企業におけるキャリア開発支援の実態
階層別キャリア研修の実施率は45.6%で、実施対象は「新任管理職」が78.3%でトップ(労務行政研究所編集部)
[4]キャリア開発を支援する専任の組織[図表4]
「キャリア開発部」「キャリアデザインサポート室」など、キャリア開発を担当する専任の部署(組織)があるかどうかについて聞いたところ、「特に組織はない」が62.1%で最も多かった。以下、「専任の組織ではなく、人事部内のメンバーで構成するプロジェクト等がある」30.2%、「専任の組織がある」7.7%の順となった。「専任の組織がある」割合を規模別に見ると、「1000人以上」は18.2%だが、「300〜999人」3.7%、「300人未満」1.7%と、大手とそれ以外の規模での差が大きくなっている。
組織がある場合、名称を尋ねたところ、「人材・組織開発部」「キャリア支援グループ」「採用・キャリアサポートグループ」などが挙げられた。
[5]「キャリア面談・相談」に関する諸制度・施策の導入状況[図表5]
(1)専門部署もしくは専門人材によるキャリア面談・相談
若者を中心とする厳しい雇用情勢への対応や、ライフステージに応じた職業キャリアの充実を図るため、青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)が2015年に成立、また2016年4月からは改正職業能力開発促進法が施行され、キャリアコンサルタントが国家資格となった。今後はこうした専門家の養成が進んでいくことが予想される。また、先に見た社内の専門部署(組織)やキャリアコンサルタントが主体となって、社員の「キャリア面談・相談」に対応するケースも出てくるだろう。
そこで、現時点での専門部署もしくは専門人材によるキャリア面談・相談の実施状況を尋ねたところ、「現在導入しておらず、当面、導入する予定もない」が72.1%と最も高く、未実施の企業の多いことが分かった。逆に導入企業は全体で11.5%、「1000人以上」の大手でも20.8%にとどまっている。
なお、こうした専門部署もしくは専門人材によるキャリア面談・相談を実施している場合の内容については、後段「5. キャリアコンサルタントの配置・委託状況」(省略)で紹介する。
(2)現場管理職によるキャリア面談・相談
一方、キャリアコンサルタントといった専門人材でなく、現場管理職によるキャリア面談・相談の実施については、「現在導入している」が44.3%と最も高くなっている。規模別に見ると、「1000人以上」の大手では55.6%と過半数に達しており、「300〜999人」でも43.4%に上っている。
(3)セルフ・キャリアドック(キャリア健診)の実施
「セルフ・キャリアドック」とは、労働者のキャリア形成における「気づき」を支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みで、行政が主導して導入に向けて取り組んでいく人材力強化施策の一つである。これについては、「現在導入しておらず、当面、導入する予定もない」が80.8%で最も高く、「現在導入している」は3.0%にすぎない。規模別に見ても同様の傾向である。「今後5年以内に導入する予定」は16.2%と高くはない。制度導入の自社での効果や行政の動きなどを踏まえて、現状では模様眺めといったところで、普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。
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