学校法人立教学院:
立教学院が取り組む、学校職員の能力開発を促す
「リーダーシップ研修」とは(後編)
人事部人事課
原 正福さん
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「質問会議」が有効な理由とは
ワークショップが終わった後、参加者はどのような感想を述べていましたか。
実際にどのような仕事ぶりになったかは、まだ十分に把握できていませんが、アンケートの内容を見ると、「リーダーシップは上から一方的に行うものではないこと、権限のないリーダーシップの意味することがよく理解できました」「傾聴を重視することで、相手の問題の本質を見極めることができることが分かりました」「質問をしながら、人を巻き込んでいくこと、動かしていくことの重要性がよく分かりました」「業務の多くは、上位者との折衝です。質問会議で学んだことを、実際の仕事でも活かしたいと思います」といったコメントがありました。まさに気づきという点では、大きな成果が出たように思います。
重要なのは、ワークショップを経験することで、自ら気づくということ。これが次の行動を起こすための、最初のステップだからです。その後、ネットで日向野先生へのQ&Aなどによる振り返り(リフレクション)の機会を設けましたが、この点はまだ改善の余地があります。次回以降は、振り返りの機会を含めたワークショップを継続的に実施していきたいと考えています。
その意味でも今回、前例となる実績を作ったことが大きいですね。
この取り組みを踏まえて、2014年5月に資格等級別研修の一つである「3級職(入職10~14年目の中堅層)研修」で、「質問会議」の手法を用いた「リーダーシップ研修」を実施しました。この研修は、以前から3級職の集大成という位置づけで行っているもので、「魅力ある立教を創る」という大テーマの下、自分で課題を決めて1万字のレポートを書いてプレゼンテーションを行います。
この研修では、大テーマの下でどのようなテーマを設定しても構いません。直接、自分の仕事に関係がなくてもいい。魅力ある立教を創るための課題を見つけて、その課題を解決するための提案をレポートとしてまとめる、という趣旨です。課題を明確化することが大変重要なため、研修プログラムの中に「質問会議」を入れました。「質問会議」を行うことで、自分が課題だと感じたことをより掘り下げていくことが目的です。また、一括りに職員と言っても、その中には十分に多様性があることを意識するきっかけにもしたいと考えていました。ここでも日向野先生を講師に迎え、リーダーシップに関する講義を行った上で、研修を実施しました。
これまでは元々ある研修に「質問会議」を加えていったわけですが、それ以外に新しく「リーダーシップ研修」は行っていません。現在は、今後「リーダーシップ研修」をどのように導入していけばいいのか、具体的なプログラムを考えているところです。
アクションラーニングとしての「質問会議」を行ってみて、上司の反応はいかがでしたか。
上司は「まだ、はっきりとした感触はつかめない」と言っています。この手法が万能なのかどうか、ベストな策なのかどうか、明確に判断していません。ただ、今後続けていくことにはゴーサインを出してもらっています。職員の能力開発が重要な課題であることを強く認識しているからです。特に、権限がなくてもリーダーシップを発揮できる点がポイントだと言っています。職員の能力開発のあり方に、すごくマッチしていると考えているからでしょう。だからこそ、リーダーシップを研修の一つの柱にしようとしているのです。
今後、研修の手法として、他に何か考えていることはありますか。
手法としては、ある程度一貫性があるほうがいいと思っています。「質問会議」の手法はどこでも使えるものであり、多様性があると思います。多様な人と「質問会議」を行うことで、多様な意見や考えを知ることができる。お互いにいろいろな意見や考えを出し合い、策を考え、問題を解決していく。このようなことが日常的にできれば、リーダーシップの発揮だけでなく、いろいろな問題を解決できるようになります。また、こういうプロセス自体が、職員がとるべき仕事のスタイル、仕事の進め方ではないかとも思っています。
学校経営においていろいろな課題が出てきた時に、皆で知恵を出し合い、課題を解決していく。そして、学校をより良くしていく。学校の主役は、児童・生徒・学生で、彼らを指導・教育するのは教員や教師の役目ですが、学校をより良くするための土台は職員が作っていくものだと考えています。学校の職員と言うと、民間企業と比べてややネガティブなイメージを持つ方がいらっしゃるかもしれません。しかし、実際にはそうでなく、とても魅力的な仕事であることを、広く伝えていきたいと思っています。
今後の課題として、どのようなことを認識されていますか。
魅力的な職員を育成していくために、能力開発を継続的に行えるかどうかが、当面の課題です。かつて広報で「変わらない理念が立教を変えていく」という言葉を使っていたことがありました。伝統は大切な財産ですし、古くからあるものが全て悪いなんていうことは決してありません。しかし、この言葉にあるように、理念を実現していくためには、古いシステムや制度・仕組み・意識を、打破していくことも時には避けて通れません。ただし、これらは組織内にビルトインされていますから、それなりの痛みを伴うとは思っています。
決して多くはないスタッフでさまざまな領域の仕事をしていますので、個人で完結すべき仕事も多くあります。しかし、組織では一人でできることに限りがあります。そのためにも、チームというものを意識して動くことや体験・経験することを、意図的に研修に取り込んでいきたいと考えています。
研修で学んだこと、経験したことを、仕事にフィードバックする。当たり前のことではありますが、このプロセスは、アクションラーニングにも通じる部分があります。そういった仕掛けを、研修の中にいろいろと取り込んでいきたい。研修を通じて自ら考え、行動していく職員、チームとして協働していける職員を増やしていきたいと考えています。
その意味でも、立教学院は人材育成という点で、「建学の精神」が脈々と受け継がれていることが、とても大きいように感じました。
それが立教の特徴だと思います。また、学校には常に児童・生徒・学生が目の前にいることも大きいですね。特に卒業式や入学式で、晴れやかな児童・生徒・学生の姿を見ると、いつも心を新たにまた頑張ろうと、スタート地点に立ち、働く目的や学校という組織の使命を再確認することができます。これは学校職員だからこそ感じることができる喜びややりがいだと思っています。
学校には企業にも通じる部分があると同時に、学校ならではの役割があることが、よく分かりました。そのためにも、職員の能力開発が重要なわけですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
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