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採用活動で自社をいかにアピールする?
効果的な「求人票・求人情報」の作成方法

社会保険労務士

岩田 京子

1. 人手不足の現状

現在、企業における人材不足は非常に深刻であり、今後の企業経営に大きな影響を与える可能性があります。「人材(人手)不足の現状等に関する調査」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)によると、人材(人手)不足を生じているとした企業は全体の52.1%、そのうち人材(人手)不足が経営に深刻あるいは一定の影響を及ぼしているとする割合は、66.2%、今後も人材(人手)不足の一層の深刻化や慢性的な継続を予想している割合は72.0%という結果が出ています。人手不足のために、事業活動を縮小せざるを得ないという負のスパイラルに陥らないために、中小企業も効率的な人材確保に対して積極的に情報を取り入れながら、取り組んでいく必要があります。

2. 採用活動における「求人情報」の役割と重要性

昨今巷では、様々な新しい求人媒体が出現し、その多様化が進んでいますが、求人情報そのものの役割や作成時の留意点については、どの求人媒体でも共通しています。そこで、本稿では今でも多数の企業が利用しているハローワークの求人票をベースに、効果的な求人情報を作成するための考え方とその具体的方法について、お伝えします。

photo

求人情報には、求職者に対して、企業に興味を持ち、応募につなげてもらうという大きな役割があります。せっかくお金を払って求人媒体に掲載したのに、ほとんど応募がない、という結果に失望するという経験をした企業も多いと思います。実際にはちょっとした知恵と工夫で求職者の目に留まる求人票を作成することが可能です。

そんな求人情報を作成するためには、押さえておくべき三つのポイントがあります。

最初に、「(1)事業内容・仕事の内容・人材要件を具体的に明記しているか」をチェックすることが大事です。求職者は少しでも自分に合う会社を選びたいと思いますし、そのためには、判断材料となる会社の業務内容、仕事の内容、人材要件など具体的な情報をできるだけ多く手に入れたいと思います。これらの情報を、求職者にとっていかにわかりやすく具体的に記載するか、が非常に重要になります。

次に「(2)求職者が求める一定水準以上の労働条件になっているか」を検討することが必要です。労働条件が求職者の水準と合致しなければ、そもそも応募はありません。労働条件は、業種、職種によって異なりますが、自社の業界水準を知り、水準以上の労働条件を提示するように配慮する必要があります。

最後に「(3)自社の強みや経営方針について、求職者の目に留まるアピールをしているか」について考慮する必要があります。実は、これが効果的に取り入れられている求人情報の数はまだ少なく、このポイントを強化できれば、自社の求人情報を差別化できるチャンスでもあります。

昨今の若年求職者の特徴として、その企業の姿勢や方針が自分の考え方と合致するか、企業理念に共感できるかが、企業を選ぶ大きな判断材料の一つとなります。仕事内容や労働条件だけでなく、その企業に入社して成長し、活躍する自分の姿がイメージできるかどうかが応募動機となるのです。つまり、いかに求職者を惹きつけるアピールができるか、が重要です。

求人情報は、上記の(1)(2)(3)を意識して記載をしていく必要があります。それぞれについて詳しく見ていきます。

(1)事業内容・仕事の内容・人材要件を具体的に明記しているか

ハローワークインターネットサービスの求人情報を検索してみると、記載されている情報量が少なく、印象に残りづらい求人票を多く見かけます。例えば下記【A社】のような例です。

事業内容と仕事の内容について、確かに、最低限の情報は掲載されてはいますが、言葉足らずな印象を受けます。掲載スペースが大きく空いているのに、詳細については面接時に説明するという点にも、不親切な印象を受けます。具体性のない情報は、イメージができないため印象に残りません。その結果、情報の少ないあいまいな求人情報は、素通りされてしまいます。

また、人材要件が具体的に明記されていないという点も能力のある人材の応募を遠ざける要因の一つです。どんな能力や経験を持っていて、どんな属性の人材が欲しいのかがきちんと記載されていないと、「結局誰でもいい」というメッセージを発信することになります。

この求人票では、未経験者の応募はあるものの、経験豊富な求職者にとっては、自分の経験が活かせる職場ではないと判断される可能性があります。

A社の求人票から推測される応募者

業務で使用するパソコンソフトの中身や業務知識、経験や資格は一切問われないため、専門的な技術がまったく不要であるという印象を与え、事務経験のない人材が応募してくる可能性があります。場合によってはパソコン操作もおぼつかない人材の応募も考えられます。

【A社】
事業内容 不動産鑑定 地価調査
職種 一般事務
仕事の内容 パソコンの入力、データ整理、雑務
(仕事の詳細については、面接時に事業所担当から説明があります。また、わからないこと、確認したいことは面接時もしくは電話にて必ずおたずねください)
学歴 不問
必要な経験等 不問
必要な免許・資格 不問
年齢 不問

次に、より具体的に記載された求人票(【B社】)を見てみます。

事業内容が非常に具体的に記載されており、何をしている会社であるかがはっきりとわかります。職種・仕事の内容もわかりやすく、どんな仕事をするのかのイメージが明確に頭に浮かびます。

人材要件は、学歴、経験、資格について、それぞれ定められており、要件に当てはまらない応募者が応募してくることによる選考時間のロスもありません。

【B社】
事業内容 LINUXの業務アプリケーションの開発、およびケータイ向けアプリ企画、開発 等
職種 経理事務
仕事の内容 モバイル・Webアプリの開発実績が豊富な当社の管理部門の人材を探しています。
経理:
入出金・振替伝票の起票・売掛金管理
各帳簿への記帳と集計、試算表の作成
決算事務、証票のファイリング 他
総務:
備品管理・資料作成・慶弔対応・電話応対 他
仕事は正確に効率よくこなして、個人・家庭との調和を積極的に図るのが当社のスタイルです。
学歴 短大卒以上
必要な経験等 ・基本的なパソコン操作「Word、Excel」
・経理実務経験年数 3年以上
必要な免許・資格 日商簿記2級以上
年齢 不問

このB社の求人票では、事業内容、仕事の内容、人材要件をより具体的に記述することによって、細かい条件に合致した応募者を惹きつけることができます。ポイントは、求職者がその仕事をイメージできるように、名称や数字などを具体的に記載することです。事務職の仕事を探している求職者にとって、より印象に残りやすいのは当然B社の求人票になります。

B社の求人票から推測される応募者

学歴は短大卒以上で、日商簿記2級以上、経理実務経験3年以上という資格と経験を持ち、Word、Excelが操作できる人、もしくはそれに近い資格、経験を持つ人の応募が見込まれます。また、仕事を正確に、効率良くこなせる、またはこなしたいと思う人が応募してくる可能性が高くなります。

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