職場のモヤモヤ解決図鑑【第53回】
インターンシップの開催に向けて人事が準備するべきことは?企業の受け入れノウハウ
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
-
吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
-
森本 翔太(もりもと しょうた)
人事部に配属されたばかりの23才。部長と吉田さんに教わりながら、人事の基礎を勉強中。
-
石井 直樹(いしい なおき)
人事労務や総務、経理の大ベテラン42歳。部長であり、吉田さんたちのよき理解者。
インターンシップの企画を任された吉田さん。学生の企業理解や職業体験が進む場にしようと、やる気に満ちあふれています。近年の就活市場は、学生の早期始動が定着しています。企業・学生にとって有意義なインターンシップを行えるよう、企画から受け入れまでの基本と流れを押さえ、人事が準備するべきことを学びます。
インターンシップはいつ開催する? 最新採用動向
リクルートが行った調査では、2024年卒採用でインターンシップを実施すると回答した企業の割合は55.9%に上りました。インターンシップ開催が集中するのは8月と9月。学生の活動開始が早まっており、「大学3年生の夏」がインターンシップのピークになっています。
インターンシップに参加する学生も増加しています。23年卒の学生を対象にした調査では、約7割が「インターンシップに参加した」と回答。18年卒調査の約5割から大きく増えています。
インターンシップの応募・エントリー社数平均は12.33社、インターンシップ参加社数平均は8.62社と、複数参加していることもポイントです。インターンシップは学生にとって大切な情報収集の場であるといえます。
インターンシップを実施するメリット
企業がインターンシップを開催するメリットとして、優秀な学生と早期に接点を持てることや、情報発信の機会が増えることによる採用ミスマッチの減少が挙げられます。さらに2025年卒(24年度卒)採用からは、「インターンシップで得た学生情報を就職活動に利用すること」が認められました。
早期に学生と接点を作れる
学生が就職やキャリアについて考え、行動に移すタイミングは早期化しています。就職活動に熱意のある学生ほど、早めに動き出すと考えられます。インターンシップの開催は、早い段階で学生に企業名を覚えてもらうことにつながり、採用選考の母集団形成にも役立ちます。
採用のミスマッチの防止
学生にとってインターンシップは、企業や業界への理解を深め、職種について新たな知見を得るなど、貴重な情報収集の場です。職場の雰囲気のように採用サイトの文字情報や会社説明会だけではわからない点も伝えることができるため、採用のミスマッチ防止にもつながります。
企業イメージの向上
インターンシップに参加した学生に好印象を持ってもらえると、その後入社することなく、消費者や取引先になったとしても、友好的なイメージを持ち続けてもらえることが期待できます。
インターンシップの企画から受け入れまでの基本の流れ
企業と学生双方にとって有意義な機会にするには、インターンシップを「点」でとらえるのではなく、選考や内定を含む採用活動の「線」のなかで、どのように位置づけるのかを明確にすることが大切です。
1)計画を立てる |
---|
知名度の向上や学生との接点作りなど、自社の採用課題に合わせて、インターンシップの目的を明確にします。その後、目的に沿ってプログラムや実施期間などの詳細を詰めていきます。 |
2)環境整備 |
---|
必要な予算の確保や、備品、場所の手配などを行います。協力部署や社員への声掛けもこの時点で行います。就業体験など現場主導の内容である場合も、現場任せにはせず、人事が準備から振り返りまで一貫して関わることが、目的に沿ったインターンシップ実施につながります。 |
3)学生を募集する |
---|
インターンシップ参加者の募集は、自社のウェブサイトや、就活ナビサイトのインターンシップ版などを通じて行います。自社のウェブサイトで発信する際は、SNSでシェアされる仕組みを意識すると、学生間での拡散が期待できます。 インターンシップに参加者を決める方法は、選考試験を実施する、応募者全員が参加できる、先着順で締め切るなど、さまざまです。 |
4)インターンシップ実施~フォロー |
---|
実施前にオリエンテーションを行うことで、インターンシップの目的を参加者と共有できます。また、インターンシップの途中で状況に応じてアドバイスやフォローを行うことも重要です。終了後は、参加者からのレポート提出、報告会や面談の実施などによって参加者の反応をまとめ、その後の採用活動や翌年の取り組みに生かします。 |
インターンシップで行うプログラムの考え方
インターンシップのプログラムは、目的に合わせた期間の設定や、社員を巻き込むことのメリットなどを考えたうえで組み立てます。
1day、短期、長期と目的によって適した期間が変わる
インターンシップの最適な実施期間は、目的によって異なります。短いものだと1日、もしくは数時間の場合もあります。就業体験や業務の疑似体験、学生のスキルを見ることを目的とする場合、実施期間を長く設定することもあります。
期間 | 目的 | 内容の例 |
---|---|---|
1day |
|
|
2~5day |
|
|
1~2週間 |
|
|
数ヵ月単位 |
|
社員と同様の役割や責任を付与した、有給の実務体験 |
インターンシップの期間が長いほうが、より深い体験ができると考えるのは早計です。たとえば、インターンシップの目的が「知名度を高める」ことであれば、参加者の枠を増やし、1dayインターンシップを複数回開催するほうが、狙った効果が見込めるかもしれません。目的に合わせてプログラムを掘り下げることが重要です。
ワークやディスカッションは「本気度」が重要
学生がワークやディスカッションを行う参加型インターンシップでは、内容の「本気度」が重要です。学生に提示するテーマが会社の事業とかけ離れているなど、あきらかに重要度が低いようでは、学生のモチベーションや志望度に影響を与えます。
インターンシップのテーマは、実際に現場で直面している課題や、企業が立ち向かうべき経営課題を踏まえて設定するとよいでしょう。会社として本気で取り組むべきテーマにすることで、学生の意欲が刺激され、志望度や企業理解が高まることが期待できます。
中長期インターンシップや社員の成長にも貢献
中長期のインターンシップでは、現場社員がメンターやトレーナーとして参加することで、社員側の成長・モチベーションアップも期待できます。とくに入社1年目・2年目の頃は、職場に後輩がいないケースが少なくありません。学生への指導が、若手社員の成長を促す機会となります。
インターンシップの開催期間が長期にわたる場合は、参加社員の業務負荷に気を配ると共に、段階的に面談・フォローなどの機会を設けるなど、学生・社員ともに小さな成功体験を積み重ねられるようにデザインします。
インターンシップを採用の流れに組み込み実施しよう
「やって終わり」のインターンシップにしないためには、目的を定め、それに沿ったプログラムや体制を構築することが重要です。インターンシップを採用の流れに組み込み、どのような機能を持たせるかを意識することで、採用のミスマッチ削減や母集団掲載といった課題の解決に結びつけることができます。
【まとめ】
- 近年、学生の動きは早期化。3年次の夏がインターンシップのピーク
- 目的に沿って、インターンシップの期間およびプログラム内容を決定する
- インターンシップを採用活動の一つとして捉え、目的に沿った計画立案、インターンシップ後のフォローを考えることが、自社の採用成功につながる
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!