【実効性の乏しい対策では意味がない】
『SNS問題』に関する実務対策と規定・研修の見直し
弁護士
高仲幸雄(中山・男澤法律事務所)
5. 不適切投稿が発見された場合の対応
インターネットは全世界に繋がっており、瞬時に掲載情報がコピーされて伝播します。一度情報が拡散してしまえば、完全に消去することは極めて困難ですから、即時対応できる体制の整備も必要になります。関連規程を整備したうえで、万が一でも不適切投稿が発見された場合には速やかに対応できるようにマニュアルやチェックリストを作成しておいてください。
具体的な対応ポイントとしては、以下が挙げられます。
まず、投稿した社員本人に連絡し、他の媒体への投稿の有無や投稿の修正・削除の方法を確認します。また、事後にする懲戒処分の証拠にもなるので、ネット上で修正・削除がなされる前に不適切投稿の内容をプリントアウト等で保管しておきます。
不適切投稿の内容が顧客や取引先に関する情報であれば、即座に謝罪の準備をすべきですし、事案によってはプレスリリースや記者会見の手配も行う必要があります。
その後、投稿した社員に対しては、就業規則に則って懲戒処分を行い、問題行為の再発の可能性がある場合には、配置転換(業務変更)も検討します。
そして、他の従業員が同様の行為を行わないよう社内で注意喚起をし、必要があれば改めて勉強会や研修を実施してください。
◆従業員によるSNSへの不適切投稿をさせないために講ずべき対策チャート
(1)研修の実施・規則の整備
- 禁止理由の説明
- NG行為の具体的列挙
- 遵守義務、懲戒事由の規定
↓
(2)誓約書等の提出
- 企業、部署の非公開
- 顧客、業務情報の書込みの禁止
- 上記1・2を発見した場合、至急報告
↓
(3)不適切投稿の発見
- 投稿内容の保管
- 本人への確認および修正・削除指示
↓
(4)事後対応
- プレスリリース
- 懲戒処分の検討・実施
- 社内の注意喚起(再発防止)
たかなか・ゆきお ● 早稲田大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録(第一東京弁護士会)し、中山慈夫法律事務所(現 中山・男澤法律事務所)に入所。国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師。主な著書に、『労使紛争防止の視点からみた人事・労務文書作成ハンドブック』、 『有期労働契約 締結・更新・雇止めの実務と就業規則』(日本法令)。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。