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「映画監督」の現場コミュニケーション能力

映画監督

阪本 順治さん

「映画監督」というと、脚本を書いたり撮影を指揮したりが仕事と思われるかもしれません。しかし『どついたるねん』『顔』『KT』など話題作を数多く手がけてきた阪本順治さんによると、「撮影現場の映画監督に必要なのは、演出の手腕が半分、残り半分はキャストとスタッフをまとめる手腕」と言います。大勢の俳優やスタッフをメガホン一つで思うまま動かせるのが優れた映画監督、ということができますが、実際には気難しい俳優同士がぶつかったり、きついスケジュールが続いてスタッフの士気が落ちたり、撮影現場というのは企業のビジネスシーン以上に山あり谷ありでしょう。映画監督はどんなコミュニケーション術を駆使して、それを乗り越えていくのか。真田広之さん、寺尾聰さん、佐藤浩市さん、中井貴一さんら名だたる俳優陣による新作『亡国のイージス』(配給:日本ヘラルド映画)を撮り終えた阪本さんにうかがいました。

Profile

さかもと・じゅんじ●1958年大阪府生まれ。生家の向かいが映画館だったことから幼少時より映画に親しむ。横浜国立大学在学中から石井聰亙監督、川島透監督などの撮影現場にスタッフとして参加。89年に赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビューを果たし、芸術選奨文部大臣新人賞、日本映画監督協会新人賞、ブルーリボン賞最優秀作品賞など数々の映画賞を受賞。2000年には藤山直美主演『顔』で日本アカデミー賞最優秀監督賞、毎日映画コンクール日本映画大賞なども受賞した。ほかにも『鉄拳』『トカレフ』『新・仁義なき戦い』『KT』などコンスタントに作品を撮り続ける。今年夏に最新作の『亡国のイージス』(出演=真田広之・寺尾聰・佐藤浩市・中井貴一ほか、配給=日本ヘラルド映画)が公開される。

『亡国のイージス』あらすじ
東京湾で訓練航海中のイージス護衛艦「いそかぜ」に、米軍基地から奪われた化学兵器<GUSHO>が特殊工作員によって持ち込まれた。首謀者は、対日工作員ヨンファ(中井貴一)。先任伍長の仙石(真田広之)はその情報を掴むが、すでに艦長は命を奪われ、副長・宮津(寺尾聡)が総員離艦命令を下す。仙石は苦渋の思いで艦から降りるが、イージスシステムの経験者として新たに艦に乗り込んだ如月(勝地涼)が特殊工作員ではないかと疑う。しかしヨンファと手を結び、国家に反旗を翻したのは副長・宮津だった。宮津はわずか1リットルで東京を廃墟にしてしまう<GUSHO>を搭載したミサイルを首都東京に向ける。防衛庁情報長の渥美(佐藤浩一)は対策を練るが、最新鋭の防衛システムを持ったイージス艦に隙はない。幹部の反乱によって奪われたイージス艦を取り戻すたに、仙石はたった一人で艦に戻っていく……。原作は福井晴敏氏のベストセラー小説。

監督は俳優の内面のいびつな部分まで知っている

夏休みに公開の新作『亡国のイージス』では、真田広之さんや寺尾聰さん、中井貴一さん、佐藤浩市さんなど、名うての俳優さんたちが共演しています。そんな俳優陣を演出するために、阪本さんは監督として、まずどんなコミュニケーションを図ったのですか。

クランクインする前に、主役の真田君とは脚本を見ながらアイデアを出し合うディスカッションを4、5回やりましたね。何でもないセリフでも真田君が声にしてみると、そこに厚みが出てインパクトのある言葉に変わったりするんです。ふたりで一つひとつの言葉を何度も調整してから、クランクインということになりました。

脚本というのは映画のすべてのことを書いているわけじゃなくて、「隙間」もあるんですね。俳優は、その「隙間」からもイメージをつかんで、自分に与えられた役をつくっていく。そのとき、監督とのコミュニケーションが多ければ多いほど、その役に対して監督が考えていることとのギャップはなくなりますね。だから僕は真田君とだけじゃなくて、他の俳優さんともクランクイン前にそれぞれの役柄について何度も話し合っているんです。防衛庁の本部長の役をやった佐藤(浩市)君など、夜、僕の自宅に「あのね、たった今、いいアイデアが浮かんでね」なんて、息せき切った感じで電話してくる(笑)。新しい映画のこと、自分が演じる役のことを、ずっと考えているんでしょうね。佐藤君とは(1994年の『トカレフ』以来)いろいろな作品で一緒にやってるので、そんなコミュニケーションもできるようになっています。

