賃金相場は平均値だけでは読み取れない?
関 夏海(せき・なつみ)
次の表は、「パートタイマーの募集時平均時給」の内容の一部を抜粋したものです。群馬県と栃木県の事務職の時給を比較しています。
群馬県の事務職の平均時給は833円、栃木県は837円です。群馬県の事務職の最頻時給は800円、栃木県も800円です。平均値と最頻値から考えると、「大体同じくらいの時給の募集が多いかな」という印象を受けやすいと感じます。
しかし、四分位数に目を向けると、そうとも言い切れないことが分かります。 前述の通り、四分位数は「母集団に含まれるデータの分布を把握」したいときに役に立ちます。そして、外れ値の影響はあまり受けないのが特徴です。
今回の表では、50パーセンタイルは群馬県・栃木県ともに800円ですが、25パーセンタイルと75パーセンタイルの値は異なっています。25パーセンタイルはそれぞれ、群馬県では790円、栃木県では800円です。
75パーセンタイルはそれぞれ、群馬県では900円、栃木県では840円です。これらの値から、群馬県と栃木県の事務の募集が、それぞれどのくらい幅広くあるのかをイメージできます。
たとえ平均値や最頻値が近い数値を表していても、四分位数が異なる場合は、図のように大きく分布が異なることがあります。今回の場合、群馬県と栃木県で大きく差がある部分は、平均値から75パーセンタイルの部分です。
平均値は外れ値の影響を受けやすいので、栃木県は「75パーセンタイルの範囲より高い時給の募集がある程度あったのかな」と考えられるほか、データの散らばりが群馬県より小さいことがわかります。
75パーセンタイルの値から25パーセンタイルの値を引いた数値を、一般的に「四分位範囲」といいます。四分位範囲が大きいと、データの散らばりが大きく、上の図の群馬県のようになります。四分位範囲が小さいと、上の図の栃木県のようになります。
賃金相場で考えると、幅広い募集時給がある場合は四分位範囲が大きく、募集時の時給がある値の前後に密集している場合は、四分位範囲が小さくなります。
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