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有賀 誠のHRシャウト!人事部長は“Rock & Roll”
【第2回】わが社にとってのグローバル人事とは……?(その2)

元 株式会社ミスミグループ本社 統括執行役員 人材開発センター長 有賀 誠さん

有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll

人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。

みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠

前回は、米国企業が1970年代までは一社終身、年功的、職能重視であったことを述べました。しかし、それから50年、米国企業は大きく変わりました。その変化のステップを紹介するとともに、私たちへ示唆するものを考えていきましょう。

米国企業はどのように進化していったのか

第2次世界大戦後の米国企業は、International (A) というフェーズにあったと考えられます。米国で作った製品を米国からみた海外に輸出する、米国のビジネス・モデルを他国へトランスプラントする、という状態です。

そこから20~30年ほどを経て、彼らはMultinational (B) というフェーズに入りました。米国は相変わらず強いが欧州も力を付けてきた、日本も伸びてきた、そしてそれらが緩く結び付いている、という状態です。

そして21世紀に入り、彼らはGlobal (C) に進化しました。国という概念は希薄、機能性や効率性によってビジネス・モデルや組織を設計します。私が勤務したHPでは、基礎研究を米国テキサスの研究所で、ソフトウェアの開発をインド・バンガロールで、ハードウェアのアセンブリーを中国上海で、日本の顧客へのカスタマイゼーションを日本で、という仕事のやり方が当たり前でした。200ヵ国のオペレーションの中から、どれとどれをどのように組み合わせると最も速く安く高品質の成果が得られるかという判断から、体制が組まれます。私は物理的には東京で働いていましたが、上司はシンガポールにいるアイルランド人でしたし、私がプロジェクトをリードするとき、そのチーム・メンバーはイタリアとブラジルと中国にいるなどということもありました。

グローバル組織の発展ステップ

米国に本社がある多国籍企業のほとんどが、既にこのGlobal (C) フェーズにあると考えられます。GEも、IBMも、P&Gも然りです。一方、欧州本社の企業は、基本は同じだとしても、いま少しMultinational (B) に寄っているかもしれません。

自社がどこに軸足を置けばいいのかを真剣に考える

では、日本企業はどうでしょうか。おそらくは99%の日本企業が、掛け声として「グローバル」という言葉を掲げていたとしても、まだInternational (A) なのではないでしょうか。極端に表現すると、日本で日本人が日本語で経営会議を行い、それ以外の国を植民地管理しているのではないでしょうか。

Global (C)の実現には、三つの前提があったように思います。(1)グローバル共通の人事制度基盤、(2)グローバル共通言語としての英語、(3)時差や物理的な距離を補完するITインフラの三つです。前回述べたように、日本にいる私たちは世界の中でも特殊な労働環境を持つ日本にいます。さらには、この小さな島国の中でしか通用しない日本語で仕事をしていることから、(1)(2)に関しては大きなハンディキャップを背負っていると言えるでしょう。

私は、三つのフェーズを較べて、Global (C) が圧倒的に優れていると申し上げるつもりはありません。ただ、このようなA~Cの座標軸を把握理解した上で、それぞれの企業が自分たちの勝ちパターンに持ち込む確率を高めるには、どこに軸足を置くのが良策なのかを真剣に考える必要があると思うのです。

例えば、ある日本の自動車メーカーは、いたずらにGlobal (C) を追いかけるのではなく、デザイン/ブランディング/マーケティングについてはMultinational (B) で欧州や米国にその市場を任せ、ものづくりに関しては日本で完璧に磨き込み、それをトランスプラントするというInternational (A) アプローチをとっています。つまり、International (A) とMultinational (B) のハイブリッドです。それが自分たちの勝ちパターンだと自覚しているからでしょう。

「グローバル」という掛け声に踊らされるのではなく、また米国に本社がある代表的な多国籍企業のまねをするのでもなく、自分たちの勝ちパターンを見出し、そのための軸足をどこに定めるのかを真剣に考える……。この連載の中で、そのヒントをご提供していきたいと思います。

有賀誠の“Rock & Roll”な一言
モノマネじゃダメ! アンタの軸足は? そして勝ちパターンとは? グローバルは一日にして成らず!

有賀 誠
有賀 誠
株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

(ありが・まこと)1981年、日本鋼管(現JFE)入社。製鉄所生産管理、米国事業、本社経営企画管理などに携わる。1997年、日本ゼネラル・モーターズに人事部マネージャーとして入社。部品部門であったデルファイの日本法人を立ち上げ、その後、日本デルファイ取締役副社長兼デルファイ/アジア・パシフィック人事本部長。2003年、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車にて常務執行役員人事本部長。グローバル人事制度の構築および次世代リーダー育成プログラムを手がける。2005年、ユニクロ執行役員(生産およびデザイン担当)を経て、2006年、エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長に就任。その後、人事分野の業務に戻ることを決意し、2009年より日本IBM人事部門理事、2010年より日本ヒューレット・パッカード取締役執行役員人事統括本部長、2016年よりミスミグループ本社統括執行役員人材開発センター長。会社の急成長の裏で遅れていた組織作り、特に社員の健康管理・勤怠管理体制を構築。2018年度には国内800人、グローバル3000人規模の採用を実現した。2019年、ライブハウスを経営する株式会社Doppoの会長に就任。2020年4月から現職。1981年、北海道大学法学部卒。1993年、ミシガン大学経営大学院(MBA)卒。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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この記事ジャンル 戦略人事

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東京都 情報サービス・インターネット関連 2020/03/17

 

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