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採用、自己決定権、メンタルヘルス、有給休暇、サービス残業……労使トラブル「解決失敗」事例(後編)

6.身勝手な新入社員に職場が振り回された

1.社長は偉い。でも……?

小売業を営むA社は、社員数30名程度ながら地元では知らない人がいないほどの有名な企業です。女性社長Bの勝ち気な性格と積極的な事業展開が功を奏して経営は順調で、B社長は地域のシンポジウムにパネラーとして招かれたり、講演を依頼されたりして、地元のオピニオンリーダーとして大活躍しています。

そんなB社長ですが、若くして会社を創業し、成功に導いてきたことから、その経営手法はかなりのワンマンであり、勉強熱心さもあってか社員への期待レベルが高すぎる嫌いがあったようです。とにかく社長の言うことは"絶対"ですので、社長の考え方に共感できない社員は退職を余儀なくされるといったことがよくあり、どちらかというと社員の出入りの多い会社でした。

2."問題"社員登場!

高校を卒業したばかりのCは、A社に販売員として採用されました。地元では名の知れた会社に就職できたわけですから、本人はもとより周囲の人たちも大いに喜び、その前途を期待したに違いありません。

ところが実際に仕事に就いてみると、これまでの学生時代と勝手が違います。自分では良かれと思って振る舞っているつもりでも周りがそう受け取らない。やることなすことが皆チグハグで先輩社員からあきれられるばかり。率先して仕事をすれば、「指示もされないのにCが勝手にやった」と叱られ、少しでも反抗的な態度をとると「性格が悪い」と言われる始末。つまり、自分の考えや行動が他の社員にまったく通用しないのです。挙句の果てには、職場の雰囲気に耐えられず勝手に職場放棄をしてしまい、ますます自分を窮地に追い込んでしまいました。

3.社長の叱責と教育の必要性

「どこ見て仕事してんのよ!」「自分勝手に判断しないで!」B社長はCを怒鳴ります。B社長は若くして事業を起こし、苦労してきただけあって、Cの一挙手一投足が気になるのです。また、他の社員からの苦情も入ってきています。入社間もないCについては、A社の社員として立派に成長するまで教育する責任がありますので、外部団体が主催する「新入社員研修」や「マナー研修」に参加させ、職場に配属されてからは、先輩社員、または社長自らが業務内容や遂行など事細かに教えてきました。

それにもかかわらずまったく効果が現れません。このままではCに辞めてもらわなければなりません。しかし、Cの採用を決めたのはB社長ですし、「将来ある若い人をこのまま辞めさせてしまっていいのか」「何か改善させる手立てはないのか」社長は悩みました。

最終的にB社長はC本人と面談し、去就については本人に判断させるようにしました。面談で話し合われたのは、次のような内容でした。

(1)採用に当たって、会社がCに施した研修・訓練内容の把握(2)A社での仕事は、他の社員との共同・協力によって成り立っていることから、度を超して自分の考えにこだわり、他の社員の意見を聞かないことになれば、職場秩序維持上、非常に問題であること(3)他の社員の考えとCの考えを比べ、他の社員の考え方の合理性を諭し、さらにどちらの考えをよしとするかは会社が決めることであり、個々の社員が決められる問題ではないこと(4)このまま当社で仕事をしていった場合のCの将来性の有無

4.退職の意思表示

後日、Cから書面で退職願が出されました。そこには社長への感謝の念が綴られていましたが、それ以上に自己を正当化しようとする以下のような文面であふれ返っていました。

「社長の指導方法が悪い」「教えられているというより馬鹿にされ罵られているとしか思えない」「職場の雰囲気が悪くなったのは私のせいだけじゃない」「周りからどう言われようと自分の性格は変えられない」

この文面を読む限り、Cは、自分のA社での振る舞いについては、当然のごとく受け入れられるべきことだと思っていた節があります。まだ社会人になって日が浅いとはいえ、そこには「協調性の欠如」が窺われます。

5. どうしてこうなってしまったのか?

