【改善コンサルタントが教える過重労働対策】
残業削減&企業リスク軽減につなげる
「業務終了命令書」「帰宅命令書」の活用方法
特定社会保険労務士
橋本智明
2. 改善コンサルタントによるアドバイス
筆者が経験した改善コンサルタントの業務は、労働時間(休日、休暇などを含む)関係の法解釈、労働時間の制度運用、時間外労働・長時間労働などの指導、助 言、相談です。その他、労働時間等の相談を希望する会社、企業集団、労働組合などへ訪問相談も行いました。相談内容は様々でしたが、多くは「賃金不払い残 業(サービス残業)」、「長時間労働に伴う過重労働」による問題が根底にあるものでした。
筆者が改善コンサルタントとして相談を受けた際には、次のような流れで問題解決に向けた取組み方のアドバイスを行っていました。
改善コンサルタントによる労働時間削減アドバイスの中身
1.下記枠内の行政リーフレットを見せながら説明し、これを配付する。
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準(平成13年4月6日付け基発第339号)
- 賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針(平成15年5月23日付け厚生労働省労働基準局長通知)
- 労働時間等見直しガイドライン(平成20年厚生労働省告示第108号)
- 過重労働による健康障害を防ぐため事業者が講ずべき措置等(平成14年2月12日基発第0212001号)
2.経営者に時間外労働削減のメリットを示し興味を持たせる。
売上-売上原価(残業代含む)=売上総利益
上記の式を示して時間外労働(残業代)を削減すれば売上総利益が増加することを確認させる。
3.労使ともに達成できそうな目標を提示する。
1人当たり、1年で、時間外労働12時間削減+年次有給休暇取得1日増加を基準として目標を示す。 会社の改善意識によって目標は異なるが、継続して目標設定することを勧める。
4.身近で具体的な事例を示す。
時間外時給1,500円×12時間(1年の削減時間)×従業員数(100人)=180万円(残業代の減少)
売上総利益が上がることを経営者に認識させ、時間外労働削減のやる気を醸成させる。
5.労使共通の意識改革を図る。
経営者から従業員に、労働時間削減の決意を過重労働防止と業務改善に関連付けて表明させる。 利益が出たら労使で分配することの宣言を勧める。
6.労使共同での施策作成を勧める。
施策について助言し、施策の作成は労使共同で進行することを勧める。
改善コンサルタントの仕事は基本的にここで終了し、その後の施策の決定は、企業の状況を最も知っている労使に委ねます。
A社(製造業、従業員数500名)では、改善コンサルタントのアドバイスを受け1年間の時間外労働のデー タを集計・分析したところ、売上高と時間外労働時間数にあまり相関性が見られませんでした。そこで、時間外労働時間数を削減しても売上高に及ぼす影響は少 ないと判断し、時間外労働時間削減を意識付けるため、継続的に「残業は減らせる」と働きかけ、業務を把握する部門長が「目標総労働時間」の枠内で業務量・ 労働時間を調整したところ、1年間で総計7,000時間、1人当たり平均14時間の時間外労働を削減することができました。
しかしながら、月間の時間外労働時間数が100時間を超える者が数人おり、この者たちの時間外労働時間数削減が、次なる課題となりました。
このような場合、当該労働者たちに労働時間削減意識と業務改善意識をもたせるために、「業務終了命令書」および「帰宅命令書」の活用が有効と思われます。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。