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『ビジネスガイド』提携

問題社員
“人手不足時代”の現実的な対応策

杜若経営法律事務所 パートナー弁護士 岸田 鑑彦

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3 問題社員との向き合い方

従業員の意識がここまで変わってきている以上、会社の意識も変えざるを得ません。問題社員に対して、注意指導、懲戒処分をすればよい、という単純な問題ではなくなってきているのです。

(1)注意・指導の目的をはっきりさせる

問題社員に関して、「勤務態度が悪くて困っている」、「協調性がなく周りが迷惑しているので何とかしたい」と相談される会社の方はとても多いです。しかし重要なのは、その困っている状況を最終的にどうしたいのかという目的の部分です。目的に応じて、問題社員との向き合い方を変えなければなりません。

●注意指導の目的の明確化

[1] できれば辞めてもらいたい
[2] 賞与や昇給で差をつけたい
[3] 真面目に長く働いてもらいたい
[4] 他の従業員が耐えられないので、職種や配置を変えたい
[5] 取引先からクレームが出ているので、担当を変えたい

(2)注意指導する側である会社の状況を確認する

会社が問題社員に対して、注意指導や何らかのアクションを起こした際、「こちらも会社に対して要求します」という形での反論が当然に予想されるところです。

本来、問題社員に対して注意指導することと、従業員が会社に何らかの要求をすることは別問題であるはずですが、事実上、同じタイミングで紛争になります。そのため、会社がアクションを起こした場合に、従業員からどのような要求や指摘が予想されるかをあらかじめ確認しておく必要があります。

●確認すべき会社の状況

[1] 未払い残業代請求を起こされる可能性はないか
[2] 他に労基法違反を指摘される可能性はないか
[3] その業界、業種において守るべき法律、通達に違反していないか
[4] 不明瞭な経理など、会計上指摘されるものはないか
[5] 取引先との関係性は強固か

(3)従業員の個性や状況を確認する

従業員にもそれぞれ個性があります。会社が注意指導をした際に、どのような反応を示すかをあらかじめ想定しておくことで、注意指導の仕方も変わってきます。

●従業員の個性を確認する

[1] 社内での人望が厚い
[2] 「俺はみんなのため」が口癖だが実際には孤立している
[3] 周りの目をあまり気にしない
[4] 労基法の条文を指摘するなど法律に詳しい
[5] 「知り合いに法律に詳しい者がいる」と言う
[6] 過去に、前職等で労使紛争を経験したことがある

また、個性だけでなく、どのようなスキルを持った従業員なのかをあらかじめ確認しておくことも非常に重要です。例えば、問題社員に対して退職勧奨を行う際に、どういうタイミングで、どのような条件であれば退職勧奨に応じてくれそうかという判断材料になります。

●従業員のスキルや状況を確認する

[1] 年齢、入社年数
[2] これまでの職歴
[3] スキルの有無
[4] 家族構成(独身・共働き、子供の有無・年齢等)
[5] 住居(持ち家、賃貸、住宅ローンの有無等)

(4)懲戒処分をすべき場面か否かを見極める

上記の目的、会社・従業員の状況を総合的に判断したうえで、会社としてどのような注意指導、懲戒処分を行うかを決めていきます。

ビジネスガイド:問題社員 “人手不足時代”の現実的な対応策

例えば、最終的に辞めてもらいたいと考えているのであれば、その都度、きちんと注意指導を行い、必要な場面においては懲戒処分をしなければなりません。しかし、懲戒処分を課すことによって、従業員が労基署や弁護士に相談し、かえって会社側の不備を指摘される可能性があるのであれば、このタイミングではあまり踏み込んだ懲戒処分はできないかもしれません。まずは、会社の不備を是正することが先となります。

賞与や昇給で差をつけたいという場合、他の従業員が注意指導や懲戒処分を受けていない中で、問題社員1人だけが懲戒処分を受けているのであれば、その点においては他の従業員より査定においてマイナスになるわけで、そのような記録が残っていれば納得のいく説明ができます。このような場合には、あえて重い懲戒処分をしなくても、懲戒処分や注意指導を受けたという事実があるだけでも十分なのです。むしろあまり重い懲戒処分を課すことで、問題社員が反発して外部に相談に行くとも限りません。そういった反発を招かない程度の懲戒処分にとどめて奮起を促すという方法もあるわけです。

真面目に長く働いてもらいたいのであれば、いきなり重い懲戒処分を課すよりも、面談や口頭注意からじっくりと時間をかけて注意指導をしていくなど、本人のやる気をそがない方法がよいでしょう。

取引先からのクレームや、他の従業員との協調性に問題があるのであれば、懲戒処分を課すことよりも、まずは配置転換を検討するべきでしょう。

このように、注意指導の目的をどこに設定するのか、その目的を達成するため今の会社の状況からできることは何か、注意指導に対して従業員はどのような反応をしそうか、ということまでを予測しながら、事案ごとに注意指導の方法を決める必要があります。

(5)些末な懲戒処分の落とし穴

問題社員が、何度言っても業務指示に従わない場合や、服務規律に違反するような場合は懲戒事由に該当するでしょうし、懲戒処分を検討してよいと考えます。懲戒処分を幾度も受けていれば、人事考課においてマイナスになることは事実です。

しかし、それで懲戒解雇ができるかというと、それは別問題です。懲戒を何回重ねたら懲戒解雇できるというルールはありませんので、懲戒処分を繰り返すことの目的は、従業員に勤務態度を改善するための機会を何度も与え、奮起を促すためということになります。そうすると、単に懲戒処分を課しているというだけでなく、懲戒処分を課す際に、現場できちんと問題社員と改善に向けた話合いをしているのかという点が重要です。懲戒のための懲戒処分ではなく、問題社員を立て直すための懲戒処分でなければ意味がないのです。したがって、単に懲戒処分通知書だけを渡して、読んでおいてください、では足りません。

しかし、これには上司の覚悟が必要です。人手不足の中で、経営者が上司に対して、問題社員と話合いの機会を持つよう言うと、上司のほうが「そんな面倒なことをさせられるくらいなら会社を辞めます」と言ってくる可能性もあるのです。

会社としては、まずはそのような覚悟を持って対応してくれる上司であるか否かの見極めから行わなければなりません。そうでなければ、そもそも問題社員と向き合うことすら難しくなってしまうのです。

(6)いきなり会社の対応を変化させない

例えば、問題社員への対応について、弁護士に相談をしたところ、「これはひどい問題社員だから懲戒処分をするように」とアドバイスを受けたとします。

このような場合、懲戒処分をすべきか否かの問題と、それをどのタイミングで行うかの問題はきちんと分けて検討すべきです。いきなり、何の節目もなく、懲戒処分されると従業員は警戒します。自分を辞めさせようとしているのではないか、何か意図があるのではないかと誤解してしまうからです。

したがって、まずは、これまでの会社の風土や文化を生かしつつ、徐々に問題社員との向き合い方を変えていくことが望ましいと考えます。

例えば、年度替わり、決算時期、定例の会議等の節目を利用して、「従業員の働き方の改善について触れ、今後の重点課題とする」というようなメッセージを発信したうえで注意指導を行えば、問題社員もなぜ自分が注意指導されているかを理解しやすくなるので、変な誤解も生まれにくくなると言えます。


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