今回のトラブルについては、「採用上のミス」が考えられます。そもそもA社には戦略に基づいた明確な「必要な人材像」がありませんでした。これまで場当たり的な採用を繰り返してきたツケが回ってきたようです。

最近は、資質・行動特性を含めて企業が採用したいと思う人材が共通してきているという傾向にあり、A社はその流れに乗り遅れている嫌いがあります。A社のような小売店の販売員として求められるスキルは、職務そのものへの関心の高さ、コミュニケーション能力、学習能力の高さ、対応力の速さなど、採用してから習得するにはどちらかというと時間がかかり、能力開発テーマとしては困難なものばかりです。採用時にすでにそのようなものをスキルとして保持している人を採用すべく、採用基準を構築していくことが必要でしょう。

7.「全館禁煙」に職員からクレーム

1. 健康増進法の施行をきっかけに

「このままでは医療機関としての使命を果たせない…」。クリニックを経営するD医院のE医院長は、職員の意識の低さに先行き不安を感じていました。

事の発端は、平成15年5月1日から施行された「健康増進法」にあります。同法の施行により、事務所や休憩室などを含むあらゆる施設において受動喫煙を防止することが管理者の責任として求められることとなりました。さらに、医療機関については、病院機能評価機構が平成16年度から病院機能評価事業において病院内全館禁煙を認定証取得の要件としたことも、E医院長の危機感を募らせた要因となりました。

健康増進法 第5章 第2節 受動喫煙の防止 第25条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

2.医院内における取り組み

タバコが、他の健康上の問題と異なる重要な点は、喫煙する本人だけではなく、受動喫煙の形で周囲の人に様々な悪影響を及ぼすことです。先見性溢れるE医院長は、早速、全館禁煙運動に取り組みました。

まず初めに、職員に対して全館禁煙運動を啓蒙するため、保健所から講師を招いて講習会を開催。その後、病棟で2週間の禁煙デーを設けて禁煙を開始し、さらには職員の禁煙を開始しました。しかし、職員からは、「タバコを吸うのは本人の自由の領域に属する問題であり医院長からとやかく言われたくない」「休憩中にタバコを吸えないのは仕事の能率が下がるから院外でタバコを吸わせて欲しい」「いきなりではなく徐々に節煙してから全面禁煙に移行してほしい」などといった希望が出されました。

3. ニコチン依存性は立派な薬物依存であり、精神疾患

ニコチン依存は、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類では、「精神および行動異常症」に分類され、独立した疾患として扱われています。ニコチンの依存性は、コカインやヘロインと同等であり、職員個々の自由意志だけで喫煙を辞めるのはかなり困難でしょう。

健康を阻害する要因を無視して、自分の守備範囲の疾病の治療や看護だけを考えている医療従事者、自ら喫煙していながら患者に禁煙を勧める医療従事者に最良の医療提供ができるでしょうか。特に精神疾患を扱うD医院では、ニコチン依存者を職員に採用していることに対して、患者等からクレームがあることも予想されます。

4.D医院の禁煙に対する基本姿勢

(1)D医院には患者に対し、快適な療養環境を提供する義務があります。また、職員も労働契約上の義務として、職場環境の保持に努めなければなりません。(2)D医院の医療スタッフは、喫煙患者に禁煙を指導する責務があり、患者自身も早く病気が治癒するよう努力すべきです。(3)D医院は、職員の健康管理上、禁煙を推進する必要があります。また、職員は労働契約上の誠実労働義務として、命じられた仕事を完全に遂行できる心身の状態を保ち、誠実に勤務しなければなりません。(4)D医院には地域住民に対し、タバコの健康に及ぼす悪影響について啓発していく使命があります。

以上の点から考えると、D医院内の禁煙推進においては、職員が禁煙対策に取り組むべき最も近い位置にいるという認識を持つことが重要になります。そのため、E医院長は、禁煙に関する催しの効果的な活用、場合によっては段階を経て禁煙を実施する、外部ブレーンの活用、喫煙職員との十分な論議等を行いながら着実に院内・敷地内全面禁煙を実施していくべきでしょう。

8.創業以来の社員がうつ病に!