監督と俳優が自分のプライベートな部分までさらけ出し合う、ということもありますか。

阪本 順治さん Photo

ありますよ。僕はどの俳優に対しても、それまで歩んできた自分の人生のいろんな経験を役に取り入れて欲しいと思っています。俳優と食事に行ったり酒を飲んだり、そんなときは映画以外の話もするんです。どんな家族と暮らしてきたか、思春期に興味を持っていたことは何か、誰の影響を受けてきたのか……べつに俳優の人となりを見透かそうとするわけじゃないけれど、そういうふうに取り留めなく話をしていく中で、僕と彼、監督と俳優が互いに深く知り合うようになる。監督の僕は、俳優として成功している彼に、深い闇の部分を見たり、いびつな部分を感じたりする。そしてそれも参考にしながら演出を考えるんです。逆に、俳優の彼は彼で、監督の僕、監督である前にひとりの人間である僕のバックグランドを深く知るようになる。そしてそれを知ったうえで撮影に臨むんですね。

監督と俳優は、そういうコミュニケーションをクランクインまでにすることが大事だと僕は思っています。俳優がこれまでどんな演技をしてきたか、監督がどんな作品を撮ってきたのか、その程度しか知らない関係で撮影に入るよりも、絶対にいい。しかも撮影というのは「生き物」なんです。クランクインの前に決めておいたように事が進むんじゃなくて、現場の中で「やっぱりここはこうしよう」と新たに発見したことも大切にしなくちゃいけない。その「生き物」のような撮影現場の中で俳優たちが気持ちよく演じているかどうか、それが一つひとつのシーンに表れてくるし、もし監督が俳優のことをよく知らずに演出を押しつけたりすると、いいシーンは撮れないんです。

スタッフが担いでくれる神輿にちょんと乗せてもらう

撮影現場で俳優同士の個性がぶつかって、そこからまた新しいものが生まれることもある。

そう。俳優はセリフを自分の中で消化するとき、まず相手役のことを考えるもので、ここで相手はこう出るだろうから、こういう感情で返してやろうと想定しています。でも「生き物」のような現場に臨んだら想定の範囲外のこともあるわけで、そんなときに同じ一人の俳優から今までとは全然違う個性が引き出されるというケースがありますね。俳優同士の緊迫感は、現場のスタッフにもいい影響を与える。ただ、あんまり緊迫感が強すぎたり、長く続いたりすると息が詰まるから、僕が場をなごませるけどね。根が関西人なので、くだらないことをぽろっと言ってみたりします(笑)。

撮影中の雰囲気に気を配るのも監督の仕事の一つ、ということでしょうか。

撮影現場での映画監督の仕事というのは、演出が半分、残りの半分はキャストとスタッフをまとめることです。監督をやっている僕の後ろには大勢の人たちがいる――今回の『亡国のイージス』の場合、優に100人は超えている――ので、僕はお山の大将として、みんなに神輿を担いでもらってちょんと乗せてもらわなければなりません。僕が気配りを忘れたら、しっかり神輿を担いでもらえないでしょう。ですから、俳優だけじゃなくスタッフのことも僕はよく知っているつもりだし、スタッフの靴下に穴が開いているのを見つけて、すぐ3足1000円の新品を買ってきてプレゼントしたことだってあるんです(笑)。

映画の撮影現場はハードだと言われますが、疲れてスタッフらの士気が下がりそうになったら、どうするのでしょうか。

阪本 順治さん Photo

徹夜が続くこともありますからね。でも、1日撮影が延びるだけで制作費が跳ね上がってしまうから、もうしんどい、徹夜はやめようとはなかなか言えない。そういうときもコミュニケーションが大切になってきます。やっぱり、人の心を動かすのも、人と人をつなぐのも言葉、ぜんぶ言葉なんです。その意味で言うと、僕はこの仕事に向いていませんね。ひとりでものをつくっているほうが、基本的には向いているんですよ(笑)。

今回の『亡国のイージス』の現場で言うと、10代の新人俳優から、77歳の録音技師までいました。男性キャストも女性スタッフもいる。僕は、いろんな人に同じ言葉をかけるわけにはいかない。新人俳優が行き詰まった感じになったら、「めちゃくちゃ楽しい!って、3回続けて言ってみろ」と強い言葉をかけて体温を吹き込んだり、でもベテラン俳優に対してはそんな言葉は使えずに手練手管でやったり、もう必死なんです。

『どついたるねん』に赤井英和を大抜擢した理由

阪本監督のデビュー作は、試合でKOされて再起不能になったボクサーが復活をかけてリングに挑む『どついたるねん』でした。主役は、同様のリング禍でプロボクサーを引退した赤井英和さん。会社で言えば経験のない人を重要なポストに大抜擢したようなものですね。

