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仕事と家庭生活の両立を支援するために法律で義務化された「育児休業」(1992年4月)と「介護休業」(1999年4月)。前者は、男女労働者が1歳に 満たない子を養育するため、雇用を継続したまま一定期間休業することができる制度です。一方、後者は、要介護状態(2週間以上継続して常時介護を必要とす る状態)にある家族を介護するために一定期間休業することができる制度です。いずれも、制度を利用する社員は会社を長く休むことになりますが、気になるの は休んでいる間の待遇です。給料はもらえるのかどうか。ボーナスはどうか……ここでは、 労務行政研究所が行った調査の結果をもとに、2つの制度をめぐる最新事情を探ってみます。(注参照)

育児休業すると給料はほとんどもらえない

育児・介護休業法では、育児休業の期間を「子供が1歳になるまで」としていますが、休業期間中の賃金・賞与の取り扱いは労使の自由な取り決めにゆだねられ ています(ちなみに、休業期間中に賃金がまったく支給されない場合も含め、80%未満に減額されている場合は、雇用保険から育児休業基本給付金として、休 業をする前の賃金月額の最大30%が支給されます。また、休業期間中は社会保険料が免除されます)。

では、表(1)をごらんください。

 

このような状況にあって、育児休業期間中の賃金については「無給」が全体の95.8%と、ほとんどです。「有給」はわずか2社(0.8%)でした。

一方で、賞与については、「日割控除し、全欠の場合はまったく支給しない」が72.6%で主流となっています。次いで「日割控除するが、全欠でも最低保障・見舞金などを支給」が22.8%です。会社の規模が大きいほど最低保障・見舞金などを支給するところが多く、3000人以上では48.4%と半数近くに上ります。なお、「控除せず、全額支給」という会社は1社もありませんでした。

育児休業すると退職金が減ってしまう!?

もう一度、表(1)をごらんください。

労基法39条では、年次有給休暇付与の条件である出勤率の算定において、法に基づく育児休業期間・介護休業期間は、出勤したものとして取り扱うことにしています。では、法律でとくに定めのない退職金算定における「勤続年数への算入」についてはどうでしょうか。

育児休業期間は退職金の算定基礎となる勤続年数に「算入しない」が57.9%と、6割近くを占めています。「算入する」は26.6%で、4社に1社の割合です。「その他」が10.8%ありますが、これは「復職後、一定期間勤務すれば算入」「2分の1を算入」などのケースです。

休業中のお金に関することは労使の話し合いにゆだねられていると書きましたが、アンケート結果を見る限り、労働者にとってはシビアな現実があるようです。

4社に3社が「短時間勤務制度」を導入

次に、表(2)をごらんください。

2002年4月施行の改正育児・介護休業法では、育児のための勤務時間の短縮などの義務対象年齢が、それまでの「1歳に達するまで」から「3歳に達するまで」に引き上げられました。同措置の内容は(1)短時間勤務制度(2)フレックスタイム制度(3)始終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(4)所定外労働の免除(5)託児施設の設置運営など――このうち、いずれかを行わなければならない、というものです。

では、(1)~(5)のうち(複数回答)、会社はどれを実施しているのか。実施割合の高い順に挙げると「短時間勤務制度」(75.2%)、「所定外労働の免除」(62.4%)、「始終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」(44.2%)、「フレックスタイム制度」(39.5%)となっています。「事業内託児施設」はわずか1社の実施にとどまりました(「対象者が発生したら検討する」などとして何も実施していない企業も数社ありました)。

会社の規模別に見てみると、おおむね規模が大きいほど実施率が高くなる傾向にありますが、「始終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」は、3000人以上(38.7%)よりも1000人未満(47.4%)のほうで実施率が高くなっています。規模が大きい企業では、もともとフレックスタイム制度があるケースが多いため、あえて「始終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」を実施する必要がないのかもしれません。

介護休業でも給料はほとんどもらえない

閑話休題。介護休業の期間は「対象家族1人につき、連続する3カ月の範囲内」と法に定められています。また、介護休業の回数は、「対象家族1人につき1回」です。しかし、育児休業と同じように、介護休業期間中の賃金・賞与の取り扱いは、労使の自由な取り決めにゆだねられています(休業期間中に賃金がまったく支給されない場合も含め、80%未満に減額されている場合は、雇用保険から介護休業給付金として、休業する前の賃金月額の最大40%が支給されます。ただし、介護休業の場合は育児休業とは異なり、社会保険料の免除はありません)。

表(3)をごらんください。

介護休業期間中の賃金についても「無給」が全体の91.4%と、ほとんどです。育児休業の場合と変わりません。賞与についても、「日割控除し、全欠の場合はまったく支給しない」が7割を超えています。次いで「日割控除するが、全欠でも最低保障・見舞金などを支給」が20.6%です。

ただ、3000人以上の大手では、最低保障・見舞金などを支給するところが過半数を占め、他の規模よりも休業者に対して有利な内容となっています。また、「控除せず、全額支給」が1社だけありました。

退職金の算定基礎となる「勤続年数」に介護休業期間を算入するかどうかについては、「算入しない」が57.2%と、6割近くを占めています。「算入する」は28.4%。「その他」が9.7%ありますが、その内容は育児休業と同様で、「復職後、一定期間勤務すれば算入」「2分の1を算入」などとなっています。

注)
* ここでは、労務行政研究所が2003年11月7日から2004年1月21日まで「福利厚生諸制度に関する総合実態調査」と題して行った特別調査のうち、育児休業と介護休業についての結果をもとに、「日本の人事部」編集部が記事を作成しました。同調査の内容については、『労政時報』第3630号(2004年5月28日発行)に掲載されています。
* 同調査の対象は、全国証券市場の上場企業および店頭登録企業3668社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)311社の合計3979社。そのうち265社から回答がありました。
* (1)~(3)の表は同調査の内容を掲載している『労政時報』第3630号から転載させていただきました。

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