1. 長時間労働が恒常化

Gは食品卸売業を営むF社に勤めて15年になります。F社へは、大学の先輩であるH社長が同社を設立するときに誘われて入社したといういきさつがあります。Gは、それ以前は家業の酒店を手伝っていました。個人で営むような酒店は自由化の波に押され、将来的にもあまり発展が期待できないため、H社長の誘いに応じて新たな場所で自分の可能性を試してみようと思ったわけです。

幸いに会社は順調に成長し、今では近隣の市に支店をもつまでになり、社員数40名ほどの企業になっていました。さらには、地元大手レストラン・チェーンとの業務契約がまとまり、業務拡大のため仕入担当次長であるGはただでさえ忙しい上に、業務量が大幅に増え長時間労働が恒常化するようになっています。

2.体調異変からうつ病に

創業時、Gは配送業務を担当していましたが、数年前からは社長の命により仕入・配送業務のオペレーションを担当するようになり、忙しい日々を送ってきました。それ以来、定時に帰宅したことは年に数回しかありませんでしたが、やればやるだけ会社の成長が実感できたため、長時間労働はまったく苦になりませんでした。

しかし、最近原因不明の体調不良に見舞われ、心身ともに不安定な状態に陥りました。当初は風邪かと思い内科に通院してみましたが、体調は一向に改善しません。そこで精神科医に診てもらったところ、即座に「うつ病」と診断されました。

考えてみれば、長年にわたり長時間労働をしてきているわけであり、特に最近はそれが深夜にまで及んでいるところから、うつ病と診断されても何等おかしいところはありません。本人は早速会社に自己の病状の報告と、「病状が回復するまで休職させてほしい」との要望を出し、復職後の労働時間の短縮や要員の補充等を願い出ました。

3.社長の冷たい対応

Gから報告を受けたH社長は、Gがうつ病と診断されたことに驚きましたが、内心では違う考えをもっていました。確かにGは創業以来の仲間ということもあり、それなりに気にかけてきましたが、ここ数年来、直属の上司や部下からGに対する不平不満が挙がってきていました。考え方が自分本位であり、仕事に対する要領も悪く、「その地位に相応しい能力を保有していないのでは?」と思われているらしいのです。

社長もそのことについてはうすうす感じてはいたのですが、何しろ古くからの友人であり、かつ創業メンバーでもあるわけで、なかなか本人には言いづらいことではありました。過去に何回かそれとなく注意を促したことがあるのですが、具体的な指導をしたり、改善を求めたりしたことはありませんでした。

ですから、今回の件についても、うつ病はGの能力不足による長時間労働がそもそもの原因であり、「すべてを会社のせいにされるのは心外だ」との思いが強く、解雇をちらつかせたりなどして、ついGに冷たい対応をとってしまいました。

4. 一挙に崩れた信頼

信頼していた社長からの冷たい対応に、Gは意気消沈しました。無理もありません、創業以来会社のために身を粉にして働いてきたのですから。しかも、自分のしてきた仕事に対して、周りからの承認が得られていなかったこともGにはショックでした。社長とは古くからの友人でもあり、自分なりに会社に貢献してきたという自負から、多少わがままだったり傲慢な態度を取ったりしたことがなかったとはいえませんが、「そこまで言われることはないのでは」と思うのです。

Gは妻とも相談し、F社を退職することにしました。医者からの「仮にうつ病が快復したとしても、元の会社に復帰した場合、再発するおそれがあるので、ここはゆっくり休息をとり新たに環境を変えた方がよい」とのアドバイスを受け入れたのです。

また、会社へは妻とも相談のうえ、この際過去の残業手当未払分を請求することにしました。会社はわずかばかりで名ばかりの「次長手当」で長年Gを管理職扱いにして、残業代を支払ってこなかったのです。さらに「うつ病は労災ではないのか」と、それとなくH社長に対してほのめかしてみました。

5.企業のメンタルヘルス対策

多くの企業において、メンタルヘルスの問題を本人の能力不足にすりかえることで、責任回避をしようとする傾向があります。単に「能力がない」とか、「職務適性に欠ける」と言ってみたところで、何を根拠に、具体的にどこが問題なのかを指摘しない限り問題は解決しません。まして具体的な指導・改善を行ってこなかったわけですから、半ば黙認していたということになります。

F社はGを管理・監督者として扱い、厳密な労働時間管理をしてきませんでした。そういったことは許されないわけであり、企業には管理職を含む社員に対する健康確保責任があることを踏まえて、社員が過重労働とならないように努めなければなりません。F社は、Gに対しても労働契約に基づく安全配慮義務(健康配慮義務)があることを踏まえ、Gが長時間労働による健康障害が生じないよう時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、健康診断の実施等の徹底および産業医等による助言指導等に努めるべきでした。

9.登録型ヘルパーの不満

1.登録型ヘルパーでも年次有給休暇をとれる?

