精神障碍者手帳保持者への内定取消
先日内定を出した方から、精神障碍者手帳を保持している事を入社直前に伝えられました。内定を取り消すことは可能なのでしょうか。
精神障碍者手帳2級とのことでしたので勤務に問題はないのか、会社で配慮が必要なことがあるのか本人に確認したのですが、本人は問題ないとのことでした。
障害者手帳を持っているか、面接時にこちらから聞くことはありません。今回も本人から特に申告はなく、採用の仲介業者も聞かされていなかったとのことでした。
しかし2級となると勤務時間の制限や、集中して何かを行うことが難しい等の症状があることが多いとのことでしたので、こちらとしては一言もなかったことへ不信感もあり、本当に就労が可能なのか懸念しています。
この場合、内定を取り消すことへの理由にはなるのでしょうか。
有識者様のご意見をいただけますと幸いです。
投稿日:2025/09/04 11:54 ID:QA-0157780
- あらいじんじさん
- 東京都/情報処理・ソフトウェア(企業規模 51~100人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
対応
難しい問題ですが、まず第一に人材会社経由であれば、人材会社に相談して下さい。
その上で、障害2級であるだけであれば、就業に問題はないという認識で採用することを本人と話し合うことでしょう。
合理的配慮などの対応の可否についても伝え、他の社員と同等の扱いとなることを理解して、業務を行えると本人が申告するなら、業務上問題が起きない限りは対応も特にはないことになります。
障害者であっても、普通に社会生活や仕事ができている人は珍しくありません。単に手帳を持っているだけであれば、ただちに問題にはなりませんが、病気を原因とする勤怠悪化などは、本人と話し合って受け入れられないこともしっかり合意しておくべきと思います。
投稿日:2025/09/04 14:11 ID:QA-0157785
相談者より
増沢様
お忙し中ご回答いただき、誠にありがとうございます。
候補者との向き合い方や、合意形成の重要性について、まだまだ私の方で対応するべき点がありそうです。
対応の参考にさせていただきます。
ありがとうございます。
投稿日:2025/09/04 17:42 ID:QA-0157801大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. 内定取消の法的リスク
(1)内定者の法的地位
内定は「始期付解約権留保付労働契約」として、原則として労働契約が成立している状態と扱われます。
よって、内定取消は「解雇」と同視され、客観的合理性と社会的相当性(労働契約法16条)がなければ無効となります。
(2)障害の告知義務
応募者に「障害者手帳の有無を申告する義務」は法律上ありません。
「言わなかったこと」自体を理由に内定取消することは、合理性を欠き障害者差別禁止法(障害者雇用促進法34条)違反とされる可能性があります。
(3)差別的取扱いの禁止
障害者であることを理由に内定を取り消すことは直接差別にあたり違法です。
裁判例でも「障害を理由とする不採用・解雇」は違法・無効と判断されやすい傾向があります。
2. 実務上の懸念(「2級だから働けないのでは?」)
精神障害者手帳の等級は、日常生活での困難さの度合いを示すもので、就労能力そのものを一律に制限するものではありません。
例えば2級でも、服薬や通院により安定してフルタイム勤務している方も多数います。
本人が「勤務に支障はない」と述べている以上、企業側が一方的に「無理だろう」と推測して取消すことは合理性を欠きます。
3. 企業として取り得る対応
配慮事項のヒアリング
勤務時間、通院の必要性、休憩の取り方、体調不良時の対応などを丁寧に確認。
本人が「特にない」と言っている場合でも「将来的に必要になったら申し出てください」と伝えておく。
採用仲介業者との連携
今回のケースを共有し、今後は「配慮が必要か否か」について事前確認できるよう依頼。
就労後のフォロー体制
試用期間を設けて、勤務実績を見ながら就労可能性を判断する。
必要に応じて産業医・主治医の意見をもらう。
4. 内定取消が認められるケース(参考)
過去の裁判例では、以下の場合にのみ取消が有効とされたことがあります。
採用に不可欠な資格を偽っていた
病状が入社前から業務に全く耐えられないことが医学的に明白だった
犯罪歴など、業務遂行上重大な支障となる事実を隠していた
→ 単に「手帳保持を後から伝えた」というだけでは、この要件に該当しません。
5. 結論とアドバイス
「手帳を持っていることを言わなかった」だけでは内定取消の合理的理由にはならない。
内定取消をすれば「障害者差別」として労働局や弁護士に申し立てられるリスクが極めて高い。
実務上は、まず本人と配慮事項を再確認し、試用期間で実際の勤務状況を見て判断することが安全です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/09/04 14:17 ID:QA-0157786
相談者より
井上様
ご回答いただきありがとうございます。
リスクや会社の対応等、ご丁寧にまとめていただき大変参考になりました。
やはりそのまま入社まで進めて、入社後のケアを会社からも行うというところに注力した方が良いですね。
内定取消のリスクについてもまだまだ知識不足なところもあり、井上様のご回答によりまた新たに勉強になりました。