当時の赤井君は飲んだくれて、現役時代より20キロ以上も太っていました。通天閣のある新世界あたりを歩いていると、「あれ赤井や。惜しい人を亡くしたな」なんて後ろ指を差されるほどだったんです。『どついたるねん』は赤井君にとって、もう一度映画というリングで復活できるチャンスだったし、演技の経験などなくても彼のそれまで溜め込んだものがストレートに出れば新鮮だと僕は思っていた。それに、そもそも彼はリングの上で、多くの観客の前で自分自身を存分に表現していたエンタテイナーです。試合後のインタビューもサービス精神旺盛で面白く、赤井英和という男はスポットライトを浴びると生き生きするタイプだということにも気づいていました。

俳優というのは、誰か別の俳優とイメージが被るとダメなんですよ。クランクインの前、僕は彼に「赤井みたいな異色のキャラクターは見たことないぞ。赤井には新人賞の椅子が一つ、特別に用意されているぞ」と言いました。

その言葉で赤井さんのモチベーションを高めようと。

阪本 順治さん Photo

とにかくセリフを覚えるだけで目いっぱいになるだろうし、同時に「20キロ減量してくれ」と言っていました。演技も初めてですから、励まそうという意味も込めてそう言ったんですね。でも、撮影初日、赤井君は全然緊張していなかった。まず彼の顔のアップを撮ったのですが、目の前にカメラを持ってきて回しても動じない。テイク・ワンで、OK。「すごいな」と僕が驚くと、「平気ですわ。カメラは殴ってきませんやろ」と(笑)。

そんな彼でも、本物のボクサーとリング上で打ち合うシーンは恐怖感があったみたいです。『どついたるねん』のストーリーそのままに、現役最後の試合でKOされ、開頭手術を受けて、頭には深い傷跡が残っている。「普通の三分の一の衝撃でまた頭が割れるぞ」と医者に言われていたんですね。そのシーンの撮影前日はさすがにナーバスになって「監督、俺は明日、死にたくない」と、めずらしく弱音を吐いていました。僕は困って、「ダメだよ、まだ」とか、そんなことしか赤井君に言えなかった。やっぱり僕は、この仕事に向いてないかもしれませんね(笑)。

「総員離艦!」で締め括った『亡国のイージス』の撮影

今、韓国映画がブームになっていますが、その背景には映画を国家の産業と捉え、監督やスタッフの育成を国が支援していることがあるようです。

韓国では、国が映画監督や映画関係者を育成する「韓国アカデミー」という学校があって、そこで映画の基礎を学んだ人たちが個性豊かでクオリティーの高い作品を撮っていますね。また映画監督というステイタスも高く、小学生が将来なりたい職業のベストテンに入っているし、さらに羨ましいことに酒場で女性にすごくモテるというんです(笑)。

日本では民間の映画学校がたくさんあるので、今さら国が映画学校をつくるというのはどうかなと思いますが、今年から撮影監督協会が撮影現場の助手を育成するインターンシップを始めます。これは映画制作に興味がある人に撮影現場の仕事をじかに経験してもらうもので、そのギャランティは国の予算から出るそうです。ただ、僕たち映画監督がやらなくちゃいけないのは、そういう試みと一緒に、やっぱり一つひとつ自分の作品をしっかり撮っていくこと、それが大切だろうと思いますね。

『亡国のイージス』のいちばんの見どころは、どこでしょうか。

阪本 順治さん Photo

日本映画を代表する俳優たちによる人間ドラマは厚みや深みがありますから、そのへんを堪能してもらえればと思っています。今回の現場ではインディーズの作品を撮っているときには経験しなかったようなことが多く、それをうまく統括できたかどうかはわからないけれども、新たな集団作業のかたちというものは見えてきましたね。撮影が終わる頃になって、ようやくキャストとスタッフ全員の顔と名前が一致しましたが、撮影終了と同時にみんな次の仕事に行ってばらばらになってしまう。まだ最後の編集作業が残っているのですが、その前に打ち上げをやりました。

そこでキャストとスタッフにどんな言葉をかけたのでしょう。

みんな別に僕のためだけに集まって仕事をしてくれたわけじゃなく、それぞれ自分の目的も持って『亡国のイージス』という映画製作に携わったんですね。だから、「ありがとうございました」と言うのはちょっと違うなと思って、打ち上げの最後、締め括りはイージス艦に倣って「総員離艦!」と言ったんです。

(取材・構成=西山由美、写真=菊地健) 取材は2005年3月26日、東京・銀座の日本ヘラルド映画にて。


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