【本誌特別調査】
人事担当者のキャリアに関するアンケート
人事担当者としての今後の意向と自身のレベル感
働き方改革関連法の施行やHRテクノロジーの普及など、企業の人事を取り巻く環境とともに、“人事担当者に求められる役割・資質” も大きく変化している。こうした中、人事担当者自身がキャリアを見つめ直す機会も重要と思われる。
そこで労務行政研究所では、企業の人事担当者を対象に、自身のキャリアと今後の人事担当者に求められる能力・知識、自社人事部での育成施策などを調査した。
本稿では、その中から「人事担当者としての今後の意向と自身のレベル感」の調査結果を紹介する。
◎調査名:「人事担当者のキャリアに関するアンケート」
1. 調査対象:『労政時報』定期購読者向けサイト「WEB労政時報」の登録者から抽出した人事労務担当者2万5670人
2. 調査時期:2020年1月16日~2月3日
3. 調査方法:WEBによるアンケート
4. 集計対象:前記調査対象のうち、回答のあった550人(同一企業で複数人回答いただいたケースも、個別の回答としてそれぞれ集計に含めた)。ただし、自社人事部門の現状や課題を尋ねた部分については518社(1社につき1人の回答集計による)。集計対象者(会社)の規模別内訳は、[参考表]のとおり。なお、設問により回答していない人がいるため、各項目の集計人数は異なる
5. 利用上の注意:[図表]中、「n」は集計人数または集計社数を表す。また、[図表]の割合は、小数第2位を四捨五入して小数第1位まで表示しているため、合計が100.0にならない場合がある
人事の仕事に対する今後の意向[図表12]
50.2%が「当面は人事で仕事を続けたい」と回答
本調査は、“現在” 人事を担当している人を対象としているが、“今後も人事の仕事を続けたい人” “別の仕事に挑戦したい人” など、今後のキャリアに関する考え方はさまざまある。
そこで、人事の仕事に関する今後の意向を尋ねたところ、「当面は人事で仕事を続けたい」が50.2%、「ずっと人事で仕事を続けたい」が24.9%と人事の仕事を継続したい人が多数を占める一方、「近いうちに人事以外の仕事に変わりたい」14.9%とする人も一定割合見られる[図表12⑴]。役職・職位別に見ても、この傾向は変わらない。
年齢層別に見ると、「ずっと人事で仕事を続けたい」とする人の割合は年齢が上がるにつれて高まり、40~44歳で38.0%とピークを迎える[図表12⑵]。以降は、19.8~26.0%の間で推移している。「近いうちに人事以外の仕事に変わりたい」とする人は25~34歳の約18%から35~39歳(14.3%)、40~44歳(9.8%)と減少するものの、45~49歳では22.1%と最も多くなっている。加えて、40~44歳と45~49歳で「ずっと人事で仕事を続けたい」が38.0%から19.8%にほぼ半減することからも、40代後半を “キャリアの一つの転機” と捉えている人が多いといえる。
人事担当者としてのレベル(自己評価)[図表13]
「他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル」が34.5%。役職・職位で傾向が異なる
ここでは、自分が “人事担当者としてどのレベルにあるか” を、以下の4段階で自己評価していただいた。
- 見習い~「一人前」手前
- 一人前…人事労務に関する専門知識・スキルを習得し、発揮しているレベル
- 他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル
- 人事のエキスパート…人事部門の中核として経営や現場から厚い信頼を得ているレベル
最も多いのは「他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル」で34.5%。その他はいずれも2割台前半(20.1~24.6%)となっている[図表13]。
役職・職位別に見ると、部長クラスでは「人事のエキスパート」が58.7%と約6割。「他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル」26.9%と合わせると85.6%に上る。課長クラスでは「他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル」が40.5%で最多となっているが、「人事のエキスパート」も35.1%で両者の差は比較的小さい。
係長クラスでも「他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル」が最も多く、47.7%と約半数。これに「一人前」が20.5%と続き、合わせて68.2%と7割近い。一般社員では「一人前」が33.7%、「見習い~『一人前』手前」が32.7%とほぼ同数で並んでいる。
人事の経験年数別に見ると[図表13⑵]、“3年” までは「見習い~『一人前』手前」、「4~6年」は「一人前」、“7~14年” は「他者の指導や新しいミッションの中心を担えるレベル」、“15年以上” は「人事のエキスパート」が最も多くなっている。
より高いレベルを目指すために必要なことの“相対的な重要度”[図表14~15]
「難度の高いミッションへの挑戦」の重要度が高い
ここでは、[図表12]で「ずっと人事で仕事を続けたい」または「当面は人事で仕事を続けたい」と回答した人のうち、[図表13]で「見習い~『一人前』手前」と回答した人には “一人前のレベルに達するために必要なこと”、「一人前」と回答した人には “より高いレベルを目指すために必要なこと” をそれぞれ五つの項目で例示し、その項目の “相対的な重要度” を「高」「中」「低」の3段階で回答いただいた。[図表14~15]は、「高」=2点、「中」=1点、「低」=0点として、指数化したものを表している。
1)「一人前」のレベルに達するために必要なこと
相対的な重要度が高い項目から順に見ていくと、「業務に関連する知識の習得・拡大」→「多様な業務の経験」→「自部署・他部署のメンバーとの協働」→「業務効率を高めるためのスキル向上」→「人事としての経験年数」となっている[図表14]。多くの人事担当者が、“単なる経験年数ではなく、多様な業務を経験して知識を習得・拡大すること” がまずは重要だと認識しているといえる。
2)より高いレベルを目指すために必要なこと
こちらは相対的な重要度にあまり差が見られないが、「難度の高いミッションへの挑戦」→「これまで経験した人事業務での専門性向上」→「他部門の理解」→「人事関連の未経験業務の担当」→「他社の人事担当者との交流、人脈の拡大」の順である[図表15]。「一人前」より高いレベルに達するために重要だと認識していることは、“難度が高いミッションの経験や高い専門性” であるといえる。
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