賃金相場は平均値だけでは読み取れない?
関 夏海(せき・なつみ)
最近では、都道府県や職種によって、四分位範囲が小さくなることがあります。特に都心部では郊外に比べ、その傾向がより出ています。次の表は、「パートタイマーの募集時平均時給」の内容の一部を抜粋したもので、運輸・通信・保安職の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県の募集時時給の情報です。
茨城県を除く都県では、最頻値が1,000円です。平均値は950円から1,040円の間となっています。
四分位数と四分位範囲を見てみます。すると、東京都と神奈川県は全く同じ値で、茨城県は四分位範囲が最も大きくなっています。東京都・神奈川県の四分位範囲は80、茨城県は350です。
下に神奈川県と茨城県の分布イメージ図を掲載しています。神奈川県については、50パーセンタイル・75パーセンタイル・最頻値が1,000円ということと、平均値もそれに近い値をとっているので、かなりの募集が時給1,000円で設定されていると考えられます。
一方、茨城県については、四分位数がそれぞれ離れていることから、募集時の時給にはかなりばらつきがあると考えられます。また、最頻値が1,200円と高いのに平均値は1,027円というところから、1,000円から1,200円の間での募集はあまり多くないのでは、とも考えられます。
都心部で四分位範囲が小さくなるのには、どの企業でも「同じ時給」での募集が多くなっていった結果ではと考えられます。都心部であれば交通機関がかなり細かく利用できるので、求職者はより条件の良い案件に流れてしまうからです。
このように、平均値のみに頼るのではなく、最頻値や四分位数にも目を向けることで、より一層実情にあった賃金の把握に繋げることができます。
ここまで「平均以外の情報を合わせて見て」と述べてきましたが、平均値のみに注目したほうが分かりやすいこともあります。特に時系列変化をみる場合では、外れ値や季節による多少の変動があったとしても、傾向が読み取りやすいためです。「今募集をかけたい」「パートさんの賃金の見直しを図りたい」場合には、平均時給のほかにも、今回紹介しました四分位数や最頻値も併せて参考にしてみてください。
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●文/関 夏海(せき・なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。同年8月、人と仕事研究所に配属。賃金に関する統計・分析を担当。人と仕事研究所WEBサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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