働きやすさを求めるのは、辞めたくないから?
公表できないほど、悪い状況なのか?
ここで一つ資料をご紹介いたします。労働政策研究・研修機構(JILPT)で公表されている「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」では、新卒3年目以内に初めての正社員勤務先を離職した理由を聞いています。
これによると、『労働時間問題や健康被害が離職の背景にある点は離職者全体で見た場合と同様である。これに加えて男性にとっても「人間関係がよくなかった」ことが主要な離職理由の一つである点が新卒3年以内離職者に独自の特徴である』(一部抜粋)ということが書かれています(第一部第5章「初めての正社員勤務先」を離職した理由と相談相手)。
この情報を踏まえると、残業時間を気にするのは「実労働時間」を予測するため、年間休日数・有休取得率は「休息日」の把握のため、新卒採用者数・離職者数は企業の「人間関係・風通し」の目安にするため、そしてこれらを気にするのは「働きやすいか見極めるため」であるとともに、「離職を避けるため」とも考えることができるのではないでしょうか。
企業にとって、せっかく採用できた人が短い期間で退職してしまうことは大きな損失です。そんな事態は、採用された側ももちろん望んでいないでしょう。職場情報の提供は、それを公表するだけでもミスマッチが抑えられるのであれば、有効に活用したいところです。実際厚生労働省では、従業員の月当たり平均残業時間の公表を義務付けようとする動きもあるようです。
「離職数は少ないけど採用数も少ないから離職率は出したくない」「うちは年間休日数がちょっと少ないから公表したくない」といった懸念があるかもしれません。確かにはっきりと数値で表現される部分については、企業間で単純比較すれば優越が出るのは必至です。ただ、就活生側からどう映るのかを想像すると、情報が「出ていない」「無い」というのは、「公表できないほど悪いのか」という印象を与えてしまう可能性はあります。
「働きやすさ」の基準は個人で異なります。企業側が「マイナス」と捉える面も、ある人にとっては「メリット」に映ることがあるかもしれません。今回紹介した情報は新卒関連に限られていますが、今や労働市場全体で「働きやすさ」は注目されています。働きやすさの向上は、定着率の向上(離職者数の減少)にもつながり、慢性化しつつある人手不足の対策として、必要な戦略です。
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文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。同年8月、人と仕事研究所に配属。賃金に関する統計・分析を担当。人と仕事研究所WEBサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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