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【ヨミ】リバース イノベーション リバース・イノベーション

「リバース・イノベーション」とは、途上国で最初に創出・採用されたイノベーションであり、それを先進国・富裕国へと移転・展開するという、従来のパターンとは逆の流れでイノベーションのグローバル化を図る戦略コンセプトのことです。米ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのビジャイ・ゴビンダラジャン教授とクリス・トリンブル教授が、2009年頃から米ゼネラル・エレクトリック(GE)などの成功事例を「リバース・イノベーション」と呼んで理論化し、大きな注目を集めています。「リバース・イノベーション」の実現には、グローバル人事の確立や大胆な権限委譲などの組織改革が必須であり、日本企業においては旧来の伝統的な人事慣行からの脱却が求められます。
(2016/10/28掲載)

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リバース・イノベーションのケーススタディ

新興国発のイノベーションを先進国へ“逆流”
企業の“重心”を移す組織改革が成功の鍵に

日本を始め、すでに経済的な発展・成熟を遂げた先進国の多くは、未来の原動力となる新たな成長エンジンを、国内よりも国外、とりわけ新興国市場に見出そうとしています。先進国の企業がアジアの新興国などを生産拠点として活用し、できた製品を同じ先進国に流通させる形のグローバル競争は2000年代までに勝負が決した感があり、以降の焦点は“工場ではなく市場としての新興国”でどう成功するかに移ってきました。

その新しい競争に勝つための戦略として、これまで多くの企業は先進国共通のニーズにもとづいて製品開発を行い、そのグローバル製品を新興国のローカル市場向けにわずかに手直しして普及させる取り組み、いわゆる「グローカリゼーション」を進めてきました。しかし、先述のゴビンダラジャン教授は「アメリカの裕福な大衆市場向けに設計した製品を、ただ現地仕様に調整して、低所得者が大勢いるインド中間層を獲得しようとするのは土台無理な話だ。インドに製品をただ輸出するのではなく、インド向けのイノベーションが必要なのである」と指摘します。グローカリゼーションが行き詰まり、代わって「リバース・イノベーション」が勢いを増してきている理由が、そこにあります。

「リバース・イノベーション」とは、最初に途上国で創出・採用されたイノベーションを先進国へ“逆流”させるという、従来とは真逆の戦略コンセプト。実際、欧米企業には、インドや中国で現地のニーズに適応するために白紙の状態からイノベーションを起こし、開発した製品をその後、グローバルにも展開した成功事例が相次いでいます。たとえば、GEのヘルスケア部門では2000年代初頭、小型・廉価の携帯型心電計をインドの農村部向けに、超低価格の超音波診断装置を中国の農村部向けに開発しました。それらは米国をはじめ、先進諸国でも新たな市場を切り開き、いまでは100ヵ国以上で販売されるグローバル製品へと成長しています。

企業が新興国市場向けのイノベーションを起こし、それをグローバルに広げていくためには、研究開発やマーケティングなど中核機能を担うチームを現地に置き、権限を与えることで組織の“重心”を移すとともに、有能な現地人材が存分に活躍できるよう、マネジメント層の多国籍化やユニバーサルな人事制度の整備にも取り組まなくてはなりません。また、重要性が増しているとはいえ、現段階では、新興国は本国の人材にとって必ずしも人気の高い赴任先ではないため、派遣する社員のモチベーションに配慮した適切な処遇も求められるでしょう。いずれにせよ、日本企業においては、欧米の多国籍企業より遅れているグローバル人事の取り組みがカギになりそうです。

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