イケア・ジャパン株式会社:
イケアはなぜ「同一労働・同一賃金」「全員正社員」にできたのか
“本気で人を大事にする会社”に学ぶ人事制度改革(前編)
イケア・ジャパン株式会社 人事本部長
泉川玲香さん
ビジョン、ビジネス理念、人事理念――支え合う三つの理念
私自身、人事としてのキャリアが長く、弊社の前にもいろいろな会社で働いてきたので、スローガンでは「人が財産」みたいな立派なことをうたっているけれど、「現実はどうなの?」と思うことがありました。そんな私がイケアに入って一番驚かされたのが、“言行一致”の企業であるということです。入社前に話で聞いていた「うちはとにかく人を大事にする会社です」ということと、実際に行われていることとが、「100%」というとウソになってしまうのですが(笑)、99%は一致していたんですよ。国内で約2800人、全世界では約15万人が働く、これだけの規模の組織で、言っていることとやっていることが一致するというのは、会社が「人を大事にする」施策をどれだけ本気で徹底してきたか、その表れでしょう。では、イケアにとって「人を大事にする」とはどういうことか。そこをご理解いただくために、まず弊社の基本理念をご覧ください。
図の三角形の頂点に記されている「より快適な毎日を、より多くの方々に」。これが最も基本になるコンセプトですか。
はい。イケアの理想、ビジョンです。そして、このビジョンを実現するために必要なのが、ビジネス理念と人事理念。イケアという企業は、これら三つの理念が支え合って成り立っているのだという関係性を、トライアングルの形で表しています。その人事理念では、「真摯で前向きな方にプロフェッショナルとして、人間として成長する機会を与えたい。そして社員全員が協力してお客様はもちろん自分たちのためにもより快適な毎日を創り出していきたい」と述べています。つまり、お客様により快適な毎日をお届けできるように、働き手もまた、自分たち自身のために、より快適な毎日を求めていってほしい。そのためにプロフェッショナルとしても、個人としても、成長できる機会はどんどん提供しますよ、というのが会社の基本的な方針なのです。
「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンの文言にある“より多くの方々”とは、顧客だけを意味するのではなく、働き手もそこに含まれるわけですね。
その通りです。相手がお客様であれ、自社の働き手であれ、「人を大事にする」イケアのカルチャーに変わりはありません。だから、ビジネスで何か新しいアクションを起こすときも、人事で制度改革を行うときも、常にこの理念のトライアングルに立ち返り、ここを出発点にして進めていきます。ビジョン・ビジネス理念・人事理念――これを具現化していくためには何が足りないのか、どこをどうすればいいのかという発想から、今回の新制度も最終的には決まっていきました。