミチェーン、AGSなどで勤務間インターバルの採用が報じられている。
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