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【特別企画】
新たな学びの場つくりのユニット
『アトリエMALLプロジェクト』を密着取材 <第三回>

[ 取材・レポート ]
森麻子(アトリエMALL Bチーム)

リレーレポート第三回は、プロジェクトメンバーの一人として参加している森さんからのレポートです。森さんが所属するBチームの企画は、第一回審査会で理事の承認を得ることが出来ませんでした。この第二回審査会で承認を得ることができなければ、アトリエMALLとしてのイベント開催ができなくなるという後がない状況で審査会がスタートしました。

第一回審査会後から第二回審査会までの軌跡 ~チーム解散の危機を越えて~

ターゲットは誰なのか? ねらいは何なのか?

今回のラーニングイベントのテーマは、
「今後の人材育成のあり方を考えるうえでキーとなるイノベーティブなテーマ」を設定すること

MALL理事から与えられたこの命題をもとに、イベントを企画していくうえで私たちが妥協しなかったこと……それは「自ら手を上げてこのアトリエMALLという場に集まった私たちにしかできないことをする!」ということでした。 私たちは「異なるバックグラウンドや価値観を持っている人たちが融合することが、イノベーションにつながる」という考えのもと、7人の課題意識とアイデアを積み重ねて、イベントの『学習目標』と『活動目標』を練り上げていくことに時間をかけていきました。

その結果、「自分の組織、周囲をよりよくしたいと思っていても様々な制約にとらわれて一歩を踏み出せない人」「現状を何とか変えたいという課題意識はあるけれども周囲に仲間がいなくて行動に移すことをためらっている人」が行動を起こせるきっかけとなるイベントにしよう!と意見がまとまりました。「何かを変えたい人という思いを持っている人を支援する」ことを『学習目標』に、子供の頃のような「主体性、自己効力感や想像性を取り戻す遊び」を『活動目標』にしたイベント企画案をもって、第一回審査会に臨みました。

「私たちは、もう一度子供の頃の「遊び」に真剣に取り組んでみることにしました。今回は、遊びを創り出し、やってみることで、組織や集団を変えること、人材育成について考えてみます!!」

しかし、一回目の審査会当日に理事たちから鋭い問いの数々を投げかけられるまで、私たちは、イベントを企画・運営するうえで不可欠な「参加者目線からのイベントをデザインする」ということを見失っていたのです。

「誰の何を解決したいのかわからない。具体的な課題がないから、その場の成果として何を作り上げたいのかわからない」
「遊びは、Bチームのキーワードだけれども、方法であって目的ではないはず。「ねらい」と「活動」のつながりが見えない」
「学びのねらいが幅広いので、主催者側のメッセージが伝わらない」
「ファシリテーターからの押し付けのコメントに対して、違和感を抱いた」
「遊びをテーマにするならば、主催者の皆さんが参加者に遊びについての学びを提供できるくらいのレベルになってほしい。今のままでは、意味のある持ち帰りはない」

イベントの参加者像を始め、参加者の気持ちの動きや変化という視点から、参加者が今回のイベントを通じてどのような体験をするのかを、もっと精緻なレベルでデザインをしなければならないことを理事たちから教えられました。

創造的なアウトプットは一人では生み出せない

多様性と水平性のある組織には、合意形成の難しさや組織内の認識のズレといった課題があり、質の低いアイデアが出ることが多々あります。特に「和」を大事にする日本人の組織では、合意形成を得ようとする心理が働きやすく、多様なアイデアを吸収できない傾向があります。合意形成ができなかった結果、イベントのターゲットが「”何か”を変えたい人」と抽象的に、核となる学びのねらいが単なる「“遊び“」に、と深みがないものになってしまった第一回審査会での私たちの企画。これは、まさにその例です。そして、組織内の認識のズレが第一回審査会の結果を受けた私たちの反応で表面化しました。

「遊びという『活動目標』は直感でいける気がする!だから、遊びについて徹底的に勉強しよう!」
「私たちは別に「遊び」にこだわっていたわけではないと思う。「何かを変えたい人を支援する」ということにこだわって、深堀しませんか?」

チームメンバーそれぞれの考え方や方向性の違いにより「Bチーム解散!」という最悪の状況が幾度となく頭をよぎりました。しかし、この危機的状況を打破するきっかけとなったのは、お互いの考えをぶつけあってきた結果として生まれた「遊び」をもとにした「仕事を遊びに変えてみる」という創造的なアイデアでした。

私たちは、キックオフから時間をかけて「なぜこのアトリエMALLに応募したのか」「今回のイベントを通じて何を解決したいのか」について、話し合いを重ねていました。そのため、参加者の視点でイベントを精緻にデザインする時間を充分に持てないまま第一回審査会を迎えることになってしまい、前述のような惨烈な結果を招いてしまいました。

例えば、誰か一人が代表してイベント全体をデザインしていれば、他者の価値観を尊重することも合意形成を得る必要もなく、話し合いに多くの時間を割く必要はなかったでしょう。

でも、一人で考えていても創造的なアイデアは生まれないはず。私たちは、創造的なアイデアは、非効率と思われるような壮大な無駄のうえに築かれていることを学びました。 

私にとってのアトリエMALL

企業内人材育成業務を担当して9年目を迎えた私は、日々起こる社会・組織の変化に対する課題をどのように解決するか、改善するかについて試行錯誤を繰り返すものの手応えを得られず、今までの自分の経験や知識に限界を感じていました。

現状からブレイクスルーを果たすために、「思考や感性の多様性にあふれていて新しいイノベーションの芽となるアイデアが生まれる場所」、そして、「新しいアイデアを形にするための学びにあふれている場所」であるアトリエMALLで活動をしてみたい思ったことが、応募のきっかけでした。その期待通り、いえ、期待以上の経験と学びがこのアトリエMALLに存在していました。

チームメンバーとの健全な意見のぶつかり合いの協働作業は、エネルギーと創造性に満ちたもので、MALL理事からのフィードバックは新しい学びと気付きにあふれていて、新しい一歩を踏み出すための視点や経験をこのアトリエMALLという場からいただいています。

イベント当日にむけての新たな挑戦~ここから、そして、これから~

アイデアを広げる人、ディスカッションの舵を取る人、複数のアイデアを整理して収束する人、クリティカルに吟味する人、メンバーそれぞれの貢献を連鎖させて、仕事に対する新たな視点をみつけるための「仕事を遊びに変えてみる」をより具体的な形にして臨んだ第二回審査会。企画を発表した後の理事たちの反応は……

「爆発的に面白いね!」

私たちBチームの企画も無事に承認され、やっとスタート地点に立つことができました。これから先は、チームのメンバーそれぞれの力をより連鎖させて、「このイベントを通じて、参加者の皆さまに何を持ち帰ってもらうのか」「参加者の皆さまの創造性が発揮されるような場づくりをどうするのか」など、参加者の皆さまの視点で、もっとイベントを精緻にデザインしていくことが求められます。

縁あってこのアトリエMALLという場に集まった私たちの協働の結果、どのようなものができ上がるのかは私たち自身も予想できませんが、「今後の人材育成のあり方を考えるうえでキーとなるイノベーティブなテーマ」のイベントを作り上げるために、メンバー一同試行錯誤を繰り返し、尽力していく所存です。皆さまも楽しみにしていただければうれしく思います!

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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