通勤時間はみなし労働の範囲に含まれますか
社員に転勤を命じますが、転勤先までは長時間(片道2時間)の通勤となるため、始業開始・若しくは終業を30分間短くすることで配慮した対応にて行なおうと考えます。
そこでその30分の考え方について、①通勤時間している30分間は仕事の内として、労働時間に含めるのか、または②労働時間から除いて扱うのか。つまり通勤時間をみなし労働時間とすることに問題はがないかという事です。その違いは、時給計算をする上で、分母が変わり残業等に影響が及ぶため、整理しておく必要があると思い相談させていただきました。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/16 09:23 ID:QA-0152418
- tosHiさん
- 東京都/印刷(企業規模 501~1000人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
原則として、通勤時間は労働時間に含まれません。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
原則として、通勤時間は労働時間に含まれません。(労働時間から除外)
そのため、通勤に充てられる30分を みなし労働時間として計上することは通常できません。
2. 法的な定義と原則
【労働時間の定義(労働基準法第32条)】
労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。
【通勤時間とは】
通勤時間は、通常は使用者の指揮命令下にないとされるため、労働時間に該当しません。
よって、単に通勤の負担軽減のために就業時間を短くする場合でも、その分を労働時間として取り扱うことはできません。
3. みなし労働時間との違いについて
「みなし労働時間制(事業場外労働のみなし)」とは、
出張・外回りなどで、労働時間の正確な把握が困難な場合に限り、一定時間を労働したとみなす制度です。
これは、実際の労働時間の管理ができない状況が前提です。
本件は「通勤時間」であり、「労働時間の把握が困難な業務」ではないため、みなし労働時間制の適用対象外です。
4. 配慮措置としての就業時間短縮は可能か?
はい、就業規則や個別同意のもと、会社の裁量で始業・終業時刻を短縮すること(所定労働時間の短縮)は可能です。ただし、それは「労働時間が短縮される」というだけで、通勤を労働時間とするわけではありません。
つまり、30分通勤配慮で就業時間を短縮 → 所定労働時間が短くなる。ただしその30分は労働時間ではない。時給換算や残業基準も新しい所定労働時間をベースに計算。
5. 実務上の対応例
以下のように対応するのが一般的です。
項目→対応
就業時間→始業 9:00 → 9:30、終業 18:00 → 17:30 に変更など
所定労働時間→8時間 → 7時間に変更(または7.5時間)
給与→月給制の場合、所定労働時間の変更に応じて給与調整を検討(必要に応じて)
時給・残業単価→分母=1日の所定労働時間(例:7.0時間など)で再計算
適用方法→就業規則または個別労働契約書の変更/特例通知により対応
6. 補足:通勤負担への配慮と法的リスク
通勤時間が長くなること自体が「不利益変更」と捉えられる可能性はあるため、以下のような配慮が求められます:
(1)本人同意を得ること
(2)転勤に関する就業規則の整備
(3)手当や時差出勤制度、フレックス等の併用も検討
7.結論と整理
論点→回答
通勤時間を労働時間として扱えるか?→不可(通常は労働時間に含まれない)
30分短縮した分をみなし労働時間とできるか?→不可(みなし労働時間の制度要件を満たさない)
時給計算における影響→新たに定めた所定労働時間を分母とする必要あり
対応策就業規則の補足や個別労働契約書で明記・整備
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/16 10:34 ID:QA-0152423
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答させていただきます。
結論、通勤時間をみなし労働時間とすることに問題はありません。
通常、通勤時間は労働を行っているとは言えず、賃金の支払対象では
ありませんが、法令以上の社員に優遇的な対応を行うことは、
あくまで会社の判断であり、法令に抵触するものではありません。
補足として、今回は転勤命令にともない長時間通勤を強いることによる
特別対応かと思案いたしますが、他の社員から不公平感・不満が生じないよう、
客観的な公平・公正の観点から、会社規程で転勤時の特別対応における措置を