ご本人とのコミュニケーションの参考にもさせていただきます。
お忙しいところご対応いただき、ありがとうございました。
投稿日:2025/09/04 17:45 ID:QA-0157802大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
採用時に障害の有無を確認していない以上、入社時に障害をもっていることを
理由に内定取り消しすることは、不当解雇問題・障害者への差別問題に発展する
リスクがあります。
まずは業務遂行上、業務に支障が生じるかどうかを、試用期間中で判断いただき、
支障があれば指導を行ってください。指導履歴は全て記録化してください。
その上で改善を見込むことができなければ、試用期間の終了にあわせて、
本採用の見送りとするのが労務リスク観点では適切な対応かと思案します。
なお、本件については、仲介業者がいるとのことですので、事情は再確認が
必要です。仲介業者への申告漏れ等があれば、また話は変わってきますし、
仲介料を調整いただくことも視野に入って参ります。
投稿日:2025/09/04 14:37 ID:QA-0157791
相談者より
米倉様
ご回答いただきありがとうございます。
やはり内定取消はリスクがあるのですね。
米倉様からもご提案いただいたように、試用期間内でのパフォーマンスを通常の入社者と同じように見て、再度そのタイミングでも判断をしようと思います。
また仲介料につきましてもご教授いただきありがとうございます。
仲介業者も初耳だったということから、こちらへの申告漏れはないということにはなりますが、早期離脱のリスクもありますので一度仲介業者とも調整したいと思います。
お忙しいところご回答いただき、ありがとうございました。
投稿日:2025/09/04 18:12 ID:QA-0157805大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
2級ということですと、かなり重い方ですし、フルタイム勤務は、
困難な状況のはずです。
採用の仲介業者がいるとのことですので、
そこに確認したうえで、仲介業者経由でお断りするのがよろしいでしょう。
ただし、面接では全くわからなかったのでしょうか?
投稿日:2025/09/04 17:35 ID:QA-0157800
相談者より
小高様
ご回答いただきありがとうございます。
わたし自身身内に全く同じ等級のものがいますので、正直フルタイムは難しいのではと感じています。
本人が就業に全く問題がない、会社の配慮は全く必要ない、というところと、やはり皆様のご意見等にもありましたように内定取消はリスクがあるというところから、今回は入社していただくしかないと思っております。
面接でもとても明るくはきはき話されていた方でしたので、後出しで手帳をいただいた際も正直信じられませんでした。
試用期間内で様子を見て、再度判断したいと思っております。
小高様もお忙しいところご回答いただき、ありがとうございました。
投稿日:2025/09/04 18:17 ID:QA-0157806大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
精神障碍者手帳を保持していることを入社直前に伝えられたからといって、それが客観的にみて合理的な取消理由となり得るのか、社会通念に照らしてその取消に相当性があるのかが問われます。
採用内定を決めてから就労を開始するまでに、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実」が発覚した場合には解約ができる、という「解約権留保付労働契約」が成立したということになります。
さらに、裁判例によれば、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています。(大日本印刷事件 昭54.7.20 最高裁第二小法廷判決)
つまり、「採用内定当時知っていれば採用しなかった」といえるような、重大な事由がなければならないということになり、具体的には、①内定者が卒業できなくなった場合。② 健康状態が悪化し入社日以降の就労が困難な場合。③経歴詐称が発覚した場合。④違法行為により逮捕・起訴された場合。等が考えられ、精神障碍者手帳を保持していることは重大な事由たり得ず、内定取り消しは困難でしょう。
投稿日:2025/09/05 13:12 ID:QA-0157818
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、精神障害2級とは、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害とされています。
従いまして、業務内容によっては就労困難のケースも考えられますし、逆に就労によって新たな障害が発生する可能性も無いとは言い切れません。
対応としましては、専門医や産業医の意見も聴かれた上で、御社業務への従事が可能であるか判断をされ、客観的に見て困難という結論になるようでしたら、内定取消も可能といえるでしょう。
投稿日:2025/09/05 19:15 ID:QA-0157858
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
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