3年前からIヘルパーステーションで登録型ヘルパーとして働いているJは、これまで、ステーションから連絡があれば極力仕事に応じてきたため非常に重宝がられていました。

そんなJでしたが、「たまには年休でも取ってのんびりしたい」と思うこともありました。しかし、施設長からは常々、「登録型ヘルパーは年次有給休暇を取得できない」と聞かされていましたので、さほど気にも留めずにいました。ところが先日、スーパーで買い物をしていたところ、他の介護施設で同じように登録型ヘルパーをしている高校時代の友人に呼び止められ近況話をしているうちに、彼女が年次有給休暇をとっていることがわかり、何となく釈然としない気持ちになりました。「どうして私には年次有給休暇が取れないのだろうか?」「もしかして施設長は私にうそをついているのでは?」Jの施設長に対する不信感が芽生えてきました。

このままでは、仕事に身が入りませんし、ステーションからの業務要請があった場合に気持ちよく受けることができません。

2.施設長は質問をはぐらかすのみ

Jは自宅に戻り、思いきって施設長に電話してみました。登録型ヘルパーとして極力ステーション側の意向に沿って仕事をしてきたにもかかわらず、年休も与えられないのはおかしいのでは、と思ったからです。ところが、電話に出た施設長は「他の介護施設でも登録型ヘルパーには年休を付与していない」との一点張りで、理由の説明がまったくありません。Jの施設長に対する不信感はますます募ってきました。その結果、しばらくはIヘルパーステーションの仕事を見合わせることにしました。

3.登録型ヘルパーの年次有給休暇は?

労働基準法39条は、年次有給休暇の権利の発生要件として、?6カ月の継続した勤務、?全労働日の8割以上の出勤という2つを挙げています。この場合の「全労働日」とは、労働契約上、労働義務が課せられている日をいい、通常、総歴日数から就業規則その他によって所定休日を除いた日ということになります。ただし、会社の責めに帰すべき休業、休日労働した日および正当なストライキ等は全労働日に含まれません(昭33.2.13基発90、昭63.3.14基発 150)。

ところがJのような登録型ヘルパーの場合には、本人の意思によって労働日を変更できるため、あらかじめ所定労働日数や勤務日を決められません。このような就労形態の場合、登録型ヘルパーに年次有給休暇は付与されないことになります。なぜなら、労働基準法39条では、年休付与年度のJの所定労働日数が定かである場合に、使用者であるIヘルパーステーションに年次有給休暇を付与すべき義務を課しているのであって、年休年度の所定労働日数が予め定かでない場合には、年次有給休暇付与の義務を課してはいないからです。

4.ヘルパーステーションの対応策

ただ、そうはいってもIヘルパーステーションにとって、Jは貴重な戦力です。ここは、労働基準法の解釈としては多少の無理があったとしても、何らかの措置をとるのが妥当かもしれません。

Jの心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることや、ゆとりある生活の実現に資するという年次有給休暇の趣旨を考慮し、例えば前年度に勤務した日数を参考にして比例的付与するなどの方法を検討してみる必要があるでしょう。

10.退職社員から未払い残業代の請求が

1.退職者が反乱を起こす

成長著しいK社は、パートタイマーを含めると60名程の会社です。市内はもとより近郊の観光地を含めて10店舗以上の雑貨店を経営しています。従業員は、夏の観光シーズンのイベントや全国のデパートでの催事への参加と、仕事に忙殺されています。

当然、長時間労働を強いられているわけですが、未だかつて残業代が支払われたことはありません。そのためかどうか、従業員の出入りも激しく、どことなく落ち着きのない会社でした。今回、複数の退職者を出したところ、個々に労働基準監督署や労働組合を通じて未払い残業代の請求があり、社長をはじめ幹部社員が対応に追われ仕事にならなくなってしまいました。

