【実効性の乏しい対策では意味がない】
『SNS問題』に関する実務対策と規定・研修の見直し
弁護士
高仲幸雄(中山・男澤法律事務所)
4. SNS規程の作成と留意点
(1)適用対象
SNSの利用に関しては、利用形態が多岐にわたるうえ、技術の進歩によって必要な規制を臨機応変に追加・修正していく必要がありますが、その都度、就業規則を変更するのでは手間がかかります。そこで、就業規則では概括規定や規制の根拠規定を設け、具体的内容は付属規程を設けたり、個別誓約書で対応したりするのが現実的な対応です。
また、SNSへの不適切投稿を避けるべき要請は、正社員であろうと非正規社員であろうと変わりません。そこで、会社と労働契約関係がある労働者全 員を対象とする規定にします。
(2)現状の制度・規則の分析~何を、どのように規制するか?~
すでに就業規則でSNS利用に関する規定を設けている場合もあるでしょう。その場合は、「詳細は○○規則で定める」との規定を追加し、独立した規則との「関連付け(紐付け)」を行います。
また、個別誓約書でSNS利用に関する条項を設けている場合には、それらの条項で汎用化できる部分、重要な部分を規則化するためにこれら条項の抽出作業を行います。
(3)法的ポイント~禁止・制限の根拠~
就業時間中の従業員は職務専念義務を負っていますし、会社施設内では会社の施設管理権が及びます。当然、会社の情報は、従業員個人が無断で利用できるものではありません。
そこで、企業としては、勤務時間中や会社施設内での書込み、プライベートでの会社や顧客に関する情報の書込みを禁止する規定を設け、不適切投稿の報告義務や削除義務も盛り込みます。
(4)評価を伴う規定にしない
「会社の利益になる情報・正しい情報」なら書き込んでもよいが、「不利益な情報・間違った情報」は書き込んではならないといった規定にすると、何が利益で何が不利益か、という問題でややこしくなるので、評価を伴うような規定にはすべきではありません。
(5)誓約書の例
次の誓約書作成例は、拙著『労使紛争防止の視点からみた人事・労務文書作成ハンドブック』(日本法令)の「No21.ブログ・ツイッターによる問題投稿」に掲載した「誓約書」に、前掲「復興庁職員の情報発信に関する規程」で参考となる規定を盛り込んだものです。
○○株式会社 御中
誓 約 書
私は、インターネット等における匿名での情報発信であっても他の情報と組み合わせることにより発信者を特定することができる場合もあること、個人の見解であることを明示している場合であっても業務上の情報発信と受け止められる場合もあることを踏まえ、このような情報発信を行うに際して、下記の通り誓約します。
記
-
1.私は、TwitterやFaceBook、ブログ等のソーシャルメディアその他の方法でインターネット等に以下の情報の書込みや画像等の掲載をいたしません。
- (1)会社の施設・書類・勤務中の自己および他の従業員
- (2)自己が関与している業務の内容
- (3)会社の制服・社員章等を着用した状態での画像
- (4)会社の取引先・顧客に関する情報
- (5)○○○○○
- 私は、会社が前項の(1)~(5)に該当すると判断した事項、その他、会社が不適切な記載と判断した事項については、記載先・記載方法を会社に報告するとともに、直ちに削除・修正の手続きを行います。
- 私は、勤務時間中は職務専念義務を負っていることを自覚し、インターネット上への個人的な書込みや閲覧は、短時間でも行いません。
- 私は、業務上知ることのできた営業情報、個人情報等について、情報発信を行わないよう注意します。また、他の情報と組み合わせることによりその内容を特定されるおそれのあるものについても、同様の注意をします。
- 私は、会社の名称や業務内容等をインターネット等に記載する場合には、あらかじめ上司に報告し、許可を得るようにします。
以上
平成○年○月○日
(署名)○○○○ 印
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