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採用活動で自社をいかにアピールする?
効果的な「求人票・求人情報」の作成方法

社会保険労務士

岩田 京子

(2)求職者が求める一定水準以上の労働条件になっているか

労働条件には、賃金、労働時間、休日、休暇などがありますが、自社の業界水準を知って水準以上の労働条件を設定することが重要になります。

ア)賃金

地域を限定し、同業他社または同職種で求人の賃金を比較検討する必要があります。各地域のハローワークのサイトで職種ごとの上限・下限・平均額データが集計されている場合、インターネットの統計情報で検索可能です。またそれがない場合は、直接ハローワークに問い合わせれば、教えてもらえます。

地域の相場に比べ、低すぎる賃金では、求職者が素通りしてしまいます。また、不自然に高い賃金も、場合によっては不信感を抱かれる原因となることがあります。高い賃金を提示するならば、業績を数字で表すなど根拠を示すと信憑性が高まります。

賃金面で求職者に敬遠されるケースは以下のような場合です。

●基本給が低すぎる場合
基本給 100,000円
営業手当 80,000円
奨励手当 50,000円

このように総額では平均額以上でも、基本給自体が低すぎる場合は、基本給が賞与のベースになっている企業が多いため、賞与額に影響するのではないかという懸念から不信感を持たれます。

●賃金額の幅が広すぎる場合
賃金額 180,000円~ 450,000円

この場合、現実的に考えにくい賃金額の開きがあることに不信感を持たれます。企業によっては、上限額を将来的な賃金額として記載する場合がありますが、求人票における賃金額の上限は、あくまでも採用時点における上限ですので、あまりに差異が大きすぎないように、注意が必要です。

●試用期間と本採用後の賃金差が大きすぎる場合
(試用期間中)基本給150,000円
(本採用後)基本給230,000円

この場合、求職者は実際に本採用後に80,000円の昇給が約束されるのかということに不安を覚えます。試用期間中と本採用後の賃金は、現実的な差に留めておく必要があります。例えば、次の場合は、現実的な賃金差であり、納得されやすいでしょう。

(試用期間中)
基本給220,000円
計220,000円

(本採用後)
基本給220,000円
精勤手当10,000円
計230,000円

イ)休日数

photo

休日数は、最低でも完全週休2日制の年間休日日数である104日の休日がないと、応募者がぐんと減ってしまいます。業種によっては厳しい数字だと言えますが、最近では年間休日日数が120日以上の会社も増えています。休日数が原因で応募者を逃してしまわないように、押さえておきたいポイントです。

ウ)就業時間

就業時間については、1日8時間以内であれば法定労働時間の範囲内ですが、同じ8時間以内であっても、一般的な8時~18時の就業時間帯から少しでも外れると、ぐんと応募者が減ります。上記時間を外れた特殊な時間帯での就業がある場合には、深夜手当は別として、賃金の上乗せ等の配慮が必要になります。

●労働条件だけではダメ
求職者の応募を確保するためには、一定水準以上の労働条件を提示する必要がありますが、その水準を満たしさえすれば、自社に適合する人材が応募してくるというわけではありません。むしろ、労働条件だけに惹かれて応募してきた人材は、いとも簡単な理由で離職して、定着率を下げてしまう可能性があります。

(3)自社の強みや経営方針について、求職者の目に留まるアピールをしているか

(1)の具体的な要件記載および(2)の労働条件まで配慮できている求人票は目にしますが、(3)の自社の強み・経営方針について、求職者の目に留まるアピールをしている求人票は圧倒的に少ないのが現状です。ハローワークの求人票では、どこにアピールする内容を記載するかというルールはありませんから、B社のように、業務の内容に盛り込むこともできますし、求人条件にかかる特記事項欄や備考欄に書き添えることもできます。実際の求人票の特記事項欄や備考欄には、事務的な連絡事項のみが記載されている場合が多く、これらの欄を上手に活用することで、目に留まる求人票を作成できます。

求人情報には、どこかで求職者の目に留まり、心に残るような仕組みを作る必要があります。上記のB社のように、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を推進する会社であるという自社の方針が示されていれば、それが求職者の目に留まり、心に残ります。ただし、(3)のアピールが功を奏するのは、(1)の要件が具体的に記載され、(2)の労働条件が満たされている場合のみです。(1)、(2)の条件が整ったうえで、(3)の自社の強みや経営方針が明示されることによって、求職者の心に、「社員を大事にするきちんとした会社である」という印象が植え付けられるからです。

それでは、具体的に自社の強みについて、具体例を見てみます。自社の強み、自社が力を入れている分野、自慢できる自社の特長等があれば記載します。

<自社の強み>

  • 地域No.1の売上を誇る○○を有し、多くのお客様に愛される企業として、地域貢献にも力を入れています。
  • ○○(TV番組等)で取り上げられたお店です。昨年は、新商品も開発し、新分野での顧客開拓に力を入れています。
  • 創業60年の伝統を守りながら、新しいチャレンジを続ける会社です。丁寧な仕事がお客様からの高い評価につながっています。

<自慢できる自社の特長>

  • 顧客満足度が高く、同業他社に比べてリピーター率が高いのが当社の自慢です。
  • 地元からだけでなく、遠方からのご注文も増え、受注件数は前年度に比べ○%アップしています。
  • 社員がアイデアを出し合い、自発的に業務改善をしている会社です。業績も2年連続で○%以上アップしています。

<将来像>

  • 1年ごとに店舗数を○ずつ増やす見込みで、増員をしています。柔軟な発想力と行動力を活かせる職場です。
  • 海外展開(アジア圏)を視野に入れて、現在準備中です。現地での交渉も発生します。マーケティングの知識・英語で折衝できる能力を必要とします。

求職者が特に注視するのは、会社に将来性があるかどうかという点です。

そこで、現在どういった分野に力を注いでおり、その結果が売上や顧客数にどう反映されているのか、または将来的にどういう結果を出したいのか、そのために、今回の求人によって、どのように貢献してほしいのかというアピールは、よりメッセージ性の強いものになります。

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