2. やり手社長の考え

L社長は若くしてK社を創業し、短期間の内にK社の経営を軌道に乗せたところから、地元では"やり手経営者"で通っています。40代半ばで、経営者としては若手の部類に入るのですが、経営に対する考え方、特に従業員に対する考え方には古風なところがあります。したがって、社長の経営ビジョンに共感できる人はどこまでも社長についていくでしょうし、そうではない人にとっては、非常に居心地の悪い会社だったようです。

今まで、どちらかというと前者のほうが多かったようですが、会社が成長して従業員の数が多くなってくると、社員の会社に対する不満が表面化し、単なる社長の思い込みだけでは従業員が納得しなくなってきました。

3.長時間労働美徳論

L社長は若く、戦略性に富んだ考えを持っていましたが、社員に対しては非常に厳しい経営者でした。社長自ら全国の催事場を回り、寸暇を惜しんで働き、ここまで会社を発展させてきたことからもわかる通り、従業員に対しても法定労働時間を無視した献身的な働きを望んだのです。

そして、残業代は毎月の賃金として支払われたことはなく、長時間労働が業績評価の一部として組み込まれることにより、賞与に反映されていました。社長としては「そのほうが従業員のモチベーションアップにつながる」と考えていたようです。確かに、同業他社に比べ賞与の額は多かったかもしれませんが、かといって従業員がはっきりと残業代が含まれていると認識できるほど多かったとはいえません。また、仮に賞与に明確に判断できる残業代が含まれていたとしても、「賃金の全額払いの原則」に反するわけであり、問題はあります。

4.「非金銭的報酬」が大事

K社は、これまで労使ともどもガムシャラに働いてきましたが、従業員も増え労働時間管理をはじめとして労務管理が難しい段階に来ていました。残業代は、労働時間の適正な把握に基づいて毎月残業手当として支払われなければなりませんが、そのこととは別に、「金銭的報酬だけが従業員のモチベーションをアップさせる」という考えを改める必要があるでしょう。「いかに金銭的報酬以外のもので従業員のモチベーションアップを図るか」ということが、K社の経営課題だといえます。

従業員は、業務を通じて新しい価値ある知識を得られる可能性があるでしょうし、新たな人間関係を構築できるかもしれません。また、業務を通じて人間的成長を図り、成し遂げた仕事に対しての評価を得ることが可能でしょう。そういった諸々の非金銭的な報酬と承認欲求(他人から認められ、評価されたいという気持ち)への配慮が、従業員のモチベーションアップにつながっていくのではないでしょうか。

日本法令発行の『ビジネスガイド』は、1965年5月創刊の人事・労務を中心とした実務雑誌です。労働・社会保険、労働法などの法改正情報をいち早く提供、また人事・賃金制度、最新労働裁判例やADR、公的年金・企業年金、税務、登記などの潮流や実務上の問題点についても最新かつ正確な情報をもとに解説しています。ここでは、同誌の許可を得て、同誌2005年9月号の記事(全2回)「労使トラブル『解決失敗』事例」(後編)を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は日本法令ホームページ http://www.horei.co.jp/へ。

【執筆者略歴】
●小笠原 俊介(おがさわら・しゅんすけ)
北海道生まれ。1977年、社会保険労務士、行政書士の資格取得。1982年4月に「オフィス小笠原」(社会保険労務士・行政書士事務所)を開業、現在に至る。その間、労働省(現:厚生労働省)委嘱「時短診断サービス事業」時短アドバイザー、同「新規起業事業場労働条件整備サポート事業」労働条件整備コーチャー、「労働時間制度改善支援事業」診断アドバイザーに選任され、診断事業等に携わる。著書に『個別労使トラブル直前解決顛末記』(日本法令刊)、『ケーススタディ 労働時間、休日・休暇』(第一法規刊)などがある。

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【用語解説 人事辞典】
エメットの法則
ボアアウト(退屈症候群)
企業がレジリエンスを高めるための取り組み
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ワーク・ファミリー・コンフリクト
労使協定
過緊張
リカバリー経験
SOC(首尾一貫感覚)
レジリエンス