最低賃金の改定で平均時給は上がる?
~平成27年度 地域別最低賃金改定によるパート・アルバイトの募集時平均時給への影響について~
岸川 宏(きしかわ ひろし)
最低賃金1,000円以上は?
昨年(2015年)首相は、最低賃金の全国平均1,000円を目指すと発表した。ただ、最低賃金の全国平均が1,000円まで到達するのには、まだ時間がかかりそうだ。最低賃金が最も高い東京都でも1,000円に到達するのは、目標として掲げている毎年3%の引き上げでも3年~4年、今までのような2%程度の伸びであれば5年程かかる。
また、地域別最低賃金の地域間の格差は大きくなっていて、10年間の伸び率は東京都で26.1%、最も最低賃金が低い地域のひとつである沖縄県では13.6%となっている。平成18年の東京と沖縄の最低賃金額の差は109円。現在では200円以上の開きとなっている。加重平均が上昇するには、労働者の多い大都市圏の最低賃金が高くなれば平均値は上がるというものの、それ以外の地域では1,000円に到達するにはかなりの時間を要すことになりそうだ。
ただし、平均時給が1,000円以上ということであれば、もう少し現実味がありそうだ。
今回の集計において、平均時給が1,000円を超えた地域は「東京都」「神奈川県」の2地域。ともに地域別最低賃金が900円を超える地域だ。当然募集時の賃金は900円以上に設定され、1000円以上での募集も4割以上となっている。大阪府では地域別最低賃金が858円で募集時の平均賃金は991円と1,000円まであと一歩と言ったところだ。こういった大都市圏でのパート・アルバイトの時給が1,000円は、決して高いものではなくなっている。
集計結果を俯瞰してみると、募集時の平均時給は、最低賃金が900円を超えると平均時給が1,000円程度に到達し、最低賃金が800円を超えてくると平均時給は950円以上となっている。
平均時給が1,000円に到達する最低賃金額の目安は900円程度。大阪や埼玉、千葉でも近々到達しそうだ。
他の地域においてもパート・アルバイト時給のボリュームゾーンである800円を最低賃金が上回ってくると、多くの企業に影響が及び、賃金を改定せざるを得ない状況となることが予想される。現在、最低賃金額が750円以上となっている地域も8地域ある。今後数年で、これら地域も賃金を引き上げなければならない企業が大幅に増えてきそうだ。
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●文/岸川 宏(きしかわ ひろし)
アイデム人と仕事研究所 所長/社会保険労務士
大学卒業後、リゾート開発関連会社へ入社。飲食店部門での店舗運営を経験後、社会保険労務士資格を取得。社会保険労務士事務所にて、主に中堅・小規模企業の労務相談、社会保険関連手続きに従事した。
1999年、アイデム人と仕事研究所に入社。労働環境の実態に迫る情報提供を目指し、社内・外への情報発信を続けている。2015年4月より現職。
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