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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

長時間通勤は採用の合否に影響する?

健康に働いてほしいから…

気になる長時間通勤と採否の関係

採用選考の際に、居住地を合否の判断材料にはしないというのは、人事にとって基本だろう。しかし、長時間の通勤が業務に差し支えることが予想されるケースもないわけではない。家庭の事情で転居できないと最初から分かっている場合は、本人が通勤可能だと主張しても、企業側はどうしても気になってしまうものだ。特に郊外からの通勤が多い首都圏などでは、発生しやすい問題といえる。

勤務地に近い都内に転居できませんか?

「通勤のことも聞かれましたが、十分可能ですと答えました。一番ありがたいのは新幹線通勤なんですが、そこまで贅沢は言えないので…。実際、うちの近所からも都内に通勤している人はけっこういますよ」

Sさんに面接の様子を聞いたところ、やはり自宅からの通勤は大丈夫か、という質問をされたそうだ。Sさんの自宅は首都圏郊外。応募しているT社は都心部だが、ターミナル駅から地下鉄に乗り換えれば通勤できるエリアに本社がある。

「T社までは2時間ちょっとかかりますけど、大学の時も都心まで通っていましたからね。人事の方からは、もう少し会社に近いところに転居する予定はないのかと聞かれましたが、都内で一人暮らしをするとなると部屋代もかかりますし…基本的には実家から通いたいんですよ」

実はT社に応募する際にも、私とSさんの間では通勤についての話が出ていた。その時には、「仕事に慣れてきたら転居するかも…」と言っていたのだが、本心では極力自宅から通いたいと思っていたようだ。

「了解しました。企業が一番重視するのは候補者のスキルや人物像ですから、通勤時間がネックになることはおそらくないと思いますよ。結果が分かり次第ご連絡します」

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私はそういって電話を切った。

数日後、T社からSさんの合否の連絡がきた。結果は不採用。人材紹介会社には理由もあわせて教えてもらえるのだが、Sさんについては「同じポジションの他の候補者との比較検討の結果」とのことだった。

「そうですか…まあ、仕方ないですね」

T社をかなり気に入っていたSさんだったが、切り替えは速くほとんどひきずらなかった。まもなく、同じ都内でSさんが利用しやすいターミナル駅に勤務地がある別の企業への転職が決まった。

終電の時間が気になる現場の感覚

「もちろん他の候補者の方と比較して総合的に判断した結果ですから、決して通勤時間のことだけはないと思いますよ」

後日、T社の人事マネジャーに聞いてみると、不採用の連絡の時と同じ答えが返ってきた。しかし、総合的に…ということは通勤に関することも多少は入っているのは間違いないだろう。

「人事では居住地を判断材料にすることはないんですが、現場の部長が気にした可能性はありますね。当社の場合、業種的に繁忙期にはかなり残業があるので、現場では、終電の時間を気にしないで残業を頼める人の方が助かる…という判断をしたのかもしれないです」

結局、企業が居住地を気にするケースの大部分はこれだろう。実際、勤務地から近いエリアに転居した社員には特別に住宅手当を割増で支払うところもある。

「そうなんですよね。毎月の交通費も遠距離通勤の場合、かなりの額になります。それを住宅手当として社員に支給すれば残業が必要な時にも遠慮なく頼める…というメリットがありますから」

T社の人事マネジャーも、そうした制度を導入している企業のことは知っていた。もし、T社が同じような制度を取り入れていたら、Sさんも都内に転居していたかもしれない。

「長時間通勤は社員の健康への負担も大きいでしょうし…。体を壊す、あるいはストレスの原因になって業務に差し支える…といったこともあると思います。社員の健康は企業にとっては重要ですから、当社も通勤制度について検討した方がいいのかもしれないですね」

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もちろん、住宅手当を支給されても、家庭の事情などで転居できない人は多いだろう。また、最初は近くに住んでいても、郊外に持ち家を購入したことで途中から長時間通勤になってしまうケースもあるはずだ。いずれにしても、実際に2時間以上かけて都心まで通勤している人は珍しくないのが実情だ。

「郊外だと周囲も皆、長時間通勤してますからね。そういう環境で育つと東京まで多少遠くても通うのが当たり前という感覚になるんですよ…」

勤務地のことを相談した時の、Sさんの言葉が私の頭の中によみがえってきた。



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