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『ビジネスガイド』提携

“働き方改革”で注目を集める
勤務間インターバル 制度設計と就業規則

丸の内総合法律事務所 パートナー弁護士 大庭 浩一郎/弁護士 岩元 昭博

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INDEX
ページ1
1「勤務間インターバル」をめぐる最近の動向
2「勤務間インターバル」とはどのような制度か?
ページ2
3 企業における導入事例
ページ3
4 企業が導入するにあたっての法的問題点および実務上の留意点
ページ4
5 制度導入に際しての社内規定等の例
6 企業の実務担当者が今後留意すべき点
(この記事は、『ビジネスガイド 2017年4月号』に掲載されたものです。)

1「勤務間インターバル」をめぐる最近の動向

(1)長時間労働がもたらす弊害に対する有効な対応であること

現在、電通の過労自殺事件などの背景もあり、長時間労働の是正に向けての大きな流れがあります。長時間労働がもたらす弊害としては、[1]労働者の健康(脳・心臓疾患や精神疾患)への影響、[2]仕事と家庭生活の調和の欠如、などが挙げられています。

そして、前者の労働者の健康への影響という観点(会社は従業員の健康を損なわないように安全配慮義務を負担している)からすれば、休息をとり、必要な睡眠時間を確保できるように配慮することは極めて重要なことです。かかる「休息」、「必要な睡眠時間」の確保という側面からは、勤務間インターバルによって「労働」と「労働」との間に一定の間隔を設けるという手法は合理的な手法と言えます。

さらに言えば、かかる勤務間インターバルは、使用者にとってもメリットがあります。すなわち、不幸にして、労働者から長時間労働によって脳・心臓疾患や精神疾患が惹起されたと主張された場合であっても、適切な内容の勤務間インターバル制度を採用していたとすれば、適切な「休息」や「必要な睡眠時間」が確保されていたわけですから、労災認定において「業務起因性」がない(他に業務外の要因が存在するとの認定)、あるいは、使用者の安全配慮義務という観点からも義務違反がない、と判断される可能性があります。その意味でも、勤務間インターバルの採用は、使用者にとっての労働災害対策になるという側面も認められます。


(2)与党・政府の動き

与党・政府においても、勤務間インターバルの導入を推進する動きがあります。

自民党政務調査会の「働き方改革に関する特命委員会」による、「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」(平成28年12月15日)では、「先般、大企業に入社して1年目の女性社員が過労自殺するという大変痛ましい事態が発生したが、このようなことを二度と起こしてはならない。子育て、介護など多様なライフスタイルと仕事とを両立させるためには、長時間労働の慣行を断ち切ることが必要である。」として、「勤務間インターバルについては、当面は、これを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、労使の自主的な取組を推進することにより、将来的に規制導入を進めていくための環境を整えていく。」 2と述べています。

また、厚生労働省の検討会も、「1日単位の休息期間を確保するインターバル規制は、睡眠時間の確保や疲労蓄積を防ぐ観点から重要な考え方であり、企業活動や業務の繁閑と両立させるノウハウ・好事例の提供などの支援を通じて、企業自らがこれを導入することを促していくべきである。」3としています。

実際に、厚生労働省は、勤務終了から始業までの休息時間を9時間以上とする勤務間インターバルを新たに導入する中小企業を対象とした助成金制度を設け、勤務間インターバルの導入に要する経費を助成する制度を本年から開始しました4

以上からわかるように、現在の流れは勤務間インターバルの法制化というよりも、各企業による任意の取組みを促していくという方向性にあるようです。

1: 判例においても、労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである(最高裁第二小法廷平成12年3月24日判決)と解されており、脳・心臓疾患についての業務起因性の認定基準を定めた通達である「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」でも、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価きる」として、長時間労働を脳・心臓疾患発症の重要な要因の一つとして位置付けている。また、精神疾患についての業務起因性の認定基準を定めた通達である「心理的負荷による精神障害の認定基準について」においても、長時間労働に従事することが精神障害発病の原因となることが明記されている。
2: 「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」2頁
3: 「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会(論点の整理)」(平成29年2月1日報道発表資料)6頁(4.規制の在り方について (1)時間外労働の限度)
4: 以下の(1)から(3)のいずれかに該当する場合が助成金の支給対象とされている(厚生労働省「職場意識改善助成金交付要綱(勤務間インターバル導入コース)」)。
(1)新たに当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入すること
(2)すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下であるものについて、対象となる労働者の範囲を拡大し、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とすること
(3)すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、当該休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすること

2「勤務間インターバル」とはどのような制度か? 

勤務間インターバルとは、勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までの時間を一定以上確保する制度を言います5。この制度の下では、前日の勤務終了時刻から一定の時間を空けなければ翌日の勤務を開始することができないものとされますので、勤務禁止時間が翌日の始業時刻にかかる場合には、始業時刻を繰り下げるといった対応が必要になります(図表1)。

このような制度は、欧州連合(EU)で採用されており、EU加盟諸国では、1993年に制定され、2000年に改訂されたEU労働時間指令に基づき、24時間につき最低連続11時間の休息時間を付与することや、7日ごとに最低連続24時間の休息を付与することなどが義務付けられています。

●図表1 勤務間インターバルによる始業時刻の繰下げ
(出典:厚生労働省ウェブサイト6

●図表1 勤務間インターバルによる始業時刻の繰下げ
5: 厚生労働省「職場意識改善助成金交付要綱(勤務間インターバル導入コース)」では、「本助成金においては、勤務間インターバルとは、休息時間数を問わず、就業規則等において終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているものを指す(平成元年労働省告示第7号「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」など法令等で義務づけられている場合を含む。)。なお、就業規則等において、○時以降の残業を禁止、○時以前の始業を禁止とするなどの定めのみの場合には、勤務間インターバルを導入していないものとする。」とされている。
6: http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/interval.html


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