規定いただくことをお勧めいたします。
投稿日:2025/05/16 10:56 ID:QA-0152426
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
通勤時間は労働時間ではありませんので
時短にするのであれば
2の労働時間を短くして下さい。
投稿日:2025/05/16 12:31 ID:QA-0152429
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
原則論からいえば、通勤に要する時間は労働時間とはなりません。
「労働時間」と評価されるか否かは、「労働させた」といえるか否か、すなわち労働者が使用者の指揮命令下にあったか否かという客観的な事実関係によって判断されます。
そのため、通勤に要する時間は、使用者の指揮命令下にあったとはいえず、労働時間として取り扱う必要はないということになります。
ただし、御社の判断で通勤に要する時間をみなし労働時間として処理することは、社員にとっては有利な処置であり、法違反となるわけでもございませんので、問題はありません。
転勤に絡めて、始業若しくは終業時刻を30分間短縮するのであれば、その旨、終業規則への記載は必要ですから、これを機会に終業規則を整備しておかれたらよろしいでしょう。
投稿日:2025/05/16 13:28 ID:QA-0152436
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、ご存知の通り通勤時間に関しましては原則として労働時間には含まれません。
但し、この度のような特殊な事案について配慮としまして労働時間扱いされ賃金支払の対象とされる扱いに関しましては、労働者に取りまして有利な措置となりますので可能とされます。
しかしながら、長い通勤時間への配慮措置であれば、時短分の賃金に相当する調整手当を支給され残業計算上でも算入される方が単純で分かり易いですし、敢えて通勤時間そのものを労働時間扱いされる必要性はないものといえます。
投稿日:2025/05/16 19:20 ID:QA-0152457
プロフェッショナルからの回答
ご相談内容について回答いたします
通勤時間は原則として労働時間には該当しません。
従いまして、通勤時間を「みなし労働時間」や「労働時間」として取り扱うことは通常できません。
労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指し、通勤時間は通常労働者の自由な時間と解釈されます。そのため、始業開始や終業時間を短縮する場合でも、その通勤時間を労働時間とみなすことは、労働法上、認められないことになります。
よって、ご提案の長時間通勤となる社員への配慮としての「始業開始・若しくは終業を30分間短くする」という措置は、この30分を、労働時間そのものを短縮するという認識で取り扱うことになります。
その場合の「時給計算する上で、分母が変わり残業等に影響が及ぶ」とのご懸念点に関しましては、通勤時間を労働時間に含めないとしますと、所定労働時間が短縮されるため、時給計算の分母となる労働時間も短くなります。
そのため、残業単価が上がるなどの賃金管理に大きく影響を及ぼすことになります。
こうした事態を回避するための対応策としては、時差出勤制度の導入があります。
時差出勤制度を導入することで、社員の混雑時間帯での長時間通勤よる負担を軽減することを図りながら、労働時間は現在のまま維持することができ、賃金管理への影響も最小限にとどめることができると考えます。
投稿日:2025/05/16 22:27 ID:QA-0152461
プロフェッショナルからの回答
不利益の軽減・回避
以下、回答させていただきます。
(1)配置転換(転勤)においては、それに伴う不利益を軽減・回避するために配慮
することが、配置転換命令権を適切に行使していくうえで重要であると認識され
ます。
(2)一方、労働時間は使用者の指揮監督のもとにある時間のことであり、基本的に
通勤時間はこれには該当いたしません。
(3)本件については、不利益の軽減・回避のために、「通勤時間」が長くなるので
労働時間そのもの(30分)を短くする一方で、賃金決定・計算においては、そ
の分、通勤時間の一部(30分)を労働時間「相当」とし、賃金額は変更しない
という整理が考えられます。
(4)なお、上記の「相当」は、あくまで社内ルールであり、労働基準法上(第38
条の2)の「みなし」とは異なるものです。
投稿日:2025/05/17 07:04 ID:QA-0152462
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