広がるネット情報とどうつき合うか
企業、人材紹介会社それぞれの対応とは
企業側も一定の対策が必要か インターネット上のクチコミ情報の影響力
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決め手は「誠実にすべてを知ってもらう姿勢」
「実は候補者の方から、貴社への質問を受けていまして……」
こうした人材紹介会社からの問い合わせにいちいち対応するのは、企業としても大変なことだろう。しかし、人材採用に熱心な企業ほど、対応が丁寧だという実感がある。
例えば、答え方が難しい「離職率」についての問い合わせの場合。ネット上に自社のことが書かれているのをきちんと把握している企業は、転職希望者の不安を取り除くような回答をあらかじめ用意している。職種ごとの具体的な数字を出して説明したり、以前離職者が多かったのであれば、当時は何が問題で今はどう改善されているのかを示してくれたりもする。
いちばん熱心な企業の場合、「ご希望があれば、会社訪問も可能ですよ。募集部門の責任者や同僚になる社員から直接話を聞いてください」と言うこともある。転職希望者にそのことを伝えると、「それなら、最初から面接を申し込んでください」となることも多い。企業の誠実さを感じてくれているのだろう
昔かたぎの企業だと、「候補者から質問があってもちゃんと説明して、私たちに紹介するのが人材紹介会社の仕事でしょう」などと言われるかもしれない。しかし、これだけネット情報が行き渡ってしまうと、企業自身に協力してもらわないとどうしようもない部分はある。
こうしたインターネット上のクチコミ情報を利用しているのは、転職希望者だけではない。実は、人材紹介会社もこうした情報を見たり利用したりしているのである。
いちばん基本的なのは、取引先を開拓する際に「どのような企業か」を知るために使う場合だ。ネット上の評判がよくない企業の場合、転職希望者に紹介しても辞退されることが多くなる。当然、紹介の効率は悪い。逆に、そういう企業は採用に苦労しているはずだから、その分ニーズが大きいと考えて積極的にアタックする紹介会社もある。
その他に考えられるのは、「競合企業に勝つ」ためにネット情報を利用するケースだろう。例えば、自社で紹介したA社と、他の紹介会社から紹介されたB社の2社から同時に内定をもらった候補者がいた場合、ネット上からB社のネガティブ情報を探し出してきて、「やっぱりA社の方がいいと思いますよ」と候補者に伝えたりする。
「ネット上の情報に頼りすぎるのはよくない」といいながら、人材紹介会社自身もまたネット情報をさまざまな形で利用している。もはやそれを無視することはできないからこそ、正しいつき合い方を考えなければならない時代なのだろう。
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