企業におけるキャリア開発支援の実態
階層別キャリア研修の実施率は45.6%で、実施対象は「新任管理職」が78.3%でトップ(労務行政研究所編集部)
4.階層別キャリア研修の実施対象
実施対象は「新任管理職」が78.3%で最多、次いで「中堅社員」「新入社員」と続く。「課長クラス」「部長クラス」は半数を下回る
前掲[図表1]で階層別キャリア研修を「現在導入している」と回答した企業に対して、その実施内容を詳しく尋ねた(集計対象は無回答を除く60社)。
[1]各階層の実施状況[図表8]
「新入社員」「中堅社員」「新任管理職」「課長クラス」「部長クラス」の区分のうち、どの階層に対してキャリア研修を実施しているのか(複数回答)を聞いた。なお、この集計では、あくまで “キャリアを考える機会があるかどうか” を基準にし、例えば、その階層に求められる知識・スキルを身に付ける内容のみを実施しているケースは集計から除外している。
結果は、「新任管理職」が78.3%でトップとなり、以下、「中堅社員」68.3%、「新入社員」66.7%、「課長クラス」43.3%、「部長クラス」28.3%の順で、上位の管理職になるほど、その実施率が低くなる傾向にある。
なお、規模別に見ると、1000人以上の大手が他の規模と比べて、「新入社員」「中堅社員」「新任管理職」で高い割合を示しているが、他の規模も割合の差こそあれ傾向はあまり変わらない。
[2]階層別キャリア研修の設計
階層別キャリア研修の設計に関して、「参加方法」「日程」「プログラム」の項目を掘り下げて尋ねた。
(1)参加方法
「必須」か「希望制」のいずれにしているかを聞いたところ、「必須」と回答した割合が、すべての階層で80%以上と大多数を占めた(図表省略)。
(2)日程の状況[図表9]
日程に関しては、階層による違いはあるものの、「1日」「2日」「3日以上」のいずれかに回答した企業が多く、1日から3日以上の割合を足し上げると、すべての階層で80%以上となった。
(3)プログラム内容[図表10]
ここでは、各階層のキャリア研修で採用されているプログラム(複数回答)の上位3項目について見てみよう。
新入社員では「キャリアの定義やキャリア形成の意義に関する講義」「環境変化、役割変化等に応じた期待・求められるものへの理解」がともに71.1%でトップ、次いで「自身の振り返りなどを通じた自己理解のワーク」が63.2%で続く。
中堅社員では、「自身の振り返りなどを通じた自己理解のワーク」が82.9%で最も高く、以下、「環境変化、役割変化等に応じた期待・求められるものへの理解」75.6%、「キャリアビジョン・行動計画の策定」63.4%となっている。
新任管理職以上の管理職層では傾向が似ている。例えば、新任管理職の場合、「環境変化、役割変化等に応じた期待・求められるものへの理解」が80.9%で最も多く、次いで「自身の振り返りなどを通じた自己理解のワーク」61.7%、「キャリアビジョン・行動計画の策定」57.4%となっている。課長クラス、部長クラスも割合こそ異なるものの、上記3項目が上位を占めている。なお、部長クラスでは「専門家によるキャリアカウンセリングの実施」が17.6%あり、他の階層に比べて多くなっているのが特徴といえる。
参考までに、「プログラム内容」で、「キャリアビジョン・行動計画の策定」と回答した企業に対し、研修において対象者本人が策定した方針を、どこまで共有するのか、本人を除いた「経営層」「人事部」「現場管理職」の区分で尋ねた(複数回答)。
それによると、新入社員では「人事部」87.5%が最も高く、「現場管理職」75.0%がこれに続く。このように「人事部」と回答する割合が、中堅社員を除くすべての階層で約90%を占める。なお、中堅社員の場合は、「現場管理職」が92.3%で最も高くなっている[図表11]。
さらに、新任管理職以上では、「経営層」と共有する割合が高く、課長クラスで63.6%、部長クラスでは75.0%と「人事部」に次いで割合が高くなっている。
[3]階層別キャリア研修におけるフォローアップ[図表12]
研修後のフォローアップの有無について尋ねたところ、新入社員では「行っている」が89.7%と多数を占めた。これに対して、中堅社員では実施率が51.2%と下がり、さらに新任管理職以上では「行っていない」割合が70%前後となり、階層が上がるにつれて、フォローアップを行っていない傾向が見られた。
[4]階層別キャリア研修の効果[図表13]
階層別キャリア研修を実施した効果については、「とても効果があった」「やや効果があった」の合計が、いずれの階層でも過半数に達した。
階層別に特徴を示すと、新入社員は、「とても効果があった」が35.9%に上り、「やや効果があった」の41.0%と合わせると76.9%となる。一方、「あまり効果がなかった」はわずか2.6%にとどまった。ただし、どの階層でも「分からない」が一定割合(20〜30%程度)あり、研修結果の効果測定に関しては課題があることがうかがえる。
なお、効果があった場合の具体的な内容について、自由記入で回答があったものを[事例](省略)にまとめているので、参照いただきたい。
1. 調査名:「企業のキャリア開発支援に関するアンケート」
2. 調査対象:労務行政研究所ホームページ上で「WEB労政時報」に登録いただいている民間企業から抽出した人事労務担当者9024人
3. 調査期間:2016年3月30日〜5月9日
4. 調査方法:WEBによるアンケート
5. 集計対象:169社(1社1人)。産業別、規模別の内訳は[参考表]のとおり。
【参考表】業種別、規模別集計対象会社の